2/6
風ちゃんと菊ちゃんと僕
隣の団地の風ちゃんには、『菊ちゃん』って言う、僕たちに見えない友達がいる。
「あ、菊ちゃんが、おうちの車に菊の花を飾ってる」
風ちゃんがぽつりと呟いた。
僕は見えなかったけど、ふ~ん、と返事した。
その翌日、風ちゃん家の車は動かなくなった。
「あ、菊ちゃんが、向かいのおじさんの頭の上に菊の花飾りを乗せてる」
風ちゃんがぽつりと呟いた。
僕は見えなかったけど、へえ~、と呟いた。
その翌日、向かいのおじさんは動かなくなった。
「あれ、菊ちゃんの仕業かなあ。
町中が、菊の花だらけだよ。
ほらほら、ここにも、そこにも、あそこにも」
風ちゃんがぽつりと呟いた。
僕は見えなかったけど、そうなんだ~、と呟いた。
その翌日、僕たちの町は。