50話。アンジェラ王女の三騎士が一。ドラゴンゾンビ
総大将が討たれたことで、敵軍に動揺が広がっていく。
アンジェラが何か仕掛けてくることを警戒していたが、結局、何も無かった。
彼女はやはりフォルガナ軍には、いなかったらしい。
「ティファ! 合図を送れ。フォルガナ軍の掃討は、後続の軍に任せる」
「はっ!」
僕たちの後続には、アーデルハイド軍2万が控えていた。
彼らに攻撃を指示するための狼煙を上げさせる。
アンジェラがフォルガナ軍にいないことが分かれば、あとは数で攻めるだけだ。
敵軍は指揮官を失って、混乱状態だ。これなら魔法で劣るアーデルハイド軍でも、楽に勝てるだろう。
「くそぉおおっ! 致し方ない。全軍退却! アレを使うぞ!」
「化け物姫のアレをここで解放するつもりですか!?」
「そうだ。アーデルハイドの次期国王は、何としてもここで討ち取れという陛下のご命令だ! 死にたくなかったら、全力で離脱しろ!」
なんだ……?
不穏な空気を感じ、僕はバフ・マスターの強化をルーンナイツ全員の軍馬にかけた。
化け物姫というのは、おそらくアンジェラのことだろう。
やはり、何か罠を張っていたらしい。場合によっては、すぐに部下たちを退避させねばならない。
ドォオオオオン!
その時、爆音と共に、戦場のど真ん中に黒い竜の姿が浮かび上がった。
「ま、まさか……ドラゴンゾンビか!?」
巨体から溢れ出す、魂を押し潰すかのような威圧感。強烈な臭気を放つそれは、最強最悪のアンデッド、ドラゴンゾンビだ。
しかも、前に僕が倒したドラゴンより、はるかに大きかった。
「おおおおおっ! 巻き添えを喰らうぞ! 全軍退却!」
フォルガナ軍が我先へと逃げ出していく。
自分たちが召喚した魔物に恐怖を感じているようだ。
「ルーンナイツ、ブラックナイツも退却だ! ティファ、イブ! 僕たちだけで、ドラゴンゾンビの相手をするぞ!」
「はい!」
「了解……すごい怪獣」
退却の命令を下した直後、ドラゴンゾンビがブレスを吐いた。
それは触れる物すべてを溶かすアシッドブレス(強酸の息)だ。
「退け退け!」
ケタ外れの速度で、僕の配下の両騎士団が離脱していく。間一髪、彼らはブレスの有効射程距離より逃れた。
「くぅううう!? すごい圧です!」
ティファが僕とイブの頭上に魔法障壁を展開し、アシッドブレスを防ぐ。
「ひぃぐおおお!?」
「なぜ、我々にまで!?」
アシッドブレスは、なんとフォルガナの騎馬隊にも浴びせられた。彼らはあっという間に蒸発した。
フォルガナ兵たちがいた場所より水蒸気のようなモヤが上がり、それは苦悶の表情を浮かべる人の形となる。
死んだフォルガナ兵たちがアンデッドモンスター【幽霊】と化したのだ。
「クスッ。またお会いしましたね。アーデルハイドの次期国王陛下。夜会には、まだ早い時間ですが、おもてなしの準備はできていますわ」
ドラゴンゾンビより、かわいらしいアンジェラの声が響いてくる。
アンジェラの姿は見えない。声だけを配下を通して、ここに届けているようだ。
「まさか自軍の兵をアンデッドに変えてしまうなんてっ……!」
「これは、噂以上にイカれた姫君」
下馬したティファとイブが剣を構える。
僕も馬より飛び降りる。ドラゴンゾンビ相手に馬が怯えてしまっていた。
「剣聖イブ様のお噂もかねがね。物理攻撃しかできない、あなたにとって【幽霊】は天敵でしょう?」
【幽霊】たちが、笑い声を上げながら炎の魔法を放って来る。
元がフォルガナ兵だけあって、魔法攻撃が得意らしい。
「イブ対策のアンデッドという訳か!」
僕は炎の魔法をかわしながら、ドラゴンゾンビに向かって突っ込んだ。
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