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絶望の連続

 それから数日、洞窟を拠点に湖と周囲を往復する日々を送った。

 ちょっと慣れてきた気がする。


「少し遠出するべきなのかなあ。この森を抜けると村があるかもしれないし。けど、人の気配が感じられないんだよな」


 こんな森で一生を過ごすのは絶対にごめんだ。

 どこかで遠出しないといけない。


 少しだけ遠くに行ってみるか。

 戻れる範囲ならいいだろう。


 手作りの槍を持ち、いざ出陣。


 この自分の知っている場所から出ると、途端に周囲を警戒してしまう。

 あの狼の群れが出たら、どうしよう。

 村なんて望まない。人に会いたい。


 それだけを望み、俺は歩く。

 その時、何かが衝突したような轟音が響く。

 同時に、大地が揺れた。


 何が起きたかは分からない。けど、その轟音を出した何かが大地を揺らしたのだ。


 危険だ。


 俺は本能的に音が聞こえた方角と逆側に走った。

 すると、背後から狼や猿、角の生えた兔など大量の霊獣がこちらめがけて走って来た。


「うわあああ!」


 殺される!

 そう思い身構えるも、霊獣達は俺に目もくれずに必死で駆けていく。

 それ以上の恐怖が迫っているからだ。

 俺も霊獣達の後を追うと、背後から何かが飛んできた。


「え?」


 全長二十ユードを超える巨大猪が飛んできている。

 猪はそのまま多くの大木をなぎ倒しながら、少し遠くの地面に落下した。


 凄まじい地響きが鳴る。

 その猪は立ち上がると、憤怒の表情で飛んできた側を見つめた。

 鉄のような毛皮に覆われ、俺よりはるかに大きい牙が黒々と輝いている。


 猪の目線の先から、木々を粉砕しながら巨大な四本腕の黒いゴリラが姿を現す。

 その背は燃えており、四本の腕も炎を纏っている。


 こちらも大きい。

 全長は十ユードと猪よりも少し小柄だが、その呆れた大きさが近くに迫って来る。


「ウホオオオオオオオオオオオオ!」


 ゴリラがドラミングと共に叫び声をあげる。

 その轟音は地面を揺らした。


「あ……ああ……」


 俺は恐怖で、ただその場に倒れ込む。


 死。


 死んだ。

 こんな化物、誰も勝てやしない。

 カチカチと何かがあたる音がする。


 うるさいな。

 俺はそのカチカチ音が自分の歯が震えている音だと気付く。


「ブオオオオオオオオオオオオ!」


 巨大猪は怒りと共に、ゴリラに向かって突進を開始する。


「ひっ!」


 俺は小さな悲鳴をあげるが、ゴリラはその突進を真っ向から受け止める。

 衝撃の風圧だけで、木々が軋み、俺は吹き飛ばされた。

 駄目だ……巻き込まれたら殺される。


 俺はもつれる足を必死で動かし、ただ走った。

 あの災害とも言える戦いから、少しでも離れるために。

 必死で逃げた。ただ逃げた。


 死にたくない……!


 俺は呼吸がおかしくなっても、走り続けた。

 止まると死ぬと思ったからだ。

 そしてどれくらいか分からないくらい走った後、突然視界が開ける。

 森が終わったのだ。


「やっ……え?」


 俺はこの森から逃れられると思った。

 だが、その先には海が広がっていた。


「は、はは。海だ」


 ただそう呟いた。

 その先には何も見えない。ただ、見渡す限り海だけが広がっていた。



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