『子供がいる』
『子供がいる』
これは2年前。自分の霊感に確信した時の話。
その日は朝から良く晴れていて、女友達(第二話『夢は何を意味する?』に出て来た親友)が誘いに来て、夕方までずっとその子と近所の公園(第一話『報い』に出て来た公園)で喋っていた。
くだらない話からお互いの恋人の話まで。
そんな風に話していたからすぐに時間がたち、陽が沈みだした。
陽が完全に無くなった頃、ご飯を食べて来るとの事で一度僕らは解散した。
家に帰ると家には母親しかおらず、とりあえず僕もご飯を食べて風呂に入った。
湯舟につかっていると、小さな声で
『水は危ないよ』
そう声がした気がした。
4歳くらいの小さな子供の声で。
その時の俺は霊なんてもの全く信用してなかったから、確実にそう聞こえたけれど気のせいにした。
そして風呂からあがり…
服を着て髪を乾かし、ヘアーアイロンで髪の毛をストレートにしていた時、
ピチャピチャピチャ
と足音が聞こえてきた。その足音はすぐ傍で止まる。
弟かなぁ〜
不思議に思い濡れた感じの足音の主を探すが見当たらない
な訳ないよな〜弟はもう寝ていたし
しかも足音が来た方とは反対側で。
今日なんか変だな。
そう思っていたけど対して気にもとめず残りの気になる部分を伸ばすため目の前の大きな鏡に視線を戻した。
「え…?」
驚いて鏡の左隅を凝視する。
何か柱の陰に黒いモヤモヤがいる。
でも不思議なことに頭の中ではそれが幼い男の子であり、体の特徴までをも理解していた。
そこに顔だけがぼやけている。
まるで今幼い男の子を見ているかのように、ただの黒いモヤモヤから顔以外が理解出来ていた。
全身がビショビショに水で濡れていて、髪から雫が滴っている。
しばらく柱の陰から僕を覗いていたその男の子は、スッと体を引いてパソコンで仕事中だった母親のいるリビングの方に消えた。
ピチャ、ピチャ、ピチャ
足音が消え母さんが来るまで俺はひたすら固まってた。
そして母さんが問う
「翔太、今こっちきた?」
あぁ、やっぱ聞こえたんだ足音。
一連の流れを説明すると、母さんがここの土地の成り立ちとちょっとした悲劇を教えてくれた。
今となってはあまり覚えてないんだけど、だいたいこんな話だった
「あのなぁ…
この辺昔海やったやろ?それで埋め立てするとき、妻に先立たれた男の人が子供2人連れてみんなといっしょに毎日みんなと汗水流して作業しててん。
子供を最前線の危険な場所に連れていく訳にいかんから、その男の子と女の子はお父さんが仕事してる間二人で近くに建てられた寝泊まり出来る建物で遊んでたんや。いつもはな。
その日は昼過ぎた頃急に波が高くなった
この辺りは風が無くても満潮が酷い時あるからなぁ
まぁ、昔は酷かった
でもその日に限ってその子らは絶対建物から出るなってお父さんの言い付け破って海辺で綺麗な貝殻探して遊んでた。
かわいそうにな…二人共急に高くなった潮と強くなった波にのまれてしもた。
戻って来たお父さんはそら焦って探した。
外はもう波も穏やかになってたからみんな総動員で。
結局見付かったのは女の子の方だけ。死体やったけどな。
男の子はいくら探しても見つからんかった。
お父さん悔やんでな…
自分がもっと強く言い聞かしてたらこんな事故起こらんかったんやって
息子の遺体があるかもしれへんところに砂被せて陸にする…よっぽど辛かったんやろうなぁ。
お父さんは数日後沖の方で見付かった
それでその埋め立てたところがここ〇〇やねん。だからたまに、ここら辺りはその子供とかお父さんの霊が出る。ここのマンションで聞いた話やけどなぁ、本間なんかも知らんなぁ…
風呂入ったら体拭いてから歩き廻れっていおうとしたら…本間に………」
ぶつぶつ言いながら母さんはリビングにもどり、またパソコンを弄りはじめた
そして一ヶ月後。
俺のその女友達が川で溺れることになります。
さあ。
あなたはどう思います?
これは偶然でしょうか?
僕はあの男の子の警告だったのではないかと思っています
『水は危ないよ……』
『子供がいる』如何でしたか?
僕にとって色々な意味で一番心に残っているお話でした…怖いというより僕は悲しかったですが。
この話を最終話にしようと決めていたのでこれで完結に致します。読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
ですが文章に出来る程の怖い体験がもしあれば(いらん汗)また更新するかも知れません。笑"
では、またいつかお会いしましょう。
評価と感想をよろしくお願い致します。