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願わくば、霧よ  作者: 晴間雨一
三章『広がる青』
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039 泥沼の火炎

 ゴミ捨て場さながらに散らかり、汚臭さえする路地裏を全速力で駆け走る人間の姿がふたつ。

 片割れの人物は、槍を片手に握った長身の男。得物を手にしての移動は慣れているらしく、その身のこなしは風のように軽い。捨てられっぱなしのゴミや家具が転がり、雑然としている道を男はひょいひょいと軽々すり抜けていく。


 もうひとつは魔法使い然とした出で立ちの少女。随分とつば広の帽子を片手で押さえ、もう片手で握りしめた杖で必死に足下のゴミをかき分け、長身の男に追いすがっている。


「こ、こっちで合ってんのぉ~!?」 リュックを揺らせながらに女が言う。

「合ってる!」


 答える男の声は自信に満ちあふれている。自分の走る先に求めるものがあると、そう確信している声だ。


「根拠は何なのよっ!」

「勘に決まってんだろ!」


 二人が追い、探しているのは白い小型犬だった。悪趣味な飼い主が装着をさせた黄金のティアラが目印であり、それは犬自身が泥や雨水で薄汚れているのにも関わらず、頭部をかざるアクセサリーはまばゆい輝きを放っていたのを、長身の男――コルネリウス・ヴィッケバインは直前に遭遇をした時、しっかりと目に焼き付けていた。


「あ! コールくん、前! 前前前前っ!」


 魔法使いの少女、ビヨン・オルトーが慌て顔で指さした先には小汚い塊が転がっていた。塊はその場でぐるぐると回り、大きく「ワンッ!」と吠えた。


「よっしゃあっ、でかした! あの埃の塊が例のワンコロだな!」


 と、二人の背後から悲痛な叫びが聞こえた。それは二度、三度と続き、「死んじまう」や「くそったれが」「ふざけんじゃねえ」と、恨み辛みのこもった言葉だ。

 そして単音だけの……だからこそ、その苦痛のほどが想像出来てしまうような、身の毛のよだつ叫びが耳を打ち、自分たちの背後の道で何が起こっているのか、その事情を知っているコルネリウスらは、仲間であるユリウス・フォンクラッドの戦闘を脳裏で想像した。


「ユリウスのやつ、相当張り切ってんな! ああ、俺も加わりてえ」

「ね、ねえ、やりすぎってことはないの? 過剰防衛とかさ、あるじゃん」

「そんなのあんの? 物知りだな、ビヨン」

「だからあ……殺すとかはまずいんだってば!」

「ああ~、はいはいはい。ワルモンならどうしたって構わないだろ」


 どうしてこう、やかましくなったかな? お袋みたいだぜ。げんなりとしたコルネリウスは面倒そうに相づちを打ち、視線の先に居る、頭部をティアラを飾った小型犬へとゆっくりと歩み寄る。


 路地の奥、建物の隅に追いつめられた犬は気の毒なぐらいにブルブルと震えていた。今すぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいなのだろうが、逃げ道を塞ぐのは隙をわずかも見せない人間の戦士である。

