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「生活魔法は他の魔法と違い、レベル(熟練度)というものはない。従って覚えようと思えば全てを直ぐに覚えられる」


「おお~それはありがたい。で、どうやるんだ?」


「焦るな。

 まず、魔法の種類から説明する。火を起こす『点火(ファイア)』、水をためる『貯留(ウォーター)』、服や体の汚れを落とす『清浄(クリーン)』、服や装備を汚れや錆びから守る『保護(コーティング)』……」

「待て待て!そんなにあるのか?種類。しかも、結構多岐に渡っていると思うぞ?」


「うむ、そう感じるかも知れんが一つ一つの規模が小さい。消費魔力はかなり少ないぞ?」


「消費魔力が少ないって言ったって……」

 属性的に言ったら火に水に風やらなんやら……かなり得じゃね?



「最大出力が小さく出来ているからな……

 どんなに頑張って魔力を込めてもムムm……ほれ!」


彼女の指先に蝋燭の炎位の火が出る。


「通常の倍は魔力を込めてみた……が、こんなもんだ。これ以上は無駄だから止めるぞ?」


「あ、ああ……」


 チッ、そうは上手くいかないか~


 でも、やっと……

『魔法だ~~~!!苦節10年!何の力も持たないまま異世界(仮)に来てやっと……やっとだよ……(感激)』

という言葉を飲み込んで……


「……泣く程のことか?」



 いつの間にか涙を流していたらしい。

「……いやいやいや、俺が漂流してから何年待ったと思う?10年だよ?10年!」



「そ、そうか……」




 結構ドン引きしてますな……

 そういやエルフさんでしたね……ロシエラって。

 10年って感覚が一般人の僕とは違うのか……


 まぁ、いいんです。そんなこと。とにかく『魔法』を使えるようになるんです!僕!



「まずは構築式……」


「え?いきなり魔方陣からか?」

 詠唱やら理論やらなんかは?


「だから『まずは』と言ってるだろうが!

 いいか?水や火の基本的属性の魔方陣。これにそのまま魔力を通すと暴発の畏れがある。それに出力や形の制限をかけるのが通常の魔法」


「ふむふむ」


「で、生活魔法はこの制限が極端にかかっている。それがこれだ」



 地面に木の棒で魔方陣を描いてます。

 丸の中に三角。それにルーン文字(多分そんな感じの……)でゴニョゴニョ描いたのが属性魔法(多分火)。

 で、その横に同じく丸に三角で真ん中に点。

 ……これだけ?



「生活魔法に小難しい制限は必要無いからな。その使いたい属性を最小限引き出す。それがこの形」


「あ、あぁ、わかった」


「後はこれに魔力通せば……」



 地面の魔方陣に手を近付けると真ん中に火が点った。



「……いちいち魔方陣を描いてって訳じゃ」「ない」「よな……」


「魔方陣を覚えて頭に思い描く。それを出したいところ……これの場合は指先だな、そこに出るように魔力を通して……」


「おお~ホントだ。火が点いた」


「……(少し火が大きい気がするが……)そんな感じだ。いいか?」


「ああ、OKだ!」


「じゃあ、残りの構築式も教えるぞ?」




 5時間。

 その後片っ端から魔方陣を覚えては実践を繰り返した。消費魔力が少ないとはいえ結構唱えまくったんだけど……全くMPが減った気がしない。


「今日はこれくらいにしておこうか……

 それにしても魔力が豊富だなぁ。やはり【漂流者】だからかのう……うむ、リョウは魔法使い向きなのかもな……」

「今更、魔法使いは無いと思うぞ?」

だったらこんな(10年D級戦士)に苦労してない。


「まあ、その辺の考察もしたい。今日はこれで終わるぞ?」


「ああ」


「後、1つ言っておく」


「ん?」


「昨日……いや、ついさっきまで魔法や魔力を使っていなかった者がいきなり魔方陣に魔力を通す……ましてや魔法を発動させる事は


不可能だ」



「え?」

 そうなの?


「色々原因はあるんだろうが……お主の10年は無駄じゃなかったらしいな」


ニヤリと笑うロシエラ。


「おう、あんがとな。じゃ、ご考察がまとまったら教えてくれ。

 今度はそっちの研究材料の採取でもしながら話そう」


「あぁ、私も少しは体を動かさないといけないからな」


「「じゃ」」



片手を上げながらロシエラの自宅兼研究所を後にする。





~…~…




 ギルド兼酒場(食堂)



「よ!」


「あら、こんな遅くにどうしたの?」



 ん?気が付けば外は夕方か……

「明日からの依頼の確認。終わるんでしょ?メンテナンス」


「さすがにチェックしてるわね~」



 彼女はギルド受付のアイドル、ラファエラちゃん。

 荒くれ供の集まり、冒険者ギルドのオアシス。


 たまに砂漠のラフレシア(ギルドマスター)が居たりするが……今日は居ないらしい。よかった。



「ソロで潜れるの、そこだけだからね~」


「……パーティーを組めばいいって言ってるでしょ?いっつも」


「ギルドとして言ってるんだとしても、ありがとね。でもソロの方がやり易いんだよ」


 ギルドとしては冒険者の生存率を上げる為、パーティーの推奨や適正レベルのダンジョン・依頼なんかを薦めてくる。

 商売としてのギルドは、生存率の高いギルドに冒険者は集まるし、依頼達成率が高い程高評価だからな。

 企業努力って奴だ。



「もう、そんなんじゃないです!リョウさんはギルドでも好印象な数少ないギルド員ですし、本当に人気なんですよ?パーティースカウトで」


「うーん、あんまし実感無いんだよね~

 あ、パーティースカウトの方はパスね。臨時ならいいけど通常パーティーは……」


「置いていかれるって言うんでしょ?大丈夫ですよ~パーティーのランクとその構成員のランクって結構ズレてるの当たり前なんですから」


「いや、俺が許せ無いんだよね、パーティーランクより低い自分が」

 こればっかりは譲れない。学生時代にダラダラしてズルズル就職した経験から地力を付けずに先に進む無謀さが身に染みております。

 おっさんは地道に、そして確実に。

 石橋は叩いて更に誰かが通った後渡る。これが大事。多分。



「はぁ、まあ予想してた返事ですからそれはいいですけど……暁の迷宮での依頼ですよね?」


「ああ、なんか掘り出し物は?」


「これなんかどうですか?」


「ふむふむ……スライムにトードの卵にアロエ草……って美容関係ばっかじゃねぇか」


「仕方ないですよ~それが1番需要があって高くつくんですから~」


「やらないとは言ってない。やるんだけどさ~代わり映えがね……」


「暁の迷宮は階層が少なくて、比較的弱いモンスターが多いダンジョンですからね……あ!これ!」


「ん?」


「最近、最下層で不思議な空間を見たって報告が何件か上がってて、それの調査依頼が出てます。

 どうですか?」


「お!いいねぇ~久々の新部屋発見かな?行く行く。期待して待ってて」

 久々の未知への挑戦。男のロマン。でも、安全マージンはとりたい。故に初心者ダンジョンでの新発見を目指す。

 ヘタレです。



「じゃお願いしますね、ついででいいんで」


「ついでなんかーい」


「ついでです……決して危険は侵さないでくださいよ?」


「あぁもちろん!命あっての物種だ」



 てな訳で“美容”と“ロマン”の依頼を引き受けて、ご飯を食べたら家(常駐宿)に帰ります。




 お読み頂き、ありがとうございます。


 だいたいこれくらいペースで更新予定です。

 が、ネタが尽きたら間が空くこともあります。

 ご了承ください……

 今後とも宜しくお願い致します。


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