41話。剣聖イブがバフ・マスターの配下になる
ルーンナイツの兵舎の前は、うら若き乙女たちで、ごった返していた。
先日のアンデッド軍団の討伐と、僕とリディアの婚約発表により、ルーンナイツの名声が爆上がり。入団希望者が押し寄せているのだ。
戦力強化のため、まずは人材の確保が必要だ。
僕たちは、その対応に追われていた。
「それでは、あなたの志望動機について教えて下さい」
兵舎の一室で、僕とティファは入団希望者の面接を行っていた。
ティファが真剣な眼差しで、向かいに座った少女に質問する。
相手は魔力測定などの入団テストをクリアして、最終試験である面接までこぎつけた娘だった。
「凱旋パレードをしていたルーンナイツとアベル様をひと目見て、かっこいいなあと思って、応募しました!」
「はい、不採用です。お帰りください」
「はぁっ!? なんでよ!?」
少女が椅子を蹴立てて立ち上がる。
「ルーンナイツは魔法王国フォルガナに対抗すべく、王女殿下によって設立された騎士団ですよ。浮ついた気持ちで参加されては困ります」
ティファはにべもなく、切って捨てた。
まあ、これは仕方がない。
先日、リディアの護衛の自覚に乏しい少女騎士らが、刺客に気絶させられるという失態を犯したからな。
「そ、そんなことはないわ! 私はアベル様のために命をかける覚悟ができているのよ!」
「ますます気に入りませんね。ルーンナイツは王女近衛騎士団ですよ? アベル様のためではなく、リディア王女殿下のために命をかけなくて、どうするんですか? 残念ですが、お帰りください」
「ぐっ、くぅ……」
少女は悔しそうに唇を噛みしめた。
これはちょっとかわいそうだな。ルーンナイツで圧迫面接を受けたなんて噂が広がると困るし、フォローをしておこうか。
「悪い。リディア王女が刺客に襲われて、今、ピリピリしているところなんだ。入団試験を受けに来てくれて、すごい感謝してる」
「は、はい! アベル様にそんな風におっしゃっていただけるなんて感激です! 記念に握手してください」
「もちろん」
「ちょっとアベル様っ……」
ティファが咎めるような眼差しを向けてくるが、構わず女の子の握手に応じる。
「きゃあああっ! ありがとうございます。一生の思い出になりましたっ!」
女の子は大はしゃぎして、出ていった。
「おい、ティファ。ちょっと言い方がキツ過ぎないか?」
「そうでしょうか? ミーハー気分でやって来る娘たちを減らすためには、少々、厳しい態度で接した方が良いと思いますが」
ティファは頬を膨らませて不機嫌になっていた。
「アベル様、アベル様って。入団希望者には、アベル様目当ての女の子が多くて困ります。まったく、何を考えているのだか……」
「何か噂がひとり歩きして、僕が実際以上の英雄に持ち上げられている感じなんだよな。確かに、マズイよな」
ついこの間まで、ブラックナイツで落ちこぼれ扱いされていた僕にとっては、針のむしろのような心境だった。
「そんなことはありません。アベル様はすばらしいお方です。今までは、環境が悪くて評価されなかっただけです!
私はアベル様が正当に評価されるようになってうれしいのですが……女の子たちが殺到してくるのは問題だわ」
「はぁっ? なんだって?」
ティファの後半の声が聞き取りにくかったので聞き返す。
「い、いえ! 何でもありません。時間も押していますし、面接を続けましょう」
ティファが慌てた様子で、次の入団希望者を呼ぼうとした。
その時、伝令役の少女騎士が扉をノックした。
「失礼します! ブラックナイツの副団長、剣聖イブ様が参られています。
なんでもバラン団長が反逆罪で投獄されて、イブ様が団長に就任されたとか」
「バラン団長が反逆罪?」
僕はティファと顔を見合わせる。
そういえばリディアが、反逆の疑いでバラン団長を追求すると言っていたな。
僕はバラン団長が、フォルガナに寝返っているとは思えなかった。
メリットが無いからだ。
バラン団長は魔法が使えないし、魔法王国フォルガナに寝返ったところで重用される訳がない。
なによりバラン団長がアーデルハイドの名門貴族の地位を捨ててまで、フォルガナにつくかと言えばかなり疑問点だ。
「バラン団長を、いきなり投獄するなんて。リディアも思い切ったことをしたな」
「たぶん。それなりの証拠があったのでしょう。英断だと思いますよ」
ティファがにべもなく言う。
「失礼。アベル殿。今後、ブラックナイツはあなたの指揮下に入らせていただきたく、話をしに来た。よろしいか?」
黒髪の美少女、剣聖イブが入って来て、ペコリと頭を下げた。
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