31話。【ティファSIDE】ティファ、愛するアベルのために最強の騎士と対決する2
「かわいそう。あなたがいくらがんばっても、アベルの愛は手に入らないのに。
クスッ、いいわ。じゃあ無理矢理でも吸血鬼に転生させてあげる」
アンジェラが笑うと、シグルドが斬撃を叩きつけてきた。
「くぅっ……!」
ティファはその攻撃を剣で受け流すが、あまりの威力に腕が折れそうになる。
「実はあなたをひと目見た時から、かわいくて素敵な娘だなと思っていたのよ。
吸血鬼に転生すれば、あなたは自我を保ったまま、私に絶対服従する存在になるわ。きっと私たち、良いお友達になれると思うの」
「そういうのは友達とは言いません! 絶対にお断りです」
ティファは反撃で、Aランクの火魔法《灼熱地獄》をシグルドに向けて放つ。
だが黒衣の騎士は、足元より噴き上がる炎を意にも介さず突っ込んで来た。
「ぐくうううっ!?」
剣をすんでのところで受けるが、弾き飛ばされ、全身が衝撃に軋む。
アンデッドは火に弱いハズなのに、なぜ?
「ああっ、せっかくのドレスが台無しね。私のお友達になったら、もっとあなたに似た合ったドレスをオーダーメイドでプレゼントするわ。
お喋りができる女の子のお友達が、ずっと欲しかったの」
アンジェラの戯れ言を聞き流しながら、ティファはリッチが火系統の魔法に対する耐性を得ていたことを思い出した。
恐らくアンジェラは、ただの死霊使い(ネクロマンサー)ではなく、アンデッドを強化するスキルを持っている。
「殺してはダメよ。抵抗できないくらいに痛めつけて」
シグルドが超高速で無数の斬撃を放ってきた。周囲の地面が暴風のような剣圧で削られ、粉塵が飛ぶ。
まるで人の形をした竜巻だ。
「……シグルド様の秘剣アシュラ!?」
ティファとシグルドの間で、剣戟の火花が乱れ散った。
ティファは攻撃を剣で受け流し、必死でかわし続ける。
「ふふふっ、どこまで耐えらるかしら?」
一撃一撃が重く、受ける度に意識が飛びそうになる。
アベルのバフ・マスターの強化を受けていなかったら、3秒も保たなかったかも知れない。
シグルドは生前よりも、明らかに強くなっていた。
「負けられない……アベル様のために!」
バフ・マスターの力を通して、アベルが寄り添ってくれているような感覚があった。
この胸の高鳴りが、ティファの剣に力を与えてくれる。
「雷神閃!」
剣に雷の魔法をまとわせて放つ神速の斬撃。
シグルドに防がれるも、衝撃で相手を後退させた。
「……うううう……」
たが、一連の攻防で、ティファの身体はボロボロになっていた。
シグルドの剣を何度も受けたことで、両腕の骨にヒビが入り、もう剣がまともに握れなくなっている。
「私のスキル【不死の支配者】で強化されたシグルドの剣を、そこまで防ぐことができるなんて……
クスッ。ノーリスクでここまでの強化率を誇るバフ・マスターの力、ますます欲しくなってしまったわ。
私のスキルと合わされば、無敵の軍団が作れるわね」
「……あなたは、やはりアベル様を自分のモノにしようと?」
「ええ、そうよ。こう見えて臆病なの。私を絶対に裏切らない強くてたくましいナイトに囲まれていないと、安心できなくて。
彼なら、そうね。私の騎士団長を任せても良いわ」
「なら、ますます負けられません……!」
この命はアベルからもらった物。この命の全てを賭けて、アベルの敵を討つ。彼を守り抜く。
ティファは最後の力を振り絞って剣を構えた。
狙うは師シグルドから教えてもらった魔法剣の最大奥義だ。
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