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騒がしい隣人
ドン!ドン!ドン!
またか。こういう騒音を気にしたくないがためにわざわざ角部屋に住んでいるのに、ここ最近、毎日のようにこの音に耐えなくてはならない。
ドンッ!
もう我慢ならない。部屋を出る。ふと、気づく。騒音がするのはどっちからだ。考える。
そうだ。隣接する部屋の方からじゃない。反対だ。つまり、そこには部屋なんてない。
アパートの壁をみる。かすかな期待。近所のワルガキが、壁にボールでも当ててるんじゃないか。しかし、誰もいない。
最悪だ。よくもこんな部屋をあてがってくれたな。
アパート脇にある大家の自宅に向かい、チャイムを連打する。
ぱっと灯りがつく。起きてきたらしい。ドアが開く。寝巻き姿の大家が怪訝そうな顔を覗かせる。
深夜のチャイム音。出てみたはいいが、そこには誰もいなかった。イタズラか。ドアを閉める。監視カメラでも付けるべきかな。
ドン!ドン!ドン!
ドアを乱暴に叩く音。まるで閉め出されたことを非難するような響き。かすかな不安。大家はそっとドアを開けた。
やはりそこには誰もいなかった。