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26話。バフ・マスター、敵国の王女から私の物にしたいと言われる

 国王陛下が怒声を発した。


「祝いの使者などと言っておきながら、降伏勧告をしてくるとは……! フォルガナの姫君は礼儀をわきまえぬと見えるな」


 それは僕も同意見だった。


 敵国の王女アンジェラの尊大な態度に、貴族たちの怒りのボルテージが上がっていくのを感じる。

 気持ちはみんな一緒のようだ。


「フォルガナは属国にした国の人間を奴隷にするだけでなく、魔法の人体実験にしていると聞いた。悪いけど、そんな国の傘下につくのはごめんこうむる」


 僕がアンジェラの脅迫を突っぱねると、一斉に賛同の声が上がった。


「アベル殿のおっしゃる通りだ!」


「アンデッドをけしかけて、我が国の民を襲わせおって! フォルガナは悪魔に魂を売ったとしか思えぬ!」


「そうよ! そうよ! こっちにはアベルがいるのよ! あなたの思い通りになんてならないわ!」


 リディアも力いっぱい叫んでいた。


「騎士の国アーデルハイドを侮りすぎですよ。ブラックナイツを壊滅寸前まで追い込んで増長されましたか? 残念ですが、アベル様の抜けたブラックナイツなど、最強とは程遠い集団です」

 

 ティファも腰の剣に手をかけながら、前に出る。


「クスッ、アベル様ひとりに頼っておきながら、勇敢な方たちね。本気で私たちに勝てると思っているの?

 めちゃくちゃにされてから従うより、従ってから、めちゃくちゃにされた方が、マシではなくて?」


「従えば100%めちゃくちゃにされる訳か……

 じゃあ答えは簡単だ。戦って勝って、めちゃくちゃにされない方を選ぶ」


 僕の言葉に歓声が湧き上がった。


「そうだ! 我らは貴様らなどには屈しぬぞ!」


「アベル王太子殿下、ばんざい!」


「わたくしたちは、アベル様にみなついて行きますわ!」


 貴族の姫君たちまで、僕にエールを贈ってくれる。


「……素敵な答えね」


 アンジェラが、感嘆の息を漏らす。


「リディア王女になんてもったいない。あなたが欲しくなってしまったわ。もう消えてなくなってしまうこんな国は見捨てて、私のナイトになってくださらない?」


「な、何を言っているのよ、あなたは!?」


 アンジェラの意外な申し出に、リディアが色めき立った。

 僕たちの婚約発表の場で、こんなことを言うとは、なんとも人を喰った王女だ。

 

「悪いが、それも断る」


「……つれないのね。でも、残念。あなたの意思は関係ないの。私に殺されたら、みんな私のお友達になってくれるのよ」


 アンジェラの冷たい瞳で見つめられて、思わずゾクッとする。

 それは、つまり僕をアンデッドにして使役したいということか。


「早く、あなたたちみんなとお友達になりたいわ。そうしたら、私が舞踏会を主催するから、みんなで楽しみましょう」


「……正気とは思えないな。死人と踊って、何が楽しいんだ?」


 アンジェラの異常性に、会場の人々は絶句していた。

 気丈なティファでさえ、顔面蒼白になっている。


「死人は裏切らない。これ以上のお友達はいませんわ。

 では、今宵はこれで失礼いたします。またお会いできることを楽しみにしていますわ。アーデルハイドの英雄様」

 

 完璧な所作で、アンジェラはお辞儀する。

 スカートの裾を翻し、黒衣の騎士ゼファーを伴って、彼女は退出していった。

お読みいただきありがとうございます。

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