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64話。神の意思の体現者2

「ぉおおおおおおお──ッ!」


 僕はフォルガナ王ダレスに斬撃を叩き込んだ。


 ぎっんッッッ!


 耳をつんざく金属音。

 見ればダレスの回りに出現した光の壁が、神剣グラムを弾き返していた。


「ほうっ? なかなかやるようだが、余の【対物魔法障壁アンチ・マテリアルシェル】の前では、物理攻撃など無意味!」


「なら、これならどうだ! 神剣グラムを強化! 【筋力】を限界突破!」


『了解』


「はぁあああああ──ッ!」


 攻撃力を極限まで強化した僕は、暴風のような勢いで、剣を連続で振るう。


「ば、バカな……ッ!?」


 大気を震わせる衝撃音。激しく散る火花。

 やがてダレスの魔法障壁に亀裂が走って、砕け散った。


「ちぃいいいいい──ッ!?」


 ダレスが地面を蹴って、距離を取る。僕の剣はその鼻先をかすめた。


「調子に乗るなぁああっ!」


 追撃しようとするが、ダレスから連続で魔法の矢が放たれる。


「アベル、避けて! 【聖盾ホーリー・シールド】」


 リディアから警告と同時に、魔法防御力を高める防御魔法が飛ぶ。


「ぐぅッッッ!?」


 ダレスの魔法の矢が突き刺さった右肩から、血が噴き出した。信じられないくらいの魔力だ。


「【魔法防御力】を限界突破!」


 さらに魔法の矢を連射され、僕は守りに徹する。

 周囲の地面が抉れ飛んで、大穴がいくつも開いた。


 こいつはヤバい。

 【魔法防御力】を限界突破すれば耐えられるが。一度にふたつ以上の能力値を限界突破できないため、攻撃に転じることができない。


「真・鳳凰剣!」


 ティファがダレスに向かって、魔法剣の奥義を放った。翼を広げた炎の鳥がダレスを襲う。


「この力はっ!?」


 真・鳳凰剣は、ダレスの防御を破って、その身を焼いた。以前よりも、威力が上がっている。


「見たか! ティファの【恋刃このは】は大好きな人のために魔法剣を使うと攻撃力が数倍に跳ね上がるスキルだ!

 ……てっ、そうか。ティファは僕のことが、もっと好きになっているんだな」


「いやぁあああ! 解説しないでください! 恥ずかしいっ!」


 ティファは顔を真っ赤にして慌てていた。


「えっ? なんで恥ずかしがる必要があるんだ?」


「なるほどな。これがバフ・マスターの力か。余の【大聖者】と同じく、神の領域に届きうる力……いささか、あなどっていたようだ」


 ダレスの負った火傷がみるみる回復していく。


「だが、余の力に勝るほどではないな。クククッ。【大聖者】の能力がひとつ【HP自動回復・極】(リジェネレーション)だ。

 余にはドラゴンゾンビ並の回復力が備わっておる。

 この身を滅ぼすことなど、何人たりとも不可能だと知れ!」


 ダレスが勝ち誇るかのように嘲笑った。

 リディアとティファが気圧されたように、うめく。


「これがフォルガナ王の【大聖者】。【大聖女】とは、完全に別物じゃないの!?」


 リディアの【大聖女】は神聖魔法と回復魔法の効果を3倍に高めるスキルだ。

 ダレスの【大聖者】は、それに加えて複数の能力を併せ持っているらしい。

 だが……


「お前を滅ぼすことは不可能? そうかな? じゃあ、なんで、こちらの攻撃を、そんな必死にかわそうとしているんだ?

 その能力は心臓や頭を潰されても、復活できるのか? 身体を八つ裂きにされても?」


 ダレスの笑いが止まった。


「それは試したことがないんだろう? そして、限界があることには薄々気づいている。回復にタイムラグがあるからな」


 ティファが与えた火傷は、一瞬で回復したりはしなかった。

 ドラゴンゾンビ同様、回復する前に殺しきれば勝てるハズだ。つまり、ダレスは決して神でも無敵でもない。


「ほぅ? 今のわずな攻防で、【HP自動回復・極】(リジェネレーション)の底を見抜いたというのか? おもしろい」


 ダレスの顔から見下したような色が消え去った。


「これは久々に、全力を出して戦えそうであるな」


 代わりにヤツが浮かべたのは歓喜だった。

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