 両手を広げ、腰を落とし、強い集中力をもって獲物を見据える今のコルネリウスは、相手が何者であろうと決して脇を通過させることはない。


「慎重にね、慎重に」 やや離れて立つビヨンが心配げな口振りで言う。

「怖がらせちゃダメだよ。目も合わせないで。あと大声も、それとね……」

「だああ! 分かってるって! ビビらせなきゃいいんだろ?」


 もう遅いっての、とコルネリウス。小型犬は精一杯の抵抗として、きゃんきゃんと甲高く鳴いていた。


「どうどうどう。落ち着けよ、ええと……リンダだっけ?」

「その子はアリスちゃんだよ」

「ご丁寧にどうも」


 一歩、また一歩とコルネリウスがゆっくりと、慎重に足を運ぶ。絶え間なく振動を続ける犬へと革グローブをはめた男の手が伸び、そして――。




 すたり、と。


 前触れもなく、コルネリウスらと犬を囲むようにして四人の人間が現れた。頭上からぱらぱらとゴミが落ちる。彼らはどうやら周囲の家屋の屋根より降り立ったらしい。


 コルネリウスは目を細めて相手を観察した。

 それぞれが真っ白い仮面を被っていて、衣装は揃いの黒コート。挨拶の言葉は無く、だからというわけではないが、どうにも友好的な連中ではなさそうに思えた。

 ユリウスが相手どっていた連中の仲間か? いぶかしみ、槍を握る手に力を込めると、まるで応えるように白仮面たちが腰に下げた鞘より短剣を抜いた。


 刃渡りは大きく、とげとげしいデザインは致命傷というよりも傷を与える目的に見える。となれば、あれらの短剣には毒が塗布されていると見るのが正しいだろう。


「ちょっと……誰なの、この人たち」

「俺が知るかよ、まともじゃなさそうなのは確かだけどな」


 数は四。屋根の上に控えが居る可能性がある。注意を怠らないように意識を研ぐ。


「ビヨン、お前は後ろな。相棒が言ったとおり、援護してくれ」

「ほんとにやるの? ……了解。前は頼んだからね」


 コルネリウスが利き手である右の手で槍をくるくると回し、もてあそぶ。戦いの前などで高揚している時の彼のクセだった。


 警戒をしているのか、油断をしているのか。数の利があるにも関わらず、四人の白仮面は襲ってはこない。

 犬の様子をちらりとうかがう。相変わらず震えたままでいて身動きひとつしない。この期に及んで慌てふためくことに意味がないのを犬なりに分かっているのか、鳴き声もあげなかった。


「テメエらも犬狙いか?」


 無言。


「わりいがこっちも仕事でな、譲れねえんだわ。というかそっちは冒険者なのか? それとも冒険者くずれの犯罪者?」


 無言。


「コールくん……」

「ちっ、愛想悪いのもいい加減にしろっつの。まともなヤツを倒すわけにゃいかねえからこっちからは手を出せな……」


 と、民家の屋根より五人目の白仮面が飛び降りた。その人物はティアラを飾る犬に近づくや否やに手を伸ばし、首根っこをつかみ、抱き寄せた。

 コルネリウスらを囲む仮面の集団が動いたのも同時だった。犬を確保することが、前もって決めていた行動開始のサインだったのだろう。


 連中の足取りは素人のものではない。かかとからつま先へと足裏を動かし、つま先で大地を蹴りだし、一気に相手へと距離を詰める。消音を意識した足の運びだ。

 コルネリウスやユリウスのような戦士は、彼らのような足の運びをしない。こういった技術を用いるのは後ろ暗い仕事をする暗殺者か、忍のような連中だと、かつてコルネリウスは師フレデリックより聞いていた。


 四つの刃が高速で迫る。軌道の先に立つは長身の男、戦士コルネリウス。


 ビヨンの唇が魔法の詠唱を紡がんと、うっすらと開いた。

 その一方で、四人に命を狙われたコルネリウスは槍を持つ右腕をぐいと引いた。続けて左足を前へと大きく踏みだし、あろうことか己の槍を投げ放った。それも最大、最速のモーションで。


「っ!? 何を!?」


 白仮面のひとりが驚きを思わず口にする。

 それもそうだろう。脅威が迫らんとする今まさにこの瞬間に、自身の身を助ける武器を手放す人間がいるだろうか?

