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 ここでは、もう1人の主人公(ヒロイン?)のロシエラ視点で話が進みます。





 私の名はロシエラ・シャーウッド・ライブラリー。北のエルフの森出身のハイエルフで、


『研究者』だ。


 名前や種族等、色々と差異は有るが私の研究には一切支障が無いのでここでは無視することにする。


 私は今『魔術』、特に古代魔法の研究を中心に取り組んでいる。

 『古代魔法』は、一般的に使われている脆弱で貧相な属性等の現代魔法に比べ、膨大な魔力を消費するものの、その大半が強大な威力、絶大な効果を発揮する大魔法である。

 ……ゾクゾクするとは思わないか?魅力的だと思わないか?

 古代魔法の研究にならば、エルフの何百何千という寿命も全て使って構わない。そう思わないか?

 ……。

 そうか。

 ……やはり一般人には理解出来ないようだな。

 研究者なんぞ、多かれ少なかれ似たようなものだと思うのだが……

 実験体……もといリョウ曰く、こういった輩をマッドサイエンティスト予備軍と言うらしい。


 そんなに褒められても、実験の手は緩めてやらないがな。



 話を戻そう。


 古代魔法のほとんどは、魔道具や魔石を使えば現在でも実現可能だ。

 構成式がシンプルなのだから、当然と言えば当然なのだが。

 いかんせん効果が派手だ。

 王都での実験は出来て年数回。モノによっては実験不可ときた。

 なんとも腹立たしい!


 なので私は田舎に引き篭り、密かに広大な実験場を確保した。(全環境適応型の野良ダンジョンがある土地を買い占めた)


 そんな充実した日々に嬉しい一報が舞い込んで来た。


 リョウだ。


 被験体の到着。思ったより早かったので、思わず叫んでしまったよ。



「よっしゃーーー!!!」



 何故、こんなにも狂喜乱舞し歓天喜地なのか。


 それは、リョウが【漂流者】だからだ。

 【漂流者】

 異世界からここアトラスに来た迷い人の相称。

 大抵が海を渡ってたどり着くのでその名が付いついる。



 その存在だけでも研究しがいは有りそうだが、私の場合はもっと別に理由がある。


 私の研究題材である魔法、魔術の発展の歴史を紐解くと1つのキーワードが浮かび上がる。

 そう、【漂流者】だ。

 現代魔法が脆弱に退化した要因も、

魔物やドラゴン、精霊以外の魔法が生まれた訳も、

古代魔法が誕生したきっかけも、

全て【漂流者】が関わっているらしいのだ。


 断定でないのは資料が少ない事に加え、考古学が専門外といういかんともしがたい事実。

 今更、考古学を極めるのも時間の無駄なので、このまま魔法の研究に没頭させていただく。



 さて、さて、魔法の発展、進化に貢献して来た【漂流者】。

 人権の関係なども有り、他の研究者はなかなか手を出し難いご様子。


 ならば私が独占させて頂こう。

 丁度良く、アカデミーから出てきたばかりで冒険者資格を持っていない。このまま奴が居る港町で登録し、あわよくば恩を売る。

 そして実験に……



 という事でド田舎港町“ラテラ”に来たのが5年前。

 情報の伝達速度の遅さが幸いし【漂流者】である奴がD級までレベルが上がっており、ギルド資格取得の随行者になった。


 私は魔法使いという事もありE級スタートだったのだが……冒険者という物も奥が深い。

 とりあえず、敵の殲滅と魔石回収をしろと言われたので、範囲魔法で一気に片付けたら……

 素材の回収ができないほど敵を破壊するなとか、環境を破壊し過ぎとか文句を言ってきおった。 まぁ、売却した金は研究費の足しになるし、傷物の魔石は研究に使えない。

 利にかなった注意なので素直に従う事にした。


 それからはお互い利害が一致する限り、ギブアンドテイクで色々情報を交換して来た。



 まぁ、奴は自分が『無能』だと言うことをしきりに嘆いていたが……私の調べた限り、【漂流者】の7割は無能ないしそれに準ずる低能力者。

 そこから何らかの“力”を得、魔法や国の発展に貢献して来たと記録にある。

 従ってリョウが現時点で無能なのも何の問題もない。

 そんな些細な事で実験を中断などするはずがない。いや、してたまるか!

 リョウがいかに長生きであろうと、奴が3回死んでもお釣りが来る程の寿命がこちらにはある。

 絶対にモノにしてみせる。



 そんなこんなでだらだらと、あーでもないこーでもないと実験を繰り返してきたある日、なんと!リョウが魔法を覚えたではないか!


 今まで散々スキルや魔法の知識を詰め込んで何も発展がなかったにもかかわらず。アイテムでサクッと覚えおった……

 これだから漂流者は……研究は辞められんのだ!


 今のところ推測だが漂流者(リョウ)は、私達が当たり前に行っている内側からのインストールより、外部からのインプットの方が相性がいいらしい。


 これは面白い事になるぞ?奴さえ死ななければ古代魔法や竜魔法もインプットが可能かもしれないという事だ。


 さぁ、これから忙しくなるぞ!はっはっは!




 リョウが帰った後、自室の研究資料に埋もれたデスクに座りニヤニヤ不気味な笑みを浮かべながら考察する姿。

 エルフの美しい容姿とのギャップに、なんとも言い難い違和感を感じざるを得ない……


 因みにロシエラの服装は、魔法的に丈夫してある市販の服に短めの白いローブ(前開き)を羽織る……なんともマッドサイエンティストらしいスタイルです。




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