61話。魔物の軍勢に戦わずして勝つ
よしアンジェラから僕に対する忠誠の誓いを引き出したぞ。
これで今回の戦争には、完璧な勝利を収めたと言える。
戦争をするなら、ただ勝つのではなく、最大限に利益を得なくては駄目だ。
そうしてこそ、次の勝利と繁栄に繋がる。そうしてこそ、大切な物を守り抜くことができるんだ。
「アンジェラ王女、アベル様をご主人様と呼ぶとは、どういうおつもりですか? ルーンナイツに入るのを承諾したのなら、アベル団長でしょう?」
ティファが、妙な部分に食ってかかった。
「ティファ、あなたの嫉妬は露骨で見苦しいわ。アベルは素敵な殿方だもの。私の上に立つのは、アベル個人でしかあり得ないわ。
要するに、私はアーデルハイド王国ではなく、アベル個人に忠誠を誓うということよ。
どうぞ、この身を好きに使ってくださいね。ご主人様」
「フォルガナのお姫様から、ご主人様とか言われると……なんか変な感じだけど。よろしく頼むよ」
「し、嫉妬ってなんですか!? 私はアベル様を心配しているだけで、嫉妬とかはしていません!」
ティファは、なぜか慌てふためいていた。
「まあ何にせよ。良かったわ。
これで今回の戦争はひとまず終わりね。
それじゃ、アンジェラ。さっそく魔物の軍勢を撤退させてよね」
リディアがほっとした様子で促す。
「ええ。もちろんよ。
バラン! いつまで寝ているの? 命令よ。これから魔物の軍勢までおもむいて、全軍撤退させなさい」
アンジェラが大声で呼びかけると、ようやく動ける程に回復したバランが姿を見せた。
「……姫様。話が見えぬのですが、これは一体?」
「私はアベルの家臣になったの。フォルガナの王女はもう辞めるわ。
そういう訳だから、魔物たちにはアーデルハイドでの乱暴、略奪の一切を禁止して、全軍すみやかに撤収させなさい。
あなた、仮にも騎士団長だったのなら、できるわよね?」
「なぁ!?」
バランは素っ頓狂な叫びを上げた。
「それでは姫様の騎士としてフォルガナで出世して、リディアを奴隷にして楽しく暮らすという俺の計画が!?」
「……そんなことを考えていたのか」
「最低ですね」
「ゴミ以下だわ」
僕たちは氷点下の眼差しをバランに向けた。
「お、お願いだから、私の品位を下げないでちょうだい。
ああっ、もう。あなたなんかを騎士にしたのは、完全に失敗だったわ!」
アンジェラは頭痛をこらえるように、額に手を当てた。
「あなた、アベルに私怨があるようだけど。アベルは私のご主人様よ?
もし直接的にも間接的にも、アベルに無礼な振る舞いをしたら……
私、とことん残酷になるわよ。覚えておくことね」
「はっ、はは……っ!」
バランは顔面蒼白となって、ひれ伏した。
そのままアンデッドの騎馬に乗って、逃げるように去っていく。
「クソッ!? 姫様がアベルの家臣で、俺が姫様の家臣ということは……俺はヤツの陪臣ということではないか!
だが、臣下の臣下は臣下ではない。俺がアベルの命令を直接聞く必要はっ……!」
その際にバランは、思考をだだ漏れにしていた。
どうも僕の陪臣(家臣の家臣)となることが悔しいらしい。
もっともバランはアンジェラに絶対服従の吸血鬼。もう僕たちに危害を加えることは、決して無いだろう。
「ところで、アーデルハイド王は愛人を作ることはできるのかしら?」
アンジェラが僕の腕を取って、尋ねてくる。
少女の柔らかくて温かい感触に、心臓が跳ねた。
あれ? なぜ、そんなことをこの娘は聞いてくるのだ?
「無理だから」
「無理です」
ティファとリディアが、見事にハモった。
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