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08. 意外と重要な


「アリアナ先輩、お疲れさまでした!」


 外回りを終えて着替えを済ませたわたしは急ぎ足で控室を後にする。

 任務が長引いてしまい、予定した時間よりも押していた。

 シリルくんのベッドが届くまではもう少し時間があるけど、家に一人残して来たシリルくんが心配だ。

 任務中もご飯はちゃんと食べたか、怪我はしていないかなど、思い出してはそわそわしてしまっていた。

 クラムくんの中にいる間にいろいろ勉強したと言っていたから特に問題はないと思うけど、彼はまだ子供なのだ。子供は大人が想像もしないことをしでかす――と前に事務のおばちゃんが言っていたのを思い出す。

 それだけでも十分心配なのに、シリルくんに至っては近所の人に悪魔だとバレて通報される可能性だってある。わたしの心配ゲージはマックスだ。

 廊下で友達と立ち話中のアリアナ先輩を見つけて挨拶すると、わたしが急いでいると気付いた先輩は言い辛そうに「クリスが探していたわ」と教えてくれた。


「クリストファーさんが?」

「ええ。でも急ぎの用じゃなさそうだったから、急いでいるなら伝えておくわよ?」

「ありがとうございます。一度談話室に行ってみて、見つからなかったら帰ろうと思います」


 アリアナ先輩にお礼を言って、談話室へと駆ける。

 居ないことを期待してこっそりドアを開けると、ちょうど同じタイミングで向こう側からドアを引かれてわたしの体が傾いた。


「うわぁっ!」

「カティ!? 驚いた……大丈夫かい?」

「は、はい。ありがとうございます……っ」


 倒れかけたわたしの体を支えてくれたのは目的の人物、クリストファーさんだった。

 お礼を言うために顔を上げると、すごく至近距離に顔があって驚いた。

 急いで離れると、クリストファーさんは苦笑を浮かべて気まずそうにしている。

 ……今のはわたしの態度が拙かった。クリストファーさんはこけないように支えてくれただけなのに、わたしの苦手意識で傷付けるのは間違っている。


「近くてびっくりしてしまって……すみません」

「いや、いいんだ。まぁ、僕も役得だったしね。それより、ちょうどカティを探していたんだよ。今少しいいかな?」

「あ、はい」


 役得? と首を傾げるも返事はなく、話があるという言葉に頷く。

 部屋の中に入り、ソファに向かい合って座る。ふかふかだ。

 隅の暖炉でパチリと薪が爆ぜる音がした。


「仕事は順調かい? 何か分からないことはない?」

「あ、はい。なんとか」

「アリアナくんからも優秀だって聞いているよ。君がエクソシストとして働きだしてもうすぐ一月。そろそろ独り立ちさせようと考えている」

「はぁ」

「そこで、だ。一週間後、実地試験を行いたいと思う」

「実地試験、ですか?」

「ああ。君とアリアナくんの任務に僕も付いて行って、君の実力を判断する。なぁに、普段通りやれば合格出来るさ」


 思ったより重要な話だった。試験があると聞いて肩に力の入ったわたしを安心させるように、クリストファーさんが柔らかく微笑む。


「合格したら翌日からは一人で任務に当たってもらうことになる。何か分からないことがあれば、それまでにアリアナくんに聞いておいたらいいよ。もちろん、僕でもいいけどね」

「ありがとうございます。……そのぅ、もし、落ちた場合は……?」

「そうだね、そのときは僕の下で学んでもらおうかな」

「えっ?」

「みっちり三ヶ月。しっかり教え込んであげるから安心して」


 ばちんっと飛ばしてきたウインクを苦笑で躱す。こういうところが苦手なのだ。

 補習があるのは覚悟してたけど、それはアリアナ先輩だった場合の話。

 相手がクリストファーさんになると聞いて、これは何としても合格しなければと決意を固めた。


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