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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 灯火 】
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第1話.





第1部-光を紡ぐ者-



"名のない英雄︎︎"―――名を失っても、想いは消えない




 

 その日もいつものように学校に行って、放課後に親友兼、幼馴染の(あおい)とどこかに遊びに行くつもりだった。



 キーン コーン カーン コーン



 下校時刻を知らせるチャイムが鳴り、その音を合図に帰りの挨拶を交わす。


 碧とお揃いの色をしたランドセルを背負うと、僕は軽い足取りで隣のクラスに向かった。



 ガラガラガラ



「 碧くんはいますかー? 」


 扉を開けてそう声をかけると、何人かが僕の方を振り返る。


「 碧くんなら今日はお休みだよ 」


 扉の近くにいた女の子が軽く教室内を見渡す。


 それから、僕にそう教えてくれた。


 目を凝らして教室の後ろのロッカーを見やる。


 碧の出席番号のシールの貼られたロッカーには、何も荷物が入れられていなかった。


 碧が休むなんて珍しいな、なんて思いながら、僕はひとり、帰り道を歩く。


 隣を向いても、誰もいない。


 遠目に見えた寄り道スポット。


 その日は、真っ直ぐと家へ帰った。





 放課後。


 僕はお見舞いの品を買った帰りに、碧の家のチャイムを鳴らした。



 ピンポーン



 聞きなれた機械音が耳をかすめる。


 そのまま家の前で待っていれば、少しした頃に碧のお母さんが玄関を開けて顔を出した。


「 あら、光輝(こうき)くんいらっしゃい。お見舞いに来たのよね。中へどうぞ 」


「 お邪魔しまーす!! 」


 僕はリビングに案内され、好きなだけ食べてね、と渡されたお菓子を頬張る。


 碧に買ってきたお見舞いの品は、碧のお母さんに渡し済みだ。


 今回は余程体調が悪いらしく、会うのはまた今度にして欲しいと言われてしまった。


「 碧の体調ってそんなに悪いんですか? 」


「 …えぇ、光輝くんに移しちゃうと悪いから、

 会うのはまた今度でお願いね 」


「 はぁーい… 」


 碧に会いたい。


 けれど、僕の勝手な我儘で碧を困らせることはしたくない。


 自分の家へと帰る途中に、一瞬だけ。


 ちらっと、碧の家を振り返る。


「 … 」


 すぐにまた前を向いて、僕は家を目指した。







 あれから数日。


 未だ風邪の治らない碧に、僕は2度目のお見舞いに向かっている最中だった。


 その日は、酷く風が強い日だった。


「 ヘッくしゅっ。はは、今日はちょっと寒いかも 」


 僕も風邪ひいちゃうかもな、なんて軽く笑いながら近くの薬局から碧の家までの道を歩く。


 途中、一際強い風が吹いたと思うと、僕の顔面目掛けてなにか薄っぺらいものが飛んできた。


「 ぅえあ!?!! 」


 その何かは見事に僕の顔に直撃する。


 けれどあまり痛みはなくて。


 不思議に思いながら、飛んできたものを見る。


 それは、小さな紙切れだった。


 少しだけクシャッとシワがついているだけの、普通の紙切れ。


 ---けど、それはただの紙切れではなかったらしい。


「 ッ、“ブラボー、助けてくれ”? 」


 その1文だけが記されていた。


 慌てて書いたのか、文字はぐちゃぐちゃだった。


 でも、たしかに“見覚えがあった”。


 この口調、文字質、それに加えて宛名が“ブラボー”。


 胸の奥で、何かがざわめく。


 この特徴的な紙切れの持ち主に、僕は心当たりしかなかった。











 ─────人は何かを強く願う時、それに見合った大切なものを失う。



 “大切なものが、二度と戻らなくなること”



 この時の僕は、まだそれを知らなかった。






ここまで読んでくださり、ありがとうございます!!

この作品は“名前”の温かさをテーマにしています。

週3ペースで更新予定です。

必ず完結まで書き切ります。

感想もらえると作者がめちゃめちゃ喜びます( 笑 )

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