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39話。【バランSIDE】バラン団長、反逆罪で投獄される

 王宮の貴人専用の取り調べ室に、バランは連行された。

 騎士の命である剣を奪われ、手錠もかけられて、完全に犯罪者扱いである。


「バラン、あなた……よくも、この私と。私の夫、アベルの命を狙ってくれたわね!」


 バランの目の前では、リディア王女が憤激に身を震わせていた。


 昨夜、魔法王国フォルガナの刺客となったブラックナイツの騎士に襲われたという彼女は、やつれた様子だった。


 バランに反逆の疑いをかけて、王宮に連行させたのは、リディア王女だった。

 王女の隣には、国王がしかめっ面で座っている。


 部屋に詰めた憲兵たちは、バランが何かしたら、即座に剣を抜けるように油断なく構えていた。


 リディアの護衛であるルーンナイツの少女騎士らも、魔法をいつでも撃ち込めるよう手のひらをバランに向けていた。


「こ、これは王女殿下。とんでもない誤解でございますな。一体、いかなる証拠があって、この私を糾弾されておるのでございましょうか?

 長年、王国に貢献してきた私に対して、あまりに無体な仕打ちではありませぬか?」


 さすがのバランも、自分が非常にマズイ状況に置かれていることがわかった。

 リディアの表情を見て、慎重に言葉を選ぶ。

 決定的証拠が無ければ、言い逃れる自信があった。


「私たち夫婦は、あなたの配下に殺されかけたのよ。ひとりはアベルが斬ったけど、もうひとりは、投獄して事情を聞き出しているわ」


 リディアは『夫婦』という言葉を必要以上に強調しながら語る。アベルに予想以上にゾッコンの様子だった。


「実行犯の騎士によると、バランから私たちを襲撃しろ。アベルを暗殺しろと命令されたそうよ。

 その後でフォルガナの王女から、バフ・マスターの力を逆手に取った、より成功率の高い策を授けられたらしいわ。

 まさか吸血鬼になる呪いをかけられていたとは、思っていなかったみたいだけど」


「フォルガナの王女?」


 話がトンデモナイ方向に行っていることをバランは感じ取った。

 昨日の戦勝会にフォルガナの王女アンジェラがやってきたことを、バランは人づてに聞いていた。


 実行犯が早々にバランが黒幕であることを明かしたことについては、裏切られた気持ちでいっぱいだった。


 せっかく、目をかけてやっていたというのに……

 

 ともかく、この場を切り抜けねばならない。


「もしや、この私とフォルガナの王女が、共謀しているなどと、お疑いなのではありますまいな?」


「それ以外に何が考えられるって言うのよ? あなたがアンジェラ王女を手引きしたんじゃないの?」


 リディアは、そう決めつけている様子だった。

 確かに、敵国の王女がひとりで乗り込んでくるという異常な状況は、何者かが手引きしたと考えるのが自然だった。   


「なんと、まったく。余は悲しいぞバランよ。一時期は、お主をリディアの夫にと考えていたこともあったというのに……」


 国王が沈鬱な顔を見せる。


「こんなヤツが私の夫だなんて。考えただけでもゾッとするわ! 私に触れて良いのはアベルだけよ!」


 なんだと!? この小娘がっ……


 王女でなければ殴り飛ばして、土下座させ

ているところだ。

 リディアに密かな好意を寄せていただけに、ゴミのように扱われたバランの怒りは相当なものだった。


 自制心を総動員して、なんとか耐える。


「……私には、まったく預かり知らぬこと。王女殿下を襲撃した不届き者は、嘘をついてるのでしょう。

 この国、最強の騎士であるこの私に濡れ衣を着せようという、フォルガナの計略でありましょうな」


「この国、最強の騎士? アベルを差し置いて、よくもそんな妄想が吐けるものね。あなた、頭がおかしいんじゃないの?」


「な、なんだとっ!?」


 カッと頭に血がのぼった。


「ドラゴンにもアンデッドにも負ける。連戦連敗のあなたを、もう誰も最強だなんて思っていないわ。無様で滑稽よ!」


「言わせておけば!」


 衝動的にリディアに掴みかかろうとしたバランを憲兵たちが取り押さえる。

 ルーンナイツが、リディアの前に出て壁となった。


「バラン殿、王女殿下に手をあげるなど……乱心されましたか!?」


「ふん。これで決定的ね。お父様、バランは反逆罪で、ブラックナイツの団長を解任。牢獄に入れましょう!」


 リディアが勝ち誇ったような目を向ける。

 バランはそれで、この小娘に一杯食わされたことに気付いた。

 

 実行犯の証言だけでは、反逆の決定的証拠とはならないが、王女に手をあげたとなれば、もはや言い逃れはできない。

 バランは昔から、カッとなると後先が考えられなくなるタチだった。


 リディアはそれを知っていて、思い切りバランを挑発したのだ。


「うむ……」


「お父様も祝勝会でのバランの態度はご覧になったでしょう? 主君となるアベルに対して、本来なら剣を捧げなければならないところを、略式で済ませて逃げるように帰ったわ。

 大勢の貴族がそれを見ているわ。バランに叛心があることは明白よ」


「それは余も見ておる。まさかバランがフォルガナに寝返って、配下を刺客とするとは……信じられぬが、致し方あるまい」


 国王は重々しく告げた。


「バランの騎士団長の任を解く。バラン、そなたにはフォルガナとどのような取り引きをしたのか、洗いざらい吐いてもらうぞ?

 本来なら打首とするところだが、そなたはオースティン侯爵家の人間。命までは取らぬが、一生、牢獄暮らしを覚悟しておれよ?」


「国王陛下、私はフォルガナに寝返ってなぞ、おりませぬ!」


「見苦しい言い訳だな。そなたには、失望した。仮にも騎士なら、潔くいたせ!」


 国王はバランを厳しい目で睨みつけた。

 バランの破滅が決定した瞬間だった。

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