蒼 三話
「そう、新人」
「何処から来るとか聞いた?」
「いや、そこまでは聞いてないんだが‥」
「口ぶりからするに、どうも俺達と同世代らしいんだよな」
「え?そうなの?」
なんだか嬉しい
ここの建物は、オトナたちが多いから、あんまり『友達!』って言える人は実は少ないんだよね‥
「仲良くなれるといいなぁ」
「違いないな」
「でもまあ‥俺としては、人格というより『実戦』経験が豊富である方が嬉しいかな」
「またそういうこと言う~」
「意外と切実な話だぜこれは」
「M-17が壊滅したんだから、今や俺達のコロニーが最前線なんだぞ」
「うーんそうなんだけどね」
「やっぱり、同世代なら仲良くしなきゃね?」
「ふん」
「お前は少し能天気過ぎるんだ」
つまらなそうに鼻を鳴らすゼラちゃん
「そういえば、ゼラちゃんは今日何か予定でもあるの?」
「え?俺?特に無いかな」
「強いて言えば、オヤジを探すことくらいか」
「まだ諦めて無かったの‥」
「応とも」
「私も今日暇なんだよね」
「だから、一緒に探してあげる」
「‥チョコバーはやらないぞ」
少し警戒した視線でこちらを見る
「あ?バレた?」
‥‥‥
‥‥
‥
「とりあえず、所長室に行ってみるのが手っ取り早いんじゃないかな」
「今朝行ったばかりだが、他にあても無いからな‥仕方ない」
‥‥‥
‥‥
‥
「たのもーう」
ゼラちゃんがドアをコンコンを叩く
「おーいオヤジ!約束のチョコバーを貰いに来たぞ!」
「踏み倒しは許さんからなぁ!」
「ゼラちゃんやぐざみたい」
暫く声をかけたが、反応はナシ
やっぱり何処かに行っちゃったのかな?
「こりゃ居ないな」
「そうみたいだね」
踵を返して帰ろうとしたその時‥
「だれ‥?」
不意に所長室にドアが開く
ドアの向こうに立っていたのは、おじさんじゃない
もっと小さい女の子だった
「おねえちゃんたち、だれ?」
純粋そうな目、舌足らずな語彙で視線をこちらに向けてくる
髪の毛は、まるで人形のように艷やかで長かった
「お、おい‥」
ゼラちゃんつぶやく
「オヤジって、ロリコンだったのか‥」
‥‥‥
‥‥
‥
所長室に一旦入り、おじさんを待つことにした
というのも、この女の子が帰してくれなかったって言うこともあるけど‥
「おねえちゃんたち、どこからきたの?」
「どこから?俺達はずっとここに住んでるぜ」
この子、とっても好奇心が旺盛なんだよね‥
「そうなんだ!私はね、とっても遠いところからきたの!」
「確かに、ここじゃあ見かけない顔だな」
「ねぇゼラちゃん、この子がおじさんの言ってた『新人』なんじゃない?」
「こんなガキが?はは‥冗談だろ」
「うー、私、がきじゃないもん!」
「私、30さいだもん!」
「そうかそうか‥30歳か!」
「うー」
ゼラちゃんがこの子の髪の毛をくしゃくしゃに撫でる
扱いは完全に子供だね‥
というか、30歳ってあんまりステータスにならないんじゃないの?
昔の人はミソジって言って、中年になるための境みたいな印象だったらしいし…
「そういえば、君、名前は何て言うの?」
「私?私のなまえは『セラ』」
「へぇーセラって言うのか」
「ちなみに俺の名前は、ゼラって言うんだ。名前が似てるから覚えやすいだろう?」
「‥いじわるなおねえちゃん」
「え?」
「あなたのなまえは『いじわるなおねえちゃん』です」
「このガキ‥言うに事欠いて」
「いやゼラちゃん、完全に自業自得でしょ」
「そっちのおねえちゃんはやさしいので『やさしいおねえちゃん』です」
「いや、それは違うぞセラ。コイツの邪悪さと言ったらなぁ‥」
「ちょっと?変なことを吹き込むのはやめてくださる?」
談笑中にふと気づく
そういえば、この子はなんでこんな場所まで来たんだろう‥
セラちゃん、遠いところって言ってたけど実際どこなんだろう
少なくとも、ここのコロニーじゃないのは確かだよね‥
「そういえば、セラちゃん、遠いところから来たって言ってたけど、どうしてこんな辺境まで来たの?」
「へんきょう?その言葉のいみはわからないけど、『しめい』があってきたの」
「使命?」
「うん、私にしかできないことって、パ‥しょちょうがいってた」
「オヤジが言うなんて相当だな」
確かにおじさん寡黙なイメージだもんね
「おっと‥噂をすればオヤジが帰ってきたぜ」
耳を澄ませてみると廊下側から足音が聞こえてきた
この独特の歩き方は‥間違えない
おじさんだ