法の牢獄
悶々と天井を睨み付ける。もう、何時間も寝転がっている。したいことは山ほどあるのに何もできない。
なぜならここは牢屋だから。
パチっと。まばたきした瞬間、牢屋とは異なる場所に移っていた。
まるでゲルニカの世界に飛び込んでしまったかのようなカオスな空間。その中央に、スーツ姿の男が。手には一枚のプラカード。
そこにはこんな文言が。
「法律のない世界、いってみるぅ?」
たかだか人ひとり殺したくらいで、おれの何にも換えがたい人生が数十年も無駄になるなんて間違ってる。
と、いうか法律なんてものさえなければ、俺が牢屋に入れられることもないじゃないか。
「どうする?」
スーツ姿の男の声は妙に甲高く、黒板を引っ掻くような声。
「よーし、連れてってくれ。ホウリツなんてない世界へさ」
パチッと。まばたきした瞬間、牢屋に戻ってきた。
コツコツと偉そうな靴音をたて、刑務官がやってきた。手には鍵束。
「出ろ。お前をここに入れとく理由がなくなった」
なんてこった。夢じゃないのか。
俺は意気揚々と牢屋を出た。
法律がない世界。まさに俺のための世界。好き放題やってやるぞ!!
こつん。
こめかみに冷たく、固いものが押し当てられる。
「私はな」
刑務官がにんまりと笑う。黒光りするソレが、カチリと音をたてる。
「お前みたいなくずを生かしておく理由なんてないと、前々から思っていたんだよ」
赤い飛沫が飛び散る。
刑務官は高らかに笑った。
「クズども!覚悟しろよ!もうお前たちを守る、法の牢獄なんてないんだからな!!」




