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えぴそうど、その9〜魔王のオキテ

魔王は親衛隊長に話しかけた。

「もうこんな時間なのに城内に魔物どもの姿が少ないぞ。どうした。」

親衛隊長は答える。

「はあ、まだ登城していないものが多いと思われます。」

魔王は怒り狂い、怒髪天を衝く。

「なにい、給料泥棒めが。許さんぞ。」

魔物は夜行性だし給料なんかもらってないんですが・・・・・・。

「親衛隊長、わしがいまから言うことを告知せよ。」

そして悪夢が始まった。

前人未踏の魔境に魔王城はあった。


人が立ち入った事がないから前人未踏で

魔物は人じゃないからオーケーなのである。

魔王城の周辺は1年中霧に覆われ

見るからに憂鬱な雰囲気を漂わせていた。

って、霧で見えないのだが・・・・。

そういうわけで人々は魔王城を見たことはないが

毎朝、決まった時間に森の奥から不気味な鐘の音と不気味な地鳴りが聞こえてくる。

にわとりは怯えて卵を産まなくなり

人々は世紀末の訪れを予感し恐れおののくのであった。


「やべえ、まじ遅刻するぞ〜〜〜。」

魔物たちは地響きを立てながら魔王城へ急ぐ。

「俺、今度遅刻したら3回目だよ〜。」

「げ、最悪じゃん。それってダンジョン送りじゃねえか。」

”ダンジョン”という言葉を聞いて魔物たちは青ざめる。

「おめえ、死ぬぞ・・・・。」


きっかけは一枚の張り紙だった。


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鐘が鳴り終わった。

無情にも門は閉められ、数匹の魔物が取り残される。

槍を持った親衛隊が魔物たちの名前を確認し、手帳につけていく。

一人の男の名前を確認しているとき、親衛隊長の手がとまった。

「魔すけ、お前これで3回目だぞ。かわいそうだがダンジョン送りだ。」

魔すけは怯えて命乞いをする。

「親衛隊長さま〜見逃してけろ〜。嫁と腹をすかせた子供が家でおらの帰りを待ってるだあ。」

「おめえ、独身じゃねえか。嘘つくな。」

親衛隊長は魔すけを見ないようにしながら部下に指図する。

「オキテを守らなかったお前が悪いんだぞ。生まれ変わったらまた会おう。」

部下たちは魔すけの両腕を抱えて連れて行った。


城内に入ったからと言って安心はできない。

魔物たちの試練はまだまだ続く。

城内のいたるところに魔王の告知が貼ってあり

それを破るとやはりダンジョン送りになるのだ。

”廊下は走らず右側通行”

”朝の体操は全員参加””

”お昼はちゃんと食べよう”

”残業禁止”

”禁酒禁煙”

”魔剤禁止”

”人に迷惑をかけないようにしよう”


魔物の存在意義を揺るがすような告知も含め、なんと99のオキテに縛られている。


3人の魔物たちがトイレでタバコを吸いながらぶつぶつ文句を言い合う。

赤い魔物:「なんで俺たちがこんな健康的な生活をしなければなんねえんだ。」

黒い魔物:「ほんと、人間の僧侶の方が酒は飲めるし女遊びできるし、よっぽど自由だぜ。」

黄色い魔物:「健康になっちまって青かった顔が黄色くなって、人間のガキに”ふXっしー”に間違えられたぞ」

黒い魔物:「俺もすっかり太っちまって、くXもんそっくりになっちまった。」

どたどたっと足音がして風紀委員がトイレの入り口を塞ぐ。

「動くな、おまえら現行犯逮捕だ。」

抵抗むなしく3人の魔物たちは連行されダンジョンへと連れて行かれた。

そこには先に捕まった魔すけが、椅子に座っていた。

「赤魔ツに青魔サに黒魔ティじゃねえか。おまえらも捕まったんか。」

「ああ、トイレでタバコ吸って捕まった。」

「お前ら人間の高校生みたいだなあ。」

「お前も遅刻で捕まってんだから俺たちのこと言えねえべ。」


ファンファーレが鳴り響き、魔王がダンジョンに入ってくる。

「お前ら、規則を破ったそうだな。許さんぞ。」

魔物たちは恐れおののきひれ伏す。

「ひえええ、お許しを。」

魔王は冷酷な表情を浮かべ、舌なめずりをしながら魔物たちを見る。

「大体お前たちは規則をなんだと思ってるんだ。規則を守れないような奴は戦いの最中も勝手なことをする。そんなことをするから我々魔族は勇者に倒されることになるんだ。いいかよく聞け。今から10000年前にかの偉大なる初代の魔王が最初にこの世に現れた時は人間は恐れおののいたものだ。それでだな・・・・・。」

「おいおいはじまっちまったよ。」

魔物たちは魔王に聞こえないように小声で話すが、自分の言葉に酔っている魔王は気づかない。

「やっと3代目の話になったぞ。魔王様って何代目だっけ。」

「確か第69代横綱だったような。」

「白鵬か、あほ。第75代魔王だろ。つうことはあと72人分の話を聞かされるのか。」

「俺しょんべんいきたくなってきた。」

「そんなこといったらまたそこから説教が始まって最初にもどるだろうが。」

「俺、生きて帰れたら魔子ちゃんと結婚するんだ。」

そんな魔物たちの嘆きをよそに、魔王は延々と話し続ける。

「そして第8代の魔王ヨシムーは、その言動から”暴れん坊将軍と呼ばれ・・・・・。ところで暴れん坊将軍といえばサンバなのだが・・・・・。」

話が迷走していく。

この部屋が迷宮(ダンジョン)と呼ばれる理由がそこにあった。

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