56話。ステータス限界突破
バフ・マスターのLv7ボーナス【ステータス限界突破】。対象ひとりのどれかひとつのステータスを∞(無限)にする。
僕が望んだような生命力を強化するタイプの能力ではなかった?
一瞬、気落ちするが、すぐに頭を切り替える。今は一秒でも無駄にできない。
本当にティファを救うのに役立たないのか、まずは検証だ。
「システムボイス。教えてくれ。これは具体的に何ができるんだ!?」
ティファを強く抱きしめながら、尋ねる。少女の華奢な身体から、どんどん血が抜けて、冷たくなってきていた。
僕の体温で、少しでもティファを温めなくてはならない。
『誰かひとりをまず指定します。
次にステータスの能力値【体力】【筋力】【防御力】【魔法防御力】【魔力】【敏捷性】のいずれかを選択します。
選択した能力値が9999の上限を超えた数値∞(無限)になります』
「ステータスのひとつが限界値を超えて強化される、ということか?」
『肯定。誰のどのステータスを限界突破させますか?』
僕は考える。
神馬スレイプニールの敏捷性を限界突破させ、バラン団長にすぐに追いつくという手もあるが……
今、試すべきはこちらだ。
「ティファの【体力】を限界突破だ!」
『了解』
体力は行動の持久力を表したモノだが、生命力にも関係しているステータスだ。
体力を∞(無限)にすれば、ティファの命をながらえることができるハズだ。
「……あ、アベル様、さきほどの寿命が20年減るというのは? まさか世界と危険な取引をしたのですか?」
「ティファ!?」
口も開けないほど衰弱していたティファが、言葉を発した。その顔は、心なしか血色が良くなっている。
僕はうれしくて、目頭が熱くなった。
同時に、うかつなことを、焦って口にしてしまったことに気づく。
「心配しなくていい。なんでもないんだ。しゃべらず、とにかく身体を休めていてくれ」
「……そうは参りません。も、もし大きな代償を支払って新たな力を得たのだとしたら……それは自殺行為です」
ティファの声は上擦っていた。
「……なぜ、私なんかのためにそこまで……今はリディア様が大変な時なのに……」
その時、夜の森のあちこちから、不気味な笑い声が響いてきた。
これはアンデッドモンスター【幽霊】の気配だ。
「アンジェラの犬どもがやって来たか。ご主人様の前にこいつらを潰す! 神剣グラムを強化!」
『了解』
幽霊の群れが行く手を遮る。だが、僕が神剣グラムを振るうと衝撃波が発生し、幽霊どもは悲鳴を上げて消え去った。
どうやら衝撃波にも、破邪の力が乗っているようだ。
「僕はあきらめが悪くて欲張りだからな。ティファもリディアも両方救う! だから、絶対に死ぬな」
幽霊たちが、火や氷の攻撃魔法を放ってくる。
一発もティファに被弾させる訳には、いかない。
「はあああああっ!」
僕はそれらの魔法を、神剣グラムですべて弾き返した。
続けて剣の衝撃波で、奴らを一網打尽にする。森の木々もまとめてなぎ倒された。
残りの幽霊どもは恐れをなしたのか、散り散りに逃げ出した。
『さすがは我が主! 王にふさわしき力だ』
スレイプニールが賞賛してくる。
「アベル様っ……はい。ティファは絶対に死にません。それが、あなた様のお望みなら……いつまでも、あなた様のおそばに」
ティファが涙を流しながら、僕にすがりつく。
「でも、でも……っ。私アベル様のお命を守るどころか、そのお命を削ってしまうなんて。騎士失格です……っ。シグルド様にも顔向けできません。
リディア様にも、なんとお詫びすれば良いか……」
「なんでも無いって言っただろ? もう泣くなティファ!」
僕はティファを抱きしめながら告げた。
「ティファと、これらもずっと一緒にいたいんだ」
少女の身体が、腕の中で大きく震えた。
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