第12話.
────霧の心臓に、指先が触れる。
その瞬間、周辺の岩が途端に宙へと浮かび始め、空の彼方を目指して道を造った。
「 …ぇ、 」
困惑の果てに動きが止まる。
霧の心臓は、いつの間にか僕の手のひらの上にあった。
まるで僕に持っていて欲しい、と自分から歩み寄ってきたかのように。
そのことに不思議な雰囲気を感じていると、突然霧の心臓が自我をもっているかのように動き出し、僕のことを強い力で引っ張った。
「 ぇ、ちょっ!!?! 」
霧の心臓は真っ直ぐと空をめざして進み出す。
浮遊した岩を足場として、僕は空中を歩いた。
空に近づくにつれ、一度は消えていた霧が再び現れ、僕の視界をぼんやりと覆う。
霧が頬に触れて冷たい。
――霧の中を駆けるのは、雲の中を歩いているような、そんな感覚だった。
ただ、されるがままに霧の心臓に連れられる。
その間、「霧の向こうには何があるんだろう」という疑問が、僕の頭の中を埋めつくした。
霧で隠れていた山並み?それとも、朝日が見えたり…なんて想像を膨らませる。
やがて霧が晴れ僕が目にしたのは、終わりのない夜の世界に浮かぶ星々だった。
その中央で星を混じえて渦巻く銀河がひとつ。
幻想的なそれに、僕は目を奪われた。
「 き、れい… 」
それに見惚れていると、僕は今幻の世界に来ているんじゃないかと錯覚してしまう。
それくらい、現実味を帯びない幻想的な美しさが、そこにあった。
“星に触れてみたい”―――まだ僕が幼かった頃、何度かそう思ったことがあった。
その時の名残が、今も僕の心の中にあったのかもしれない。
僕の意識が銀河の美しさに向いているうちに、僕の腕は本能に逆らえないまま目の前の星を目指して伸びていく。
「 ァッ つ !?!!! 」
「熱い」なんて言葉で表せるかも分からないくらいの温度を指先で感じる。
その瞬間に、僕は今星に触れたんだと気付かされる。
────僕はあまりの痛さに、そこで意識を失っていた。




