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同人誌を作ってみたお話

作者: 幻燈

こんにちは、思い立ったが吉日で同人誌を作ることになった人間です。

 こうしてこちらにエッセイを書くのも久々ですね。

 お久しぶりです、幻燈です。

 昨年の秋頃、活動報告にて生存報告していたのですが、気付けば年も明けて2025年。神隠しにでも遭ったのか、浦島太郎のような気持ちです。


 さて、前置きはこの辺にして。

 今回は「同人誌作ってみたよ!」というだけのお話です。

 作り方については既にいろんな方が書き残していらっしゃいますので、ここでは「実際作ってみてどうだった?」に焦点を当てていこうかと思います。

「本作ってみたいんだけど、本作るってどんな感じなんだろう?」と足踏みされてる方の背を押すことができたら嬉しいです。


 実際に本を作ってみてどうだったのか。……まあ、これは一言に尽きます。


 本ってほんとに作れるんだ!!!


 これです。

 実は私、今までずっと同人誌=二次創作(漫画)というイメージが強くてですね。

 文学フリマで実物を拝見するまで、まさか書店で見掛けるような文庫本が自分で作れるだなんて思いもよらなかったんです。

 文庫本ですよ、文庫本! 夢と浪漫の詰まった我々物書きの憧れですよ(特大主語)。

 もっと言うと、そのデザインのなんと自由なこと。文庫本に限らず、A5だろうとハードカバーだろうと、こだわりと金さえあれば(重要)なんだってできるわけです。


 閑話休題。


 皆さんは、同人誌を作る上で大変なことってなんだと思いますか? 1冊分の小説を書き上げること? 締切りに間に合わせること?

 私がイメージとしてあったのが、締切に間に合わせることでした。ほら、よくファミレスでネーム切ってたり、入稿日前夜に泣き言を言いながら作業通話してたりするじゃないですか。

 ……間に合わせるのが大変なら、本文の書き終わりが見えた辺りで印刷依頼したらいいんじゃない? 本文できてたら余裕余裕。

 そう思った私は、今から約半年前に印刷所へ依頼し、更に表紙イラストなどの依頼も行うため、余裕をもって12月の頭に入稿することにしました。


 さて、その後の私がどうなったかは後でお伝えするとして。

 前述しておりますが、同人誌はとても自由に満ちているものです。本文だけでも、話の内容や長さ、行数、フォント、フォントサイズと選んでいく必要があります。

 製本するため、どの印刷業者に依頼するか決めていきます。さらに、いざ印刷のために見積りを依頼しようとフォームを開くと、今度は本のサイズや表紙カバーの有無、紙の種類、加工などなど決めるべきものがたくさんあります。

 本は右綴じなのか、左綴じなのか。見開きの場合左右の余白をどれだけ設定しなければならないのか……など、細々とはしておりますが、失敗すれば大惨事になりますからね。「思ったのと違うんだが!?」とならないように、いろんなサイトや他の方の体験記を読み漁り、自分の持っている本を定規で測りと念には念を入れました。調べるのにも結構時間を費やしましたし、選ぶのにもかなり時間を要します。

 とは言え、正解があるものでもないので、数学のように解を求めるというよりは、オーダーメイドのスーツを仕立てるような感覚でしょうか。オーダーメイドのスーツを仕立てたことはないんですけど。


 大変ではありますが、恐らく同人誌を作る過程で1、2位を争うくらいには楽しい作業です。

 紙の柔らかさや質感といった風合い、色味、模様から箔押しにするか否か、マットな触り心地にするかツルツルした触り心地にするか、全部を自分で決められるんですよ! わくわくするでしょう?

 ちなみに私は柔らかい紙質が好みなので本文は淡クリームキンマリ_62Kで、全体的にマットな質感重視にしました。マットPP加工はさらさらとした肌触りの落ち着いた風合いで、高級感が出るので最高です。


 本の仕様が決まれば、今度は表紙を考えていきます。私はAIイラストについては不得手ですので、例に漏れず表紙絵をイラストレーターさんに依頼し、文字入れを自分で行いました。

 理想の遥か上を行く仕上がりになる上、絶対満足のいく思い入れのある作品になること間違いなしなので、少しでも興味があるのなら依頼してみるのが良いかと思います。ただし、商業利用する場合はその分金額が上がりますので、無理のない範囲で視野に入れてみてください。

 難しいようであれば、Canvaで自作することも可能ですし、絵を描く方であればIllustratorやCLIPSTUDIOなどで作成する方法もあります。絵じゃなくても、文字や写真で表現する表紙もお洒落ですしね。


 もし、イラストレーターさんに依頼されるのであれば、以前私が主観塗れに書き殴った「モチベーションがなくなったから小説のキャラのイラストを依頼してみた話」よりもより細かく仕様書を作成する必要があります(主に規格や使途説明)。

「えぇ~大変そうだし面倒くさいな」って思われましたか? その通り、大変でした。特に不慣れな人間は印刷業者のQA(データの作成方法や入稿の仕方など)から発注した仕様まで目を皿にして調べなければ、大事なことを取りこぼしてしまうかもしれませんから。

 でも、私のように自分でも表紙のデータを触る必要がある場合は、依頼するしないにかかわらず、規格はしっかりと確認しておいた方が良いです。例えば、CLIPSTUDIOproで作業する場合だと、デフォルトの色の表現方法がRGBなので、業者への発注内容がCMYK印刷だった場合は画面上と印刷後の色が変わってしまいます。保存時にCMYKに切り替えなければ、仕上がりにがっかりしてしまう可能性もあるのです。


 少し脅しが過ぎてしまったでしょうか。

 心配せずとも、この表紙絵依頼段階では恐らく表紙の完成を妄想してドーパミンが溢れ出ているのでそんなに苦には感じないでしょう。想像してみてください、自分の好きなイラストレーターさんに表紙絵を描いていただくことを……どうです、今すぐ依頼したくなりませんか?

