『おじいちゃんじゃない』
これは、五年前。
私の祖父が亡くなった時のお話。
それでは
『おじいちゃんじゃない』
お楽しみ下さい
今から8年前の5月11日。僕の祖父が亡くなりました。
実家は奈良県だったんですが、なんとか最期の顔を見るために冷静さを見せながらも急いで大阪から車を飛ばしていた親父の顔を良く覚えてます。
なんとか危篤状態のうちに到着でき、僕は長い時間…いや数分かもしれませんが(僕にはとても長く感じられました)祖父の苦しそうな息遣いが聞こえる病室で、
「頑張って、頑張って!」と励まし続けました。
最後に握った祖父のゴツゴツした手の感触は今でも思い出せるほど無力でした
祖母は余りにしんどそうな祖父を見ていたたまれなかったのでしょうが…
「もう頑張ってってゆうたらんといて…おじいちゃん頑張ってるからな……」
そう泣きながら言っていましたっけ。
当時小学校5年生だった僕にもその祖母の気持ちがわかるほどに、祖父は苦しそうでしたよ。
後から聞くと、肺ガンだったそうです。
その時は本当に病気の怖さを痛感しました。
弟はまだ一年生。人の死というのが良く理解出来ていなかったのでしょうね……。
俺が本気でキレるまで少し離れた場所でゲームに夢中でした;汗
そしてついに命が尽きるとき。
祖父の呼吸は本格的に荒くなり、やがて心臓が活動をやめてしまいました。
が……
「おじいちゃ――ん!!」
悲しみにくれた僕がそう叫んだ時に、なんと再び心臓が動き始めた。
しかも目を開いた!
ホントに奇跡だったんじゃないかな……。
ただならぬ様子に気付き、泣きそうになっていた弟もみんな驚いて手を握り、応援しましたがその5分ほどのちに、祖父は本当に逝ってしまいました。
これ自体が不思議な体験かと思いますが、俺はもっと不思議な目にあうことになるんです。
通夜の夜。公民館の2階で眠っていた僕は夜中に目を覚まし、祖父の棺のある一階におりました。
電気が点いていたのでドアを少し開けると、親父と親父の弟のヒデさんが棺の前で静かに話している姿がみえました。
僕が近づいてくる気配に気付き、笑い顔を見せた親父達は別に怒る事もなく手招きして、祖父の思い出話を聞かせてくれました。
僕はしんみりと親父達の話を聞いていました。
良く有りがちな話ですが、その間は棺の傍の花が落ちたりどこかから音がしたりといろいろありましたよ。
そして次の日の葬儀の後、いよいよ焼かれる事となった祖父ですが……また不可解な出来事が起きます。
まぁ道中から奇妙な胸騒ぎはあったんですが…
それは中から骨になった祖父が出て来る時。
その出入口の蓋…というかドアみたいな奴の奥に、絶対に有り得ないのが見えたんです。
祖父。
いや、あれは祖父じゃないな。
だって、にやぁーって笑ってんですよ、それはそれは気味の悪い笑顔で。
ニュアンス、伝わりますかねぇ…口が耳まで裂けていて、きたならしい歯がびっしりならび、目がにやっ…て……。
親なんかには言わなかったですけど、すぐに消えたので後味の悪さだけは残りましたが、特に恐怖心はなかった。
それよりも怖かったのは、紫色に変色した祖父の骨。
ガンに骨まで蝕まれていた祖父の骨は、所々が紫色で、ボロボロ。
お箸で突くとすぐに穴が空くくらい弱々しかった。
苦しい病気と闘った方の遺骨は骸骨の形を保てないんですね……
そうして葬儀も納骨も無事(?)に済み、大阪に帰ることになった僕たち。
夜の…8時〜10時頃だったと思います。
田舎の春なんで、ちょっと冷えてました。
帰宅する雰囲気を感じ、親父に続いて外に出た僕でしたが、余りに寒いので先に車の助手席に乗って待っている事にしました。
エンジンのかかっていない車なんて外と一緒ですが、忘れ物をしたか何かで親父が家に入っていってしまったから仕方ない。
一人祖父の思い出を振り返っていると、またあいつがやって来た。
ケタケタケタケタケタ…
笑い声がするのでそっちの方を向いたら、あの祖父の顔をした化け物がニタニタ近づいてきていました。
後ろが完全に闇なのに何故か見える。
なぜかそこだけ明るかった。
火葬場の時と同じ顔で、今度は首をクネクネと左右に傾けながら口をパクパクしていました。
そんなのが30メートル、20メートル、15、10……というふうに結構な早さで接近してくる。
半端なく怖かった………笑
ついに隔てる物が車のドアだけになり、化け物が覗き込んでいるような気配を感じました。
5メートルくらいから怖すぎて目をつむって家族が早く家から出て来る事を祈ってたんですが、そしたらガチャって玄関扉が開く音がして、家族の話し声が聞こえてきました。
そしたらガサガサガサッ…っと凄い速さでどこかに去っていく足音が聞こえしばらくするとお母さんと親父、弟が車に乗り込み、俺以外が祖母としばらく会話して、車は進み始めました。
顔面蒼白で冷や汗タラタラな俺を見て大丈夫?なんて聞かれましたから正直に話すと、
「おじいちゃんがそんなことするわけないやろ?」
と慰められました。
ええ、あれは祖父ではないと思いますよ。
じゃあ一体、あの祖父は誰だったんでしょうねぇ……。
お疲れ様でした。
『おじいちゃんじゃない』
如何でしたか?
あの祖父は本当に誰だったのか……。
今となってはもう分からず仕舞いですが、本当に祖父が私を連れていこうとしていたなら、怖いですよね。
だから絶対に別人だ、と思い込むようにしているんですよ。
何はともあれここまでお読みいただき、有り難うございました。
更新は思い出したら、または遭遇したら、と物凄く不定期になります。更新のチェック、果てしなく面倒だと思いますので、この『恐怖体験実話集』自体の存在を忘れるか、更新チェックに登録しておいて下さるなりお願いいたします。
それではまたいつか、お会い出来れば良いですね。
感想と評価、是非よろしくお願い致します。
では…!