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28話。バフ・マスター、アンジェラ王女の罠を切り抜ける

「アベル団長! 私たちもご同行させてください」


 会場の警備にあたっていたルーンナイツのふたりの少女騎士たちが、合流を申し出て来た。


「なっ、なっ!? めちゃくちゃ、かわいい娘じゃないか?」


 ゼノらが目を白黒させている。

 ルーンナイツは、容姿で採用を決定しているのではないかと疑いたくなるほど、美少女しかいない集団だった。


「うん、ありがとう。よろしく頼むよ」


「はいっ!」

 

 少女たちは元気良く返事をする。

 僕はゼノたちにもバフ・マスターの全ステータス10倍強化をかけた。


「おおっ!? や、やっぱり、すごい力です。俺たちが最強だったのは、全部アベル様のおかげだったんですね」


「そうとも知らずに俺たちは調子に乗って……もっと早く、このことに気づいていたら」


「バフ・マスターは最初は、本当に貧弱なスキルでしたから、仕方ないですよ」


 なぜか、ゼノたちは非常に思い詰めたような顔をしていた。


「では、僕がリディア王女の横を固めるので、先輩たちは前をお願いします」


「はっ」


 ゼノたちに先頭に回ってもらったのは、何となく彼らの挙動がおかしかったからだ。

 考え過ぎかも知れないが……


 もし何かあっても、僕たちの目の前にいるのなら対処しやすい。


 歩き出すと、僕たちの背後を固めた少女騎士たちが、ヒソヒソ噂話を始めた。


「アベル団長って、ぜんぜんエラソーにしないところがステキよね!」 


「さっきもフォルガナの王女相手に、ビシっと言い返してらして、カッコ良かった!」


「むぅ。あなたたち、アベルがいくら格好良いからって浮かれ過ぎないでよね。彼は私の婚約者で、あなたたちをは私の近衛騎士なのよ!?」


「はい! 申し訳ありません。王女殿下!」


 リディアに睨まれると、少女騎士たちは首を竦める。

 だが、しばらくすると、またお喋りを始めた。


「ふふふんっ! 実は今朝、アベル団長と朝食をご一緒できたのよ」


「ええっ! うらやましい! 何を話したの?」


「アンデッドの討伐では怪我などしなかった? ですって。もーっ、紳士! 私なんかを気遣ってくれて、すごくうれしかった!」


「本当!? アベル団長! こ、今度、私ともお食事をご一緒していただくことはできませんか!?」


「あなたたち、ねぇ……!」


 リディアが笑顔を引きつらせている。


 どうも彼女たちは、まだ王女の近衛騎士としての自覚が足らないようだ。

 まるでピクニックでもしているかのような浮かれようだった。


 ちょっと前までは、下級貴族の娘として、花嫁修業をしていたようなので、無理もないかも知れないが。


「悪いけど、もっと気を引き締めてくれないかな? フォルガナの刺客に襲われたら、最悪、命を落とすことだってあるんだぞ」


「はぁい……」


 少女騎士は、ペロッと舌を出して、なぜか嬉しそうにしている。

 彼女たち自身のためにも、もっとキツく言うべきなんだろうか……


「でも、大丈夫ですよね。アベル様のバフ・マスターのお力があれば、例えドラゴンが襲って来たって、軽く返り討ちですものね」


「おいっ」


 どうやら、この娘たちは僕の力を過大評価しているようだ。

 初戦を大勝利で飾り過ぎたのかも知れない。


「僕のスキルにだって弱点は……」


 その時だった。

 少女騎士たちが、ゼノに手刀で首を打たれる。彼女たちは、糸が切れたように崩れ落ちた。

 

「王女殿下! お許しを!」


 もうひとりのブラックナイツの騎士が、剣を抜いてリディアに斬り掛かった。

 僕は慌ててリディアを突き飛ばす。


「ぐぅっ!」


「アベル!?」


 間一髪。間に合ったが、僕は右腕を浅く斬られた。

 本来ならダメージを受けることもなかったハズだが、相手はバフ・マスターで強化されていた。


 視界がぐらつく。まさか、剣に即効性の毒が塗ってあったのか?


「俺たちだって、こんなことはしたくねぇんだ! でも、やらなきゃ家族全員、アンデッドにするって脅されているんだよ!」


 ゼノが僕に剣を打ち下ろしてくる。

 ゼノらにかけたバフ・マスターの力を解除し、彼を蹴り飛ばした。


 ゼノは吹っ飛んで、王宮の壁を派手にぶち抜く。


 意識が朦朧としながらも、リディアに再び襲いかかろうとした騎士にタックルを食らわせた。

 壁に叩きつけられて、騎士は動かくなる。


「アベル!? こ、これは、毒ね! すぐに回復魔法で治療するわ!」


 リディアが僕の腕に手を当ててくれる。

 ギリギリだったが、彼女を守り切ることができた。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公色々甘いよ!、人が良いだけでは大切なものは守れないぞ。
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