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66話。アンジェラのスキルが進化

 身体を斬られて劣勢に追い込まれたダレスは、信じられない行動に出た。

 母を殺されて泣き崩れていた実の娘アンジェラを掴んで、盾にしたのだ。


「ぐぅううう──ッ!?」

 

 僕は全力で剣に急制動をかけて、寸前で止めた。

 アンジェラの虚ろな瞳は何も映しておらず、絶望に打ちひしがれていた。


「……お母様っ」


 その手には、母の遺灰が握りしめられている。

 アンジェラは何度も何度も、母の復活を試みていたようだ。


「ハーッハッハッハ!! ……たまにいるのだ。女、子供は殺せないなどと抜かす騎士道精神にかぶれたバカ者が。

 もしやと思ったが、貴様もどうやらその類だったようだな。戦士として三流以下!」

 

 ダレスが魔法の矢を撃ってきた。

 僕は神剣グラムで、その攻撃を弾き返す。


 踏み込んでいきたいところだが、アンジェラを盾にされてしまっている以上、身動ができない。


「こんな出来損ないの、しかも敵であった娘をかばってせっかくの勝機を逃すとは! 度し難い愚か者だ!」

 

 ダレスは再度、天使の軍団を召喚する。エンジェルナイトが、その背後から次々に出現した。


 クソッ……このままで戦力差がドンドン開いていく。


 いや、待てよ。

 その時、僕の脳裏に閃くモノがあった。


「出来損ないだって? ひとりじゃできないことでも、誰かと協力すればできるじゃないのか? 

 アンジェラの【不死の支配者アンデッド・ルーラー】のスキルを強化!

 アンジェラの【魔力】を限界突破!」


 リディアのスキル強化を解除して、アンジェラのスキルを強化した。


 これは賭けだ。


 アンジェラが戦力になってくれれば、この戦況は覆せる。

 そのためには、彼女の願いを……

 母の復活を手助けしてやるしかない。


 アンジェラのスキルが進化すれば。

【魔力】を限界突破させれば、その万に一つの可能性が見える。


「アンジェラは出来損ないなんかじゃない。その可能性を僕が引き出してやる!」

 

『了解。アンジェラのスキルは【冥界の支配者ハーデス】にグレードアップしました。死者の魂を、死神にして使役できる能力が追加されます』


 システムボイスが僕の叫びに応えた。

 その瞬間、アンジェラの握りしめた遺灰が輝く。


 光の中から、銀髪をしたアンジェラそっくりの美しい女性が浮かび上がった。その女性は大きな鎌を持ち、半透明の姿をしていた。


「お母様っ!?」


『アンジェラ、ごめんなさい。あなたをひとり残して逝ってしまって……』


 女性が鎌を回転させると、ダレスの召喚した天使たちが、横に両断された。


「バカなぁあっ!? お前は……っ!」


 女性はダレスにも鎌を振り下ろすが、ダレスは寸前で、後退してかわす。


『でも、あなたのために身体を張ってくれる。本当のお友達と出会えたのね。

 お母様はうれしいわ。これからは、ずっと一緒よ』


 アンジェラは、わっと泣き出して女性と抱き合った。

 エンジェルナイトたちがアンジェラに襲いかかるが、女性の鎌にすべて斬り刻まれて消滅する。


「お母様っ! ぐぅうううっ、お母様っ……!」


『あらあら、甘えん坊さんね。アンジェラ……』


 女性は泣きじゃくるアンジェラの頭をよしよしと撫でる。


「……こ、これは『死者の完全なる復活』でも、アンデッド化でもない! この聖なる感覚は、上位天使のそれ! まさか、まさか……出来損ないの化け物姫ごときが、上位天使を生み出したというのか!?」


 ダレスは驚愕に口をパクパクさせていた。


 死神とは、死者の魂を神の御下に送る天使だ。

 位階的に死神は、神の兵隊であるエンジェルナイトの上位に位置していた。


 進化したアンジェラのスキルの強大さに、僕も腰を抜かしそうである。


『次期、アーデルハイド王アベル様。ありがとうございます。

 私の娘に力を貸してくれて。

 私に娘を守る機会を与えてくれて……

 これより、私もアンジェラと共に、あなた様に協力いたします』


 死神の女性は、優雅にお辞儀して、デスサイズ(死神の鎌)を構えた。

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