 迎撃をする為に振るうかと思われた鉄槍は包囲の網を一直線に抜け、その先の――小型犬を抱き抱えた男の横腹に豪快に突き刺さった。


 鉄の穂先が肉体に触れ、沈むと同時に男の身体を浮かし、真横の民家の壁へと叩きつける。

 鋭い武器は肉を深々と抉っていて、目を見開き、口から血を流す男はどうしようもなく死に瀕している。激しい痙攣を起こすその命は、どうやらもう助かりそうにはなかった。


「コールくん! ちょっと、やばい、って!」

「分かってる!」


 コルネリウスの肉体を切り裂こうと短剣が素早く振るわれる。幾重にも重なる銀色の刃の筋をコルネリウスは身体を引き、身を屈め、時には跳躍をし、超人的な反応で避けていく。


「へっ、甘いな……っておい! シャツが裂けてんじゃ、ね、え、か!」


 身を屈めたコルネリウスが起き上がりざまに相手の顔面を目掛けて拳を一発。腰の入った殴打にたじろぐ相手の胸ぐらを掴むとその足を払い、バランスを崩した相手を背負い投げの要領で地面へと叩きつけた。

 190センチはあろう恵体から繰り出される投げの威力は重く、仰向けに倒れ伏した仮面の人間は負ったダメージから、起き上がりまでに若干の隙が生まれた。


「ビヨンッ!」

「はいはい! ――紫電の光矢、青の閃きよ、(はし)れ! 《シャックルボルト》!」


 木製の杖の先から紫電の波が迸る。倒れた相手の頭部を狙ったその一撃はこめかみに当たり、相手の身体が大きく跳ね、耳の辺りよりわずかに黒煙がくすぶった。


「ああもう、うざってえ! テメエら、くそ、おい、素手できやがれ!」


 刃の波に対し、徒手空拳で挑むコルネリウスが不平を叫ぶ。壁に突き立った自身の槍に忌々しげに視線をやるが、投げ放ったのは他ならぬ自分である。

 目標を奪われるのを阻止するためとはいえ、やはり悪手だったのではないかと今更に後悔をした。


「…………」 仮面の人間らは何も語らず、黙したままに刃を振るう。

「自分で投げたんでしょ! ああ、もう、こっちには来ないで!」


 三人の暗殺者の振るう短剣を避ける中、隙を見つけたコルネリウスが猛烈な勢いをもって相手の腕を掴み、引き寄せ、そのまま羽交い締めを決めた。襲い来る刃に対する肉壁と変えたのだ。


「どうだ、仲間を切れるか!? って、おいおいおいおい、まじかよ、ウソだろ!?」


 しかし相手は気にも留めず、仲間の身体に容赦のない斬撃を加えた。すると傷口に血が滲み、グズグズといった泡立つ音がわずかに聞こえ、続けて絶叫が耳をつんざく。


「……やっぱり毒かよ! にしたってえぐいな、おい。嫌だな」

「それ! 絶っっっっ対に喰らわないでよ! うち、回復はからっきしなんだから!」

「おう! 槍がねえならねえでどうにかするって。武器、武器……」


 再び槍へと目線をやる。死体に突き刺さったままの愛用の得物は遠く、三人の暗殺者を相手取りながらに回収は至難だ。

 

 ならば!

 

 コルネリウスが横っ飛びに跳び、打ち捨てられたガラクタの山に飛び込む。


 暗殺者はとち狂ったような行動をする長身の男から視線を外し、魔法の詠唱を続ける魔法使いへと注意を向けた。

 いわゆる『壁』となり、こちらの妨害をする戦士が居ないのならば、一般に鈍重とされる魔法使いを殺すのは容易いことだ。暗殺者のような素早さを至上とする人間にとっては尚更に。

 手早く葬ろう。ビヨンへ向けて暗殺者のひとりが一歩を踏み出し、首を裂くか、薄い胸を突き刺すか。殺しの手順を脳裏にいくつか描いた途端、重々しい衝撃が暗殺者の背中を襲い、その意識を白熱させた。


