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再戦

 翌朝。


 うだるような暑さで目を覚ます。

 どうやらまだ生きているらしい。


 腹が鳴る。

 腹が食べ物を入れろと怒っているようだ。


「何か食べないと本当に死んでしまう……」


 悩んだ結果、俺は武器を作ることにした。

 まずは石で石を割る。何度も何度も割った。先端が鋭くないと武器にならないからだ。


 そしてできた尖った石を蔦で木の枝に巻き付ける。

 武器というには拙い、お手製の槍である。


「おお! 思ったより上手いんじゃないか!」


 俺は突きを放つ。

 何度か調整を行った後、俺は覚悟を決め獲物を探す。

 猿も、狼も勝てる気がしない。


 狙うはあのネズミである。

 しばらく森をさ迷うと、あの太った後ろ姿を見つけた。


 ネズミだ!


 だが、喜びよりも恐怖が勝った。

 昨日殺されかけた相手である。


 勝てるのか?


 このまま逃げても、数日経てば誰かが助けてくれるのではという疑問が浮かぶ。

 だが、その甘えを否定する。

 助けが来る保証なんて、どこにもないのだから。


 汗が額に溜まる。

 俺はゆっくりと背後から近づくと、思い切りネズミの背中を突き刺した。


「キュウッ!」


 ネズミが悲鳴を上げる。

 手ごたえはあった。だが、まだ死んでいない。

 ここで引いたら、殺される。


 刺されたネズミが血走った目でこちらにとびかかって来る。

 俺は大きく、不格好に横っ飛びで躱す。


 もう一撃!

 俺は再びネズミに向けて突きを放った。

 その一撃は先制攻撃で動きが鈍くなっていたネズミの頭部に見事刺さった。


「ギュウッ⁉」


 ネズミは再び悲鳴を上げるとそのまま動くことはなかった。

 ネズミが静かになり、周囲には俺の大きな呼吸音だけが響く。

 勝った。


 たかがネズミと他の人は思うかもしれない。

 だけど、確かに俺は奴と命がけで戦い、そして勝ったのだ。


「よっしゃああああああああああああああああああ!」


 俺は大声をあげて叫ぶ。

 少し落ち着いたら疲れを自覚して、俺は腰を下ろした。


 俺は生きるためにネズミを殺したのだ。

 食べなければ意味がない。


 俺は自分に言い聞かせるように、ネズミを解体することを決める。

 と言えど、俺は解体などしたことない。


 ただ肉を裂くだけだ。

 手と槍を使い、何とか分解していく。

 むせかえるような血の臭いで、吐き気がした。


「おえっ……」


 だけど、これが生きることなのだ。

 手を血塗れにすること数十分。

 目の前にはぐちゃぐちゃになった肉が散乱している。


「下手だなあ」


 そう言って笑う。


「解体用の刃物が欲しいな。だけどようやく肉が手に入った! 焼くぜ! 火をつけないとな」


 木に棒を押し当て、錐のように回す。

 けど、中々火はつかない。

 ようやく煙が出たと思っても、そのまま消えてしまうのだ。


「ついた火種を大きくするには、枯れ草も要るのか?」


 枯れ草も探し、再チャレンジ。

 一時間程チャレンジし、ようやく火が枯草に燃え移る。


「やった!」


 鼠の肉を火で炙る。

 食べられるか不明だけど、死ぬよりは良いだろう。

 しっかりと焼いた後、口に入れる。

 少し固いけど……。


「美味しい……」


 泣きそうになった。

 体が食べ物を求めていたのか、驚くくらい体に染みわたる。


 俺はその後も満足するまで何度も焼いて食べた。

 満たされた俺は、鼠の死体に目を向ける。


 内臓は流石に食べられないよな、と思うも丸い小さな内臓が目に入る。


 なぜか惹かれる。


「これって……もしかして霊胞(れいほう)か?」


 霊胞。


 昔一度だけ、父さんから聞いたことがある。

 霊胞は霊獣の力の源である霊気を貯める器官で、霊獣達は相手の霊胞を食べることで力を得ると。


 俺は人間だから関係ないのかそれは分からない。

 けど、俺には力が必要だ。

 俺は霊胞と思われる内臓を口に入れる。


 まずい。


 だが呑んだ瞬間、体が熱くなった。

 効果があるのかはっきりと分からない。

 けど、これからは霊胞も食べよう。


 俺は、残った肉を持って洞窟へ戻った。


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