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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 陰陽 】
21/37

第21話.

 

「 ねぇ、みんなは水の音とか、小鳥の鳴き声とか…そんな音が聞こえてる? 」


 僕が見つけた“異変”を、さらに確実なものへとするピースを集める。


 賑やかだった空間は僕の言葉を境に静まり返る。


 同時に、その場にいた全員が僕の発言の意図を理解させられた。


 不思議に思ったのか、ちびたこはキョロキョロと辺りを見渡す。


「 ?、あれ、何も聞こえないね ? 」


「 あぁ、俺たちの声以外の全てが聞こえねぇな 」


 たこきれは頷きながらそう言うと、なにか思うことがあるかのように泉のほうを見た。


「 泉に何かあったの? 」


「 あー、、泉にっつーより、蝶々のほうだな。ほら、見てみろ 」


 たこきれに言われたまま、僕たちは泉のほうを振り返る。


 そこには、先程まで各々自由に舞っていた蝶が、暁の種の上空で渦を巻くように羽ばたいていた。

 

 蝶の羽が陽の光、月の光に照らされてそれぞれの色に光り輝く。


 それはまさに、オーロラのような美しさを生み出した。


 けれど、それはただ美しいだけじゃない。


 その美しさの裏に隠れた神聖な何かが、その輝きの魅力をひきたてていた。


 この世に存在する言葉だけでは到底表すことの出来ない美しさ。


 それは、息をするのも苦しく感じてしまうほどに美しかった。


 そんな、目の前に見つけた魅力から目が離せない。


 目を離したら消えてしまいそうで、そんな儚さも纏っていたから。


 数秒ほど、僕はその魅力の虜になっていた。


 ハッと我に返ったあとは、蝶の動きに注目してみる。


 突然、蝶がみんな同じ動きをし始めたのは何故だろう―――そう思って、ひとりでに考え込む。


 けど、やっぱり僕1人では答えにたどりつけなくて。


 悩んだ末に、()について詳しそうなたこしに声をかけようとした。



 その時だった。


 羽ばたいていた蝶々が、光を反射するのではなく、自ら光を放つかのように輝き始めた。


 例えるなら“恒星”―――自ら光り輝く星に近いだろうか。


 その変化に驚いていれば、次はその光がひとつの道筋となり、僕の手元まで届く。


 光の渦に飲まれていた秘宝・暁の種と、僕の手が繋がった瞬間だった。



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