「おい、まだ終わってねえ内によそ見をするんじゃねえよ」


 廃棄品の山から鉄パイプが突き出ていた。その先端は暗殺者のひとりの背中を正確に突いており、もし、それが槍であったならば心臓をつぶしていただろう一撃。


 コルネリウスは鉄パイプを手に握っていた。戦闘へ戻ると同時、背中にダメージを負った相手の側頭部をめがけ、即席の得物を思い切りに振るう。


「っが! お……っ……」


 遠心力を乗せた横振りの一撃は暗殺者のこめかみに吸い込まれるように当たり、その衝撃は脳を揺らし、卒倒させるに十分なものだった。

 会心の手応えだ。コルネリウスが鉄パイプをくるくると回し、調子の良さそうな笑みを口元に浮かべる。


 残るは二人。

 戦いの最中の一瞬の間。

 同数の戦いになり、白仮面が互いの顔を見合わせた。





 長身の男を放っておけば、その俊敏さと攻撃力につぶされる。初手でこの男に傷を付けられないのは失敗だったと忌々しく思うが、正直、ヤツの反応速度と回避技術には暗殺者の彼らも舌を巻いた。


 ならば魔法使いの女か。

 魔法の使い手は危険だ。それぞれがどういった魔法を得意とし、どれだけの早さで魔法を繰り出すか。それは実際に相対するか、前情報を仕入れるかをしなければ分からないのだ。

 

 魔法の一撃は致命的なものである場合が多い。であるならば、悠長に魔法を引き出し、様子を探っている余裕は無いだろう。

 

 やはり狙うのは魔法使いだ。二人の白仮面はアイコンタクトを交わすと大きく一歩を踏み出し、重心を乗せた最速のステップをもってビヨンとの距離を詰めた。


 コルネリウスは即座に反応をし、彼らに追いすがった。が、本腰を入れた白仮面の身のこなしはコルネリウスを上回った。先の二人は不意を突かれたが故に倒れたが、まともにやりあえば素早さはこちらに分があるという自信が暗殺者らの心にはあった。


 と、またも状況が一変する。


「――よし、やっちまえ!」


 まさに今背後から襲いかからんとしていたコルネリウスが疾走を止め、後方へと跳躍して距離を取ったのだ。


 白仮面らが不審に思うのも無理はなかった。が、あの男が何をするか分からないのは初手の槍の投擲(とうてき)で既に知れている。

 ああいう奇怪な手合いとまともに組みあうのは不毛だ。魔法使いを害した後にゆっくり料理をしようと、そう舌なめずりをした時だった。


「……腐海の呻き、墓地の奏音、招き手は地中にて命を羨む」


 つば広の帽子を目深にかぶり、先端が渦を巻く木製の杖を両手で握りしめた少女が早口で言葉を結ぶ。


 暗殺者らの足下が不意にゆがんだ。

 一歩が重く、二歩は沈み、三歩がたわんだ地面に埋まる。


「馬鹿な……! 石畳が何故!?」


 街のど真ん中だというのに、暗殺者の足下には沼が出現をしていた。

 それは底なしの沼。暗くよどんだ色をしており、本来あるべき灰色の街路は飲み込まれ、沈み、姿を消している。


「――《呻きの鳴動》! さらにっ!」


 即席の沼を生み出すビヨンの魔法は二人の足を確かに絡め取っていた。動けん、と危機感を滲ませた苦悶の声を聞くが、ビヨンは聞き入れず、詠唱をさらに重ねる。


「呼ぶは炎槌! 声を焼き、木々を導く赤光(せきこう)の熱よ! 《炎蛇招来》!」


 沼地に足を縛られ、懸命にもがく二人の人間の腰に炎の筋が浮き上がった。それはちろちろと揺れ、次第に厚みを増し、まさか、と二人が驚きを浮かべた次の瞬間に火勢を大いに強め、彼らの上半身を瞬く間に炎が覆い尽くした。


