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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

日常の隣で

作者: わん8

昔書いたものを新しく直して投稿してみました。

かるいホラー要素に自殺騒ぎがあります。

前ふりでネタばれな件。

 ふと気付いたらそこに女の子がいた。

 彼女はここで何をしているのだろう? と僕は不思議に思って、首を捻らせながら、女の子に声をかけた。




「そこでなにをしているの?」

 声をかけると彼女が勢いよくふりむいた。目をいっぱいに開き、ひどく驚いた顔をしている。


「な……と、止めても無駄よ!」

 呆けた顔をさらに焦らせ、叫んできた。

 遠目でも汗を大量に流しているのが見える。

 混乱しているらしい。

 何を言っているのかさっぱりわからない……まあ、僕に気付いた事で察しはつくけど。

 少し、口の端を上げる。眉はハチノジでええと困惑した声音で。わかるよね。

「止め? ……なにを?」

「あたしのことはほっといて!」

 僕の話は完全無視なんだね? 別にいいけどね。うん、別にいいよ、別にね。少しだけ僕はムッとしたけど、別に気にするほどの事じゃない。気にしていないってば。

 脈絡がない相手に怒るだけ無駄だ。

 さて、

「自殺でもするの?」

「……うぅ」

 うなっているし目も泳いでいる、どうやら図星らしい。嘘のつけない子だなと思う。場違いだけど。可哀想に、ダダ漏れだよと涙がでそうだ。でないけど。

 ここは上手に誤魔化すか、気にしないかの方がいいと思うけど……開き直り万歳。





 現在地は比較的高いビルの屋上、下はコンクリ……落ちれば高い確率で死ねる。だからなのか、ここには彼女のような考えの人がよく来る。

 笑える現状だと思い、口の端をくっと持ち上げる。愉快だ。神経がんばれ。



 ここは――自殺の名所だ。





「で? 飛び降りないの?」

 ここに立っていても死ねないし、何も起こらない。時間はたつけど。それだけだ。

 ずっと飲まず食わずで居続けるならわからなくもない。

 餓死、凍死、あとはなんだっただろうか。

「は?」

 彼女は眼を丸くさせた。口も半開きになっている。はっきり言ってまぬけな顔だよね。せめて口は閉じたほうがいいと僕は思う。……いや忠告はしなかったけど。

 僕はそこまで親切じゃないからね。

 ただ冷たいだろう視線を一瞬投げかけるだけである。あれれ、僕ってば、なんて親切なんだろう。



「だから飛び降りないの?」

 話が流れた感を修正するために、もう一度言ってみた。彼女は自分の耳を疑っているのかもしれない。眉をよせ、おまえは変態か? と問いかける要領で声を出してきた。

「……止めないの?」

「うん」

 特に理由もないしね。そんな言葉が真っ先に浮かんだ。

「止めなさいよ!」

 ……怒られた。えー、止めても無駄って言ったり、止めなさいって言ったりで僕にどうしろと?

 この場合理不尽なのは誰だろう。



 困惑が顔に出たらしい。



「あ! いや、どうやれば確実に死ねるのかなって思っていたのよ!」

 なぜか弁解らしきものを彼女は言ってきた……別に僕は聞いていないんだけどなぁ。というかついていけない。爆弾を投げつけたい気分だ。誰にだ? もちろん彼女にだ。


 そうだ、ここはひとつ、名案が。

「……うーん、じゃあお手本見せようか?」

「はあ? 何言って……」

 彼女が言い終わる前に僕は走って、そして飛び降りた。

 今さらだし、もう怖くはない……いや、怖いのかもしれない。

 どちらであっても、僕には関係ない。

「……!!」

 彼女は声も出なかったらしい。声に出していたなら、どれほどの恐怖を感じていたのかわかったかもしれない。

 くすくすと笑う。ああ、やっぱり愉快だ。




 彼女は僕が飛び降りた場所に駆け寄って叫んだ。

「いやあぁぁぁ! 死なないで!」

「えーと、ごめんね、それは無理なんだ」

 そんなこと言われてもねぇ。もう遅いよ?

「え?」

 彼女が後ろを振り返った。

 目を見開いた彼女が見える。






「どうして」





 僕を見ながら、青ざめた顔で怯えたように言う彼女。

 なんてそそる表情なんだろろう。

「だって……」

 僕が言いながら近寄る。

「いや」

 彼女は首をふる。目も潤んでいる。

「……来ないで」

 後ろにさがる彼女。

 お人形さんは糸が切れても動けるの?

「どうしてさ?」

 ふわふわと笑う。

「ねえ」

「来ないで!」

 僕から逃げるように勢い良く、彼女は落ちていく。

 底へ。







「きゃあぁぁぁ!」

「誰か落ちたぞ!」

「救急車!!」

「死んでいるわ……」

「女の子が……」

 下にいた人達の声が聞こえた。

 ああ、今は、何時だろう?





 僕は彼女を見下ろす。

「死ねてよかったね」

 僕の顔にはこれ以上ないほどの笑みが浮かんでいることだろう。



 これで君も、僕の仲間になったんだね。


初投稿。


*追記

他投稿サイトにも投稿しています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・起承転結がしっかりある。ショートショートとして纏まりがある ・キャラが明るく、ホラーらしい落ちとのギャップが魅力的 [気になる点] ・文章がやや読みにくい [一言] こんにちは。 拝読し…
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