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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 追憶 】
14/37

第14話.

 

 驚くなんて感情を置いてけぼりにして、僕はその光に近づいていく。


 途中の草をかき分けて進んだ先に、確かに“霧の心臓”があった。


「 !! あった! 」


 歓喜のあまり、霧の心臓を取ろうとする手の勢いが少し強すぎてしまう。


 そのくらい、霧の心臓を見つけられた喜びが大きかった。


 いや、正しくいえば“碧を助けられる”って、心の底から思えたことが嬉しかったんだと思う。


「 それがあの石碑に書かれてた秘宝ですか? 」


「 うん、そうだよ。きっとこれが虚空の神殿への手がかりなんだ 」


 そう言いながら、自分の手の中にある霧の心臓を見やる。


 ―――日が完全に沈みきったこの時間帯、僕らを照らすのは夜空に輝く幾つもの光だった。






 パチッ パチ


 焚き火の火が燃え上がる様子を眺める。


 みんなが寝静まった頃、僕だけがまだ今日と明日の境目にいた。


 静寂に包まれた中、太陽のように明るい、でも月のように淡く光る霧の心臓が視界に映る。


 それを見ていると、自然と数年前のあの日のことが思い出される。


 数年前のあの日―――それは、僕が碧に“ブラボー”という名を貰った日。



 どこからか、あの声が聞こえた気がした。





「 ___“ブラボー”、なんてどうだ? 」


「 …え、何が? 」


 放課後、誰もいない教室でふたり、明日提出の宿題を進めていた。


 そんな時、窓越しに見えた夕日の眩しさに、―――僕は“光輝”という名に相応しくいられているだろうか、と思う。


 そんなことばかり考えていたからか、いつの間にか宿題をしている手は動きを止めていた。


 突然碧が口にした言葉に、一気に現実へと引き戻され、僕は何か話を聞き逃していたのではないのかと焦ってしまう。


 なんのことだか分かっていない僕に気がついたのか、碧は優しく微笑みながら言った。


「 お前のあだ名だよ。どう、気に入った?? 」


「 …うん。いい名前だね、それ(ブラボー)


「 だろ? 俺の自信作なんだ 」


 そう言いながら笑う碧は、嘘なんかついていなくて。


 “ブラボー”―――碧に呼ばれたその名前が、僕の胸の奥にグッと響く。


 肩の力がすぅっと抜けていくのを感じた。


「お前はもう光だよ」って、言われた気がしたから。






「 …そんな会話をしたっけ 」


 碧との思い出を振り返って、少し虚しくなる。


 もう闇に染まった空を見上げて、僕は自分の拳をギュッと強く握った。


「 待っててね、碧。絶対に助けに行くから──── 」


 それまで燃えていた焚き火の火が、徐々に弱まり、やがて消える。


 その闇を照らしたのは、僕の強い決意の証だった。
























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