「う、ごおおおあああっぁああ!?」


 黒コートが炎上する。仮面に覆われていない肌を炎の波が舐め、空気を求めて仮面を取り去ると、その下の顔を間髪おかずに炎が覆った。

 二人の暗殺者に救いはない。重々しい沼に行動を阻害され、炎の苦しみにもだえる彼らの様相は燃え尽きる運命にあるロウソクを連想させた。


 耳をつんざく絶叫は大きかったが、時の経過と共に段々と細く、小さくなり、やがて何も聞こえなくなった。


 ビヨンが杖の底で足下の地面をカツ、カツ、と二度叩く。すると泥沼が途端に波打ち、泡を吹き、火柱と化した二人の人間を飲み込んでいく。

 まるで地面が人を捕食するようでいて、正視に耐え難いと感じたコルネリウスは目を背け、もはや用無しとなった鉄パイプを路上に放り捨てた。


 脅威と感じた敵は今や誰ひとりとして立ってはいない。戦闘は終わった。


「ふうっ……はあ、緊張したあ」


 顔を上向け、一仕事を終えて良い笑顔を浮かべるビヨンへ向け、コルネリウスが「なあ、おい」と声を掛けた。


「お前……さっき過剰防衛が何とかって言ってたの覚えてるか?」

「覚えてるけど?」


 きょとんとした顏だ。何か悪いことした? という瞳の色。


「今のはどう考えてもやりすぎだと思うんだが、どうだ」

「やりすぎってなにが? ああ! 死体がないなら大丈夫だよ。多分」

「いや、その、なんつうかだな……つまり、楽に殺してやれよ! お前のは残虐きわまりないって。マジにさ」

「うーん……確かにキツい攻撃だったかな。でも、あれが絶対確実でしょ? 足を封じて炎で焼けば大概死ぬよ」


 やはりあの女――イルミナ・クラドリンの魔法とその教えは非道極まりものだったのではないかと、コルネリウスは背筋が冷える思いだった。

 彼が思い描く魔法はもっと爽快なものだというイメージがあったが、実際にビヨンが扱う魔法は残虐な手法が多いのだ。組み合わせ次第で無数の攻撃の手が生まれるのは魔法の確かなメリットだが、どうにも正視に耐えがたい場合も多々ある。


「まあ心配しないでよ、色々大丈夫だってば。殺人だって、証拠は全部土の中なんだから。うふ。ほら、残ってる死体もぱっぱと沼に放り込んでよ。最後は適当に土盛って隠すから」

「……なんだかんだで一番えぐいのはお前だな。おっかねえよ、本当」


 槍を引き抜き、相変わらずグモグモと揺れている泥沼へと死体を放り投げながら、コルネリウスはビヨンに聞こえないよう、深くため息を吐いた。


………………

…………

……


 犬が居ない。

 

 しまったと思い、焦りを背筋に張り付けながら辺りを見回したが小型犬の姿は影も形も無かった。

 薄汚れた毛玉も、悪趣味な金色のティアラも見あたらない。やばい、と思い、言葉を口に出したのはビヨンだった。


「夢中になりすぎたかも」

「かも、じゃなくて実際そうだったろ。……やばいぞ、ユリウスをキレさせるのは絶対に避けたい」


 おだやかな微笑みを張りつけたままに机をぶっ叩くユリウス・フォンクラッドの姿が脳裏に浮かぶ。旅の最中に一度見ることがあったが、あれこそはまさしく、普段怒らない人間が激情に駆られた時ほど恐ろしいものはないという代表例だろう。


「特に今は生活費がかかってるしね……って、コールくんがお金を使い込んだからでしょ!? 責任もって探してきなさいよ!」

「はあ!? なら、魔法で手助けしてくれ。生き物を探すとかそういうのあんだろ?」

「あったらとっくに使ってるよ! ご自慢の勘でどうにかしてよね」

「やい、ビヨン。ヒステリックはモテねえから直した方がいいぜ」

「……コールくんは命が惜しくないと見える」


 互いに言い合うコルネリウスとビヨンのもとへ、犬を取り逃がしたことを露とも知らないユリウスが一歩、また一歩と迫っていた――。


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