第14話.
驚くなんて感情を置いてけぼりにして、僕はその光に近づいていく。
途中の草をかき分けて進んだ先に、確かに“霧の心臓”があった。
「 !! あった! 」
歓喜のあまり、霧の心臓を取ろうとする手の勢いが少し強すぎてしまう。
そのくらい、霧の心臓を見つけられた喜びが大きかった。
いや、正しくいえば“碧を助けられる”って、心の底から思えたことが嬉しかったんだと思う。
「 それがあの石碑に書かれてた秘宝ですか? 」
「 うん、そうだよ。きっとこれが虚空の神殿への手がかりなんだ 」
そう言いながら、自分の手の中にある霧の心臓を見やる。
―――日が完全に沈みきったこの時間帯、僕らを照らすのは夜空に輝く幾つもの光だった。
パチッ パチ
焚き火の火が燃え上がる様子を眺める。
みんなが寝静まった頃、僕だけがまだ今日と明日の境目にいた。
静寂に包まれた中、太陽のように明るい、でも月のように淡く光る霧の心臓が視界に映る。
それを見ていると、自然と数年前のあの日のことが思い出される。
数年前のあの日―――それは、僕が碧に“ブラボー”という名を貰った日。
どこからか、あの声が聞こえた気がした。
「 ___“ブラボー”、なんてどうだ? 」
「 …え、何が? 」
放課後、誰もいない教室でふたり、明日提出の宿題を進めていた。
そんな時、窓越しに見えた夕日の眩しさに、―――僕は“光輝”という名に相応しくいられているだろうか、と思う。
そんなことばかり考えていたからか、いつの間にか宿題をしている手は動きを止めていた。
突然碧が口にした言葉に、一気に現実へと引き戻され、僕は何か話を聞き逃していたのではないのかと焦ってしまう。
なんのことだか分かっていない僕に気がついたのか、碧は優しく微笑みながら言った。
「 お前のあだ名だよ。どう、気に入った?? 」
「 …うん。いい名前だね、それ 」
「 だろ? 俺の自信作なんだ 」
そう言いながら笑う碧は、嘘なんかついていなくて。
“ブラボー”―――碧に呼ばれたその名前が、僕の胸の奥にグッと響く。
肩の力がすぅっと抜けていくのを感じた。
「お前はもう光だよ」って、言われた気がしたから。
「 …そんな会話をしたっけ 」
碧との思い出を振り返って、少し虚しくなる。
もう闇に染まった空を見上げて、僕は自分の拳をギュッと強く握った。
「 待っててね、碧。絶対に助けに行くから──── 」
それまで燃えていた焚き火の火が、徐々に弱まり、やがて消える。
その闇を照らしたのは、僕の強い決意の証だった。




