第2話.
「 これってもしかして
―――碧が書いたんじゃ …? 」
僕がそう思うのも無理は無い。
僕が知っている限り、この辺で“ブラボー”と呼ぶのは碧だけだ。
“ブラボー”
――これは僕のあだ名みたいなものだ。
いつだったか、碧が僕につけてくれた大切な名前。
碧がその名前で僕のことを呼ぶ度、僕はちゃんと輝けてるって思えるから。
心のどこかに傷がついても、その名前が傷口を塞いでくれていた。
────まさか、碧になにかあったんじゃ
そんな良くない考えが、僕の脳裏を過ぎる。
疑心暗鬼になって、ここ数日の記憶を遡る。
考えれば考えるほど、ここ数日の中での不可解な点が幾つも浮かび上がってきた。
それほど、心当たりのあるものが多かった。
碧のお母さんの不自然な言葉。
碧と合わせてくれなかったのも、もしかしたら。
―――僕はずっと騙されていたのかもしれない。
このことに気がついた瞬間、僕は今来た道を走って戻っていた。
薬局で買ったお薬や果物は、右手に握ったビニール袋の中で揺れている。
「 っ、はぁッ、はぁ 」
息が切れる。
世界が時を進めたみたいに、走っていた間は時間の感覚がなかった。
額を垂れ流れる汗を拭う。
荒れた呼吸を整えながら、僕は辺り周辺に目を向けた。
「 あれ…ここ、何処? 」
周りを見渡せば目に入るのは大勢の人で賑わう商店街。
無我夢中で走り続けた先は、全く見覚えのない場所だった。
この歳にもなって迷子になってしまうとは、と僕は自分に呆れる。
そんなとき、不意に目を惹かれた建物があった。
「 タコス屋? なんだろ、それ…聞いたことないけど 」
まるでそこに強く重力が働いているかのように、僕はその店に吸い寄せられていった。
店の入口には「タコスファミリー営業中」とだけ書かれた看板が掛けられている。
聞き覚えのない単語に首を傾げながらも、僕は自分でも知らぬままにドアノブに手をかけていた。
♪.*゜~ カラン コロン •*¨*•.¸¸♬︎ ~
僕の心情とは対象的な、軽快なベルの音が聞こえてくる。
その音を聞いて初めて、僕は今タコス屋に入店したのだと自覚した。
「 いらっしゃいませっ。本日のご依頼は ? 」
「 ッ!?!?! 」
入店してすぐ、聞こえてきた誰かの声の方を振り向く。
奥から見えた2つの店員さんらしき影。
けれど、その正体は人間ではなく―――手足の生えた言葉を話すタコスだった。