 依頼したらもうこっちのものですよ、あとは堪能するだけ。とっておきの妄想を最っ高のイラストレーターさんに具現化してもらってください。確認依頼の連絡が来るたびに喜びにのたうち回ること間違いなし。Happy。


 さて、これで本の仕様と表紙絵の工程は終わりです。この時点で確か7月の終わりか8月の頭頃。7月の終わりには本文も完成しておりましたので、あと5ヶ月もあるだなんて余裕だな~~!


 ……じゃあ、ないんです!!


 本当の地獄は寧ろここから。校正地獄が始まります。360ページ14万字ほどをひたすら頭から読み進め、矛盾や不足を見つけてはまた頭に戻って修正し。整合性の取れないところはごそっと書き直し。納得のいかない場面を大幅に変更し。

 Web連載作品でも大分前に掲載した話で矛盾があり、その設定が後々にまで影響していたら修正に頭を抱えますよね。同人誌の場合、話を大幅に書き換えなければならない問題にぶち当たれば、「ページ数をすでに決めて発注している」という頭の痛い問題も漏れなく付いてきます。

 私が依頼した業者は事前に入稿の予約をして、ページ数や用紙の種類など変動があるものは支払い(入稿)前であれば変更できました。それでも、ページ数を変更すれば自ずと背幅が変わってしまう(紙の厚みにもよりますが、数ページで1mmずつ変わっていきます)。ページ数が変われば、それに合わせて表紙の面積が多少なりとも変化する……すでに表紙の依頼は済んでいるのに(泣)。


 作業工程のラフ段階であれば変えていただくことは可能でしょうが、筆の速いイラストレーターさんと筆の遅い私とでは、言わずもがな。ラフが終わった時点で全8章中1、2章の修正を行っていたので、間に合うはずもなく。

 いつまでも確定しないわけにはいかないので、腹を括って360ページきっかりになるように文言を考えることに。1文1文に気を遣って修正するためかなり気が滅入りましたが、どうにか360ページ15万5千字ほどで仕上げることができました。


 よし、校正も何回もしたしこれで完璧! あと1か月? 余裕余裕~~!

 ……なんてことを思っていたあの頃の私をはっ倒してやりたいですよ。


 覚悟して聞いてください、我々の敵は息を潜めて我々を嘲笑っているのです。

 その我々の敵というのは——誤字、誤用、表記揺れです。画面上ではあれだけ確認したにもかかわらず! 印刷したら家に侵入してきたアリよりも数が多いこと!!

 さあ、誤植撲滅委員会の皆さん、赤ペンとマーカーと鉛筆を手に持って。360ページ15万5千字を紙上で全て見ていく気の遠くなる作業の始まりです。

 気になる部分はマーカーで色付けして、表記揺れも見つけたらマーカー。誤字は書き出し、単語は念のため適宜類語辞典で調べる……おっと、逃げないでくださいね。ほら、新たな敵がこちらを窺っていますよ……そうです、「飽き」です。

 いくら自分で書いた大切で大好きな作品であっても、何度も何度も校正すれば飽きは必ずやってきます。私が何度「もう校正やめて他の作品読みたい!!」と叫んだことか。私は何をやっているんだろう、タワーのように積まれた本たちが私を待っているというのに!


 なんてぐだぐだと管を巻きつつ、赤入れした部分を修正したのが入稿締切り数週間前。で、念のため赤入れした印刷物と修正後の画面を見比べて終わり……と思ったら、あれ? これ、誤字……この修正できてない? あ、表記揺れがここにも……。

 ……ええ、もう一度です。360ページ印刷して、今度は後ろから。かなりの量の表記揺れと誤字が見つかりました。

 この修正が終わった頃にはすでに入稿締切り数日前です。最後に赤入れした部分が全て修正されているかを画面上で確認したら、もう締切り数時間前でした。


 結論。余裕なんてなかった。


 同人誌を作るためには、中身を作るだけでなく、様々なことに挑戦する必要があります。筆が速く慣れた人ならここまで時間を掛けずとも済んだかもしれませんが、はじめて作成するのであれば期間を長めに見積もった方が良いでしょう(私が要した時間は10か月です)。

 その間、連載小説には全く手が出せず、読者をお待たせしている状態ではありますが……結果として、私は同人誌を作ってみて良かったと思っています。

 それは、決して夢の製本が実現したからだけではなく、本を作る過程で何が必要なのか知ることができたからです。特に、決められた分量の中でどうストーリーを展開するのか、山場はどこに設定するのか、校正のやり方などは知っているだけで今後必ず自身の助けになっていくだろうと確信しています。

 また、今回何も分からない状態で本を作る間、直接的にも間接的にも、最後の最後までいろんな方の力をお借りすることになりました。本を作るには本当に沢山の方の助けが必要なんだなぁと身をもって感じられたこと、これが何より本を作ってみて良かったと思うことであります。


 もし少しでも作ってみたいなと思う方がいらっしゃったら、是非とも挑戦してみてください。

 分からないことがあれば、私のやり方で良ければお伝えすることもできますので。


そんなこんなで完成した本は来週の文学フリマにて販売予定です。

X(旧Twitter)の方で宣伝も行っておりますので、気になった方は覗きにだけでも来ていただけると嬉しいです。

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