70話。おまけ。ティファの過去
「うっうううう……」
ティファはあまりの出来事に、肩を落として、うめいた。
風の魔法の制御に失敗して、盛大に屋敷の窓ガラスを割ってしまったのだ。
「シグルド様に飼われておきながら、何という失態であるか、ハーフエルフ?」
魔法の指導教官が、ティファを睨みつける。
ティファは8歳のハーフエルフの少女だった。
ティファは口減らしにエルフの里を追放されて途方にくれていたところを、ベオルブ伯爵家の子息アベルに拾われて、この屋敷に連れて来られた。
ベオルブ伯爵シグルドはティファを受け入れてくれたが、無論、条件があった。
この国には優れた魔法使いが不足していた。このままでは、いずれ時代に取り残される。
魔法の才能に恵まれたハーフエルフのティファを育て、戦力として活用するのがシグルドの狙いだった。
「申し訳有りません。先生……」
ティファが頭を下げると、ピシャリと乗馬用の鞭で手を叩かれた。
ティファは悲鳴を上げて、うずくまる。
「お前などが、シグルド様の養子となるなど、許されることではない。分をわきまえろ!」
教官がわざわざ、屋敷の中庭で魔法の特訓をしているのには理由があった。
教官はティファに物を壊すような失敗をさせて、彼女をイビって屋敷から追い出そうとしているのだ。
それはティファにもわかっているが、どうしようもなかった。
とにかく、魔法の制御を失敗しないようにするしかない。
「ガラス代を捻出するために、当面、お前の飯は抜きとする!」
シグルドが騎士団を率いて、戦に赴いている現在、この教官の嫌がらせを止める者はいなかった。
ここも自分の居場所ではなかったのかと、ティファが落胆したその時……
「やめろ! ガラスくらいで、ヒドイじゃないか?」
背後からの怒声はアベルのモノだった。
教官は雷に撃たれたように恐縮する。
「これは坊っちゃま……」
「ティファは父上が家族として伯爵家に迎え入れた娘だ。……お前は父上の意向に逆らうのか?」
「いえ。決して、そのような」
「だったら、僕と同等に扱え。いいな?」
「はっ!」
教官は胸に手を当てて敬礼する。
養子とは、召使いと同意義だとティファは思っていたが、アベルにとっては違うようだった。
「ティファ、大丈夫か? 傷の手当てをしよう」
「はい……」
アベルに手を引かれてティファは、立ち上がった。
「何かあれば、ちゃんと言ってくれよ。もしティファを泣かす奴がいたら、僕がぶっ飛ばしてやるからな!」
ティファはこの時、シグルドのためではなく、アベルのために魔法を極めたいと思った。
いずれ伯爵家を継ぐこの人の力になりたいと思った。
「アベル! 遊びに来たわよ。今日は剣術ごっこをしましょう!」
その時、見事なドレスを着た少女が、屋敷の中庭に突入してきた。
アベルのことを気に入っているリディア王女だ。
「はぁ!? リディア、僕、剣術は苦手なんだけど! それより、僕は外れスキル持ちで……」
「そんなの関係ないわ! 私が勝てるから、おもしろいんじゃないの!?」
「うぇ! ヒドイ!」
「大丈夫だって、怪我をしても私の回復魔法で治してあげるから。
私、【聖女】のスキルを得て、もう初級の回復魔法なら使えるようになったのよ!」
「それって、僕を実験台にするってことか!?」
一見、喧嘩をしているようだが、その実、お互いに気を許しているのがわかる。
アベルとリディアはお互いに好いているようだった。
一瞬で感じ取る。そこにティファが入りこむ余地は無いように思えた。
だが、例え、この恋心が実ることがなかったとしても……
この先に何が起ころうとも、アベルへの忠誠は永遠に変わらない。
この気持ちを決して手放さないとティファは誓った。
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