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15話。バフ・マスター、国の英雄としてみんなから賞賛される。バラン団長は石を投げられる

 王都の城門をくぐった僕たちルーンナイツは、大喝采に迎えられた。


「アベル様! アベル様!」


「国を救った我らが新たなる英雄!」


「王女近衛騎士団ルーンナイツ、ばんざい!」


 道の両脇を埋め尽くした人々が、ボクに向かって手を振り上げ、喜びの声を上げている。


 みな一様に僕を褒めたたえるので、心臓に悪いことこの上なかった。


 ボクの勝利は早馬を送ったので、すでに人々に知れ渡っているようだ。


「すごい人気ねアベル。せっかくだから、みんなの声援に応えてあげたら?」


 歓声に手を振りながら、リディアがそんなことを言ってくる。


「いや、しかし……僕ひとりの力で勝った訳じゃないからな」


「この国の守護神だと思われてきたブラックナイツが敗北続きで、今この国の民たちは、新たな英雄を欲しているのよ。

 その期待に応えてあげるのも、シグルド様の跡継ぎであるあなたの役目じゃない?」

 

「ブラックナイツのこれまでの活躍も、すべてはアベル様のお力があったればこそです。すでにアベル様は、シグルド様に比肩しうる英雄であると存じます。どうか胸を張ってください」


 リディアだけでなく、ティファまで僕を持ち上げてくる。

 まいったな……


 ドラゴンやアンデッドの大軍の襲来により、みんなの不安が高まっているのも事実だ。

 彼らを安心させるのも、父上の跡継ぎを目指してきた僕の役目だろう。


「そうだな。これも騎士団長の務めだ」


 僕は神剣グラムを抜き放って天高く掲げた。日の光りを反射して、神剣が銀色に輝いた。


「「「わぁあああああっ!」」」


「うおっ!?」


 王都全体が揺れるような凄まじい大歓声が轟き、身を竦ませてしまう。

 

「きゃあ!? アベル様が、私を見てくれたわ!」


「違うわ! 私を見てくれたのよ!」


「あーん! なんて凛々しくてカッコいいお方なの!?」

 

 ボクが視線を向けた若い女性たちが、黄色い声を上げている。

 民たちの熱狂ぶりはすさまじく、感涙にむせんでいる者もいた。


 うれしいけれど、いたたまれない。


 僕はこんな賞賛を浴びるなど、初めてのことだからな……


「これは、ヤバい。早く屋敷に帰るとするか」


「そうは参りませんよ、アベル様。王宮で国王陛下に戦勝のご報告をせねばなりません」


 ティファに生真面目に告げられる。


 それもそうだった。

 僕たちは、歓声に包まれながら王宮へと向かった。



 アベルたちルーンナイツに続いて、バラン団長に率いられたブラックナイツも王都の城門をくぐった。

 大量の戦死者を出した彼らは、みな疲弊しズタボロだった。


「おい、見ろよ。バラン団長のブラックナイツだぜ?」


「また負けたんだってな……」


 かつては拍手喝采で迎えられたバランであったが、人々から向けられるのは侮蔑の眼差しだった。


「アンデッドの軍団に何も考えずに突っ込んで、危うく全滅しかけたところをアベル様に助けられたって話だぜ?」


「カッコわりぃ。っていうか、無能な指揮官の下で戦う騎士様たちが、かわいそうだぜ。今回は何人、死んだんだ……?」


「俺、ブラックナイツの入団試験を受けようと思っていたんだけど、やめるわ!」


「それがいい。今、あんな騎士団に入るヤツは自殺志願者がマゾだぜ」


「私、絶対にルーンナイツの入団試験を受けるわ! それでアベル様の元で戦うの! ブラックナイツの彼氏がいたけど、もう別れる! アベル様の方が100倍素敵だもん!」


「おおっ! 嬢ちゃん絶対そうしろよ!」


 ブラックナイツは、民たちから失望と落胆の声を浴びせられる。

 もはや最強騎士団の栄光は見る影もなかった。


「無能のバラン! お兄ちゃんを返せ!」


 なんとバランに向けて石を投げてくる少年がいた。おそらく戦死した騎士の遺族だろう。


「こ、この餓鬼っ! おい、そいつを捕らえて殺せ!」


「やめなさい」


 バランが命じると、イブが制止した。


「その子に危害を加える者は、私が斬る」


 剣聖にそこまで言われては、動く者はいなかった。

 

「くそぅ! 愚民どもめ、この俺が! ブラックナイツが今まで守ってやった恩を忘れおって!」


 バラン団長は、悔しさのあまり歯ぎしりした。

 そんな彼を、イブを始めとした配下の騎士たちは冷たい目で見つめていた。

お読みいただきありがとうございます。

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