51話。剣聖イブ、ゼルギウスの魔剣を手に入れる
僕はドラゴンゾンビの右脚に、上段斬りを放った。
鱗が吹き飛び、大きな傷口が開く。だが、肉があっという間に盛りがって、傷口が塞がってしまった。
破邪の剣グラムの攻撃が、致命傷にならないことにあ然とする。
「くっ!」
僕は振り下ろされた爪を、バックステップでかわして距離を取った。
今の一撃を喰らえば、バフ・マスターで強化されていても、無事ではすまなかったことを直感した。
「はぁ!」
剣聖イブが、一呼吸で無数の斬撃を放つ。
それはドラゴンゾンビの尻尾を斬り飛ばし、胴体を深く切り刻むが……
すべての傷が一瞬で再生した。
ドラゴンゾンビは何ごともなかったように、イブを蹴り飛ばそうとする。
「そんなっ」
頭を低くして、蹴りをかわしたイブは驚愕に顔を青くした。
ドラゴンゾンビの血を浴びたイブの剣が、腐食して折れてしまったのだ。
「ドラゴンゾンビの血液は、ブレスと同じく強酸性なの。剣で斬ったら、剣が溶けてしまうわ」
アンジェラのおかしそうな笑い声が響く。
「イブ。私の剣を使って下さい!」
「かたじけない」
ティファがイブに剣を手渡した。
ティファは魔法攻撃を仕掛けてくる幽霊の群れに、魔法の矢を撃ち返す。
攻撃を受けた幽霊たちが、悲鳴を上げて爆散した。
「雑魚は私が相手をします。ブレスの防御も担当しますので、おふたりはドラゴンゾンビを!」
「ティファ、頼むぞ!」
幽霊の魔法攻撃は、元がフォルガナ兵だけあってかなり強力だった。
僕はともかくとして、イブは喰らえば、かなりのダメージを受けるだろう。厄介極まりない。
「……くぅ」
イブは剣を構えたまま動かない。
下手に攻撃しても効果が望めない上に、武器を壊されてしまう以上、仕方がなかった。
「剣聖が剣を使えないなんて、お笑い草ね」
「イブ、ゼルギウス将軍の剣を拾え! 名のある魔剣のハズだ!」
僕はドラゴンゾンビの脚に神剣グラムを叩き込みながら叫ぶ。
フォルガナの名将の剣なら、ドラゴンゾンビの血液にも耐えられるハズだ。
「さすが、その手があった!」
「くっ。ゼルギウス。立って戦いなさい! 幽霊たち援護を!」
アンジェラの叱咤に、ゼルギウス将軍の遺体が立ち上がる。彼は生前そのままの動きで、向かってきたイブと剣を打ち鳴らした。
イブを牽制しようと、幽霊たちが一斉に魔法の矢を放つ。
彼女は最小の動きで、それらを見切ってかわした。
「ドラゴンゾンビ、アシッドブレスよ!」
ドラゴンゾンビが、イブに向かってブレスを発射しようとする。まずは、イブを潰すつもりか。
「させるかよ!」
僕は神剣グラムを、ドラゴンゾンビの顎に向かって投げつけた。
顎を下から貫かれて、ドラゴンゾンビ
の頭が吹き飛ぶ。
アシッドブレスが溢れ出して、ドラゴンゾンビの全身を焼いた。
ギュオオオオオッ!?
ヤツは悲鳴のような音を上げて、苦痛にのたうち回る。
「なんですって!?」
アンジェラの驚愕の叫び。
敵の力を利用して敵を潰す戦法は、アンジェラから教えてもらったことだ。痛い教訓だったな。
「さすがです。アベル様!」
「これは……かなりの魔剣!」
イブがゼルギウスの腕を断ち切って、その剣を奪った。
イブが剣を振るうとゼルギウスゾンビは、苦悶の声を上げて崩れ去った。
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