表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
49/75

秘密

 あれ以来、師匠は修行中、見ていることが増えた気がする。

 実践形式の修行が減った気がするのだ。

 体調が悪いのだろうか。


「師匠、大丈夫ですか?」


 剣術の修行中、近くで座りながら見ている師匠に尋ねる。


「何がだ?」


「最近、体調が良くない気がするんですよ。前よりも実戦形式が減った気もしますし」


 するとおでこをぴしっとはたかれる。


「何を贅沢言っているんだ。元騎士団長との直接指導なんて、たまに受けられれば十分だろうが」


「いや、それは勿論そうなんですけど……」


「仕方ない奴だな。久しぶりに稽古をつけて――」


 そう言って立ち上がろうとした師匠が、バランスを崩して膝をついた。


「師匠⁉」


「大丈夫だ」


 師匠は顔を上げるが、明らかに顔色が悪い。

 俺は師匠に肩を貸し、住処に戻った。

 毛皮で作った布団に師匠を寝かせる。


 普段から肌は白かったが、今の顔は真っ白だ。

 何か病気にかかったのだろうか?

 おそらくただの風邪じゃない。


 だが、その場合どうやって治したらいいんだ。

 医者なんてこの島には居ない。

 病気にかかった場合はどうしようもできないことに気付く。


 心配になった俺は、師匠の手を握る。


「なにか欲しい物、ありますか? 今日は温かいスープを作ります」


 こんな島じゃろくな物も用意できないけど。


「そんな心配そうな顔をするな。リオル。これは病気じゃない」


「そんなの分からないじゃないですか」


「いや、分かるんだよ。お前にはこの一年間、しっかりと基礎を叩きこんだ。十二歳とは思えないくらい強くなった」


 師匠は俺にゆっくりと語りかけるように話し始めた。


「後数年、私の全てを叩きこめば厄災級にも届くだろう。だが、その時間は残されていない」


 師匠は諦めるように、悲しそうに言った。


「何を……言っているんですか?」


「私の体調が悪化し、弱体化した理由はこれだ」


 師匠はそう言って、右腕の服を上げる。

 そこには禍々しい渦のような刺青が入っていた。


「これは呪いだ。私が呪霊師にかけられたな。これは少しずつ体を蝕む。近い将来、私の体は動かなくなるだろう」


「そんな、嘘ですよね……」


 そう言いながらも俺は、心当たりがあった。

 師匠の強さであれば、将級の霊獣をうち漏らすことなんて今まで一度もなかった。

 最近は戦うことも少なくなっていたから、鈍っただけだと思っていたけど……。


「とは言え、後一年は最悪でも持つだろう。それまでに、私の技術は全てお前に伝えるつもりだ。だから、安心しろ」


「技術なんかどうでもいい! 師匠、知っていたんですか? ご自身の体が数年で動けなくなるって」


「ああ」


 俺は初めて師匠と会った時を思い出した。

 確かにあの時、師匠は時間がないと繰り返し言っていた。

 ただ、速くこの島を出たいだけだと思っていた。


 だけど、違ったんだ。

 呪いのせいで、タイムリミットがあったんだ。

 ゆっくりしていたら、この島で動けなくなるって。

 それは死を意味する。


「な……なんで、俺の修行なんかに時間を……」


 俺は師匠の貴重な時間を消費させてしまった。

 何よりも貴重な時間を。


「師匠一人だけなら、出られたんじゃないんですか? なんで俺なんかに時間を……」


「それは分からん。私も最初は弟子なんて断るつもりだったよ。数年以内にここを出ないといけなかったからな。初めは小さな恩返しのつもりだった。けど、お前と一緒に過ごしていくうちに、すっかり情が湧いてしまった。リオル、お前は私の最高にして最後の弟子だ。私の代わりに、必ず島を出ろ」


 師匠はそう言って、俺の頭を優しく撫でた。


「やだ……よ」


 一人じゃ意味なんて、ないんだ。

 師匠と、ネロと一緒に出るから意味があるんだ。

 俺は気付けば涙ぐんでいた。


「泣くな。私が生きているうちに、お前に話さないといけないことがある。お前の出自についてだ」


 師匠は確かにそう言った。


お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