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58話。バフ・マスター、父を超える

 父上は猛然と踏み込むと、僕に向かって残像を伴う連撃を放ってきた。

 秘剣【アシュラ】。ドラゴンも一瞬で、バラバラに斬り刻む超高速の剣だ。


「【敏捷性】を限界突破!」


『了解』


 僕は【敏捷性】を∞(無限)にして対抗する。


「ぉおおおおお──ッッ!」


 秒間何十回と噛み合う刃が、闇の中で激しい火花を散らす。

 剣技では足元にも及ばない父上に、僕は必死に食らいつく。


「神剣グラムを強化!」


『了解。神剣グラムの攻撃力と破邪の力を5倍にアップ』


 父上はリディアを奪われまいと、アンジェラが先行させたのだろう。

 すぐにアンジェラが、ここに姿を見せるハズだ。父上とアンジェラのコンビは脅威だった。


「その前に決着を付ける!」


 僕はティファを失いそうになって気づいた。ほんの一瞬の油断から、大切な人はいとも簡単にいなくなってしまう。


 リディアとティファを守るために、感傷は捨てて全力で父上を討つ。

 それが誰かを守るために剣を振るえ、と教えてくれた父上に報いることだと思う。


「……鳳凰剣っ」


 父上が初めて口を開いた。懐かしい声だが、物思いにふける暇はない。


 父上の剣に炎の魔法が付与エンチャントされた。噴出する炎が鳳凰の形となって、僕に襲いかかる。


「ぐうううううっ!」


 炎に焼かれながらも、僕は怯まずに剣を振るう。ここで勢いを止めたら、一気に押し込まれる。


 全身が激痛に震えたが、その痛みを完全に無視した。


「アベル! 私も一緒に戦うわっ!」


 ティファの治療を終えたリディアが叫んだ。


「いや、父上とは一対一で勝負する!」


「えっ……で、でもっ!」


「その方が、全力以上の力が出せる気がするんだ」


 完全に僕のわがままだが、この勝負だけは、今まで僕がつちかってきた僕自身の力だけで挑みたかった。

 それを父上も望んでいるような気がした。


 フォルガナとの戦争中に、父上と一対一になれる機会は、これが最初で最後だろう。

 

「雷神閃!」


 父上が、雷の魔法を付与エンチャントした神速の剣を撃ち込んでくる。

 僕は紙一重でガードしたが、大きく弾かれて後退した。


 父上が腕を捻り、拳を回転させ、剣に旋風の魔法を付与エンチャントさせた。


 この技は知っている。相手の盾や鎧をぶち破って刃を届かせる魔法剣の奥義だ。

 父上が一瞬で間合いを詰めてくる。


「アベル様、逃げて!」


 その技の威力を知ってるティファが、悲鳴を上げた。

 

「我が奥義、眼に焼き付けよ! 風皇刃ふうおうじん!」


 旋風を伴って猛回転する刺突が、浴びせられる。


「【筋力】を限界突破!」


 僕は父上の剣を真っ向から迎え撃った。

 大技ではなく、父上の残してくれた映像を頼りに習得した上段斬りだ。

 これが僕が唯一、頼れる技だった。

 

 激突する刃と刃。


 父上の剣がへし折れて、僕の剣がその身を断ち切った。


 決して偶然ではない。

 父上に勝つためには、その剣を破壊するしかないと考えた。そのために強化した神剣グラムを、なるべく同じ箇所に撃ち込んでいたのだ。


「……見事だっ」


 兜が割れて、父上の顔があらわになる。

 満足そうな微笑がそこには浮かんでいた。


「もう思い残すことは何もない……

 自信を持て。今のお前ならフォルガナ王にも引けを取らぬだろう。あとはティファを頼れ……っ」


 そう言い残して、父上は消滅した。


―――――――


死の騎士を倒しました。

経験値を獲得しました!


名 前:アベル・ベオルブ


レベル: 28(UP!)


体 力: 6476(UP!)


筋 力: 9253(UP!)


防御力: 7342(UP!)


魔 防: 6865(UP!)


魔 力: 7791(UP!)


敏 捷: 6184(UP!)


―――――――

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