第11話.
「 んっ、ぁ、れ… 」
目を覚まして一番に視界へ飛び込んできたのは、広大な自然だった。
けれど、その全てが“普通”とはなにか違っていた。
その何かを断定することは出来なくとも、本能で感じた違いがあった。
それはまさに、“神の力”のような、そんな神々しい存在。
ほんの一瞬、自分は神様のような純粋で美しい存在だったのではないかと錯覚してしまうほどだった。
────“聖域”。
この言葉に相応しい、もしくはそれ以上の何かに感じられる場所に、僕は居た。
川のせせらぎ、小鳥のさえずり―――そんな自然に包まれたここが、僕たちが石碑で見た“聖域”だった。
「 …みんな居ないな。僕だけがこっちに来ちゃったのかも 」
自分勝手に一人だけ先に門に触れ、その結果僕だけしかこの聖域に来ることが出来なかったのかもしれない。
なんて考えて、少し前の自分の行動を反省する。
あのときは感情的になりすぎていた、自分でもそう感じるくらいには、心境が乱れていた。
落ち着きを取り戻した今、僕は聖域から帰る道を探してみる。
それと同時に、ここに眠るとされる秘宝を求めて大自然の散策に励んでいた。
そうして歩き回るうち、視界に映る世界が白く、“白いベール”のように変わる。
霧だけれど、先程までいた森とは少し違う。
惹き込まれそうな何かが、この霧の奥に潜んでいる―――そんな感覚があった。
「 もしかしてッ… 」
ふと、思う。
この霧の奥にあるのは、「秘宝」なのではないか、と。
その考えに至った時、居てもたってもいられなくなる。
走って、走って、走って────
我を忘れて、無我夢中で走り回った。
そして見つけた、霧のベールの出口の先で見たのは―――「霧の心臓」という名を持った秘宝だった。
まるで生きている本物の心臓のように一定の間隔で脈打ち、そのタイミングで辺り一面に光を伝わらせる。
その光は、地面の深くで根っこのように広がっていく。
オーラから、何もかもが違っていた。
目の前にした秘宝に圧倒され、声もまともに出せない。
霧の心臓の鼓動が、ドクンドクンと僕の体にまで伝わってくる。
僕は何も出来ないままその場で立ちすくみ、霧の心臓を眺めていた。
圧倒的なオーラの違いに、その場の空気感に押しつぶされそうになる。
“僕”という存在が消えてしまわないように、思わず息を呑んだ。
冷や汗が首筋を伝う。
やっとの思いで伸ばした腕も、霧の心臓に触れることを恐れるかのように拒み、なかなかそれを手に取ることが出来なかった。
「 ッ、フゥ~ 」
自分を落ち着かせるためにひとつため息をつく。
ついに覚悟を決めて、僕は秘宝・霧の心臓に触れた────




