美術展
とはいえ、決して逃げることのできない暗闇に私はいる。
ただの、線。
苦しみが悲しみを生み、憎しみを生む。欲が苦しみを生むというなら、それは間違いだ。私は私でいい。そんな諦めは、わざわざ説いて貰わずとも知っている。
ただの石像と、小さな人。
私は去年の暮れ、遂に抑えていたものを放ち、総てを以て、君に話をした。
大事なことだった。
君は泣いたと言った。
本当かどうかは知らないが、泣いたと言った。
廊下に、
男女が、一組。
それからは何ら変わらない日常を、手持ち無沙汰に過ごしてきたが、
今年の夏、君は嘘をついた。
崩れた部屋。
私は仕事が手につかず、喚き散らしては疲れて眠るばかりに心を落剥させた。
頭を抱えた、青年。
何も信じなくなった。
全てが美しく、かつ邪悪に見えた。
私は益々自分を落としていった。
崩れた床、俯く青年。
血の匂いを嗅いだ。
憤りなら、生まれた時にまで遡り、後悔は一年前に最も強い。
何も要らない。
何でも欲しい。
私は、どうする。
君は、あのペンで、まだデッサンを続けるのか。
ピアノの音が響く。ナイフは、オレンジに。
私は迷う。
君は笑うか。
私の血が、赤だ。
君の嘘が、白だ。
見ろ、これがすべてだ。
ことのすべてだ。
もう分けがわからない。
この暗闇に、光は無い。
私は逃げられない。
屈折。
「消えてしまえ。」
部屋には雑誌。
夜には橋。
猫は鳴くけど
泣きはしない。
…その絵画を最後につきあたり、出口へと。
個展は終わった。
つまらない物を見たと、人々は足早に帰っていくのだった。