表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女、迷宮の主的な。  作者: ぺんぎん村長
セーラー神、やつはこう言った。ファンタジスタをご所望かい?的な。
4/16

セーラー神、猫を脱いで寝るだけ的な。

ご都合主義、なるべくなくしたいですね。

セーラー神。詳しく言えば、パチモン系猫かぶり風ボクっ子なんちゃってセーラー神。そう、やつである。何故、話題に挙げたか。ファンタジー異世界を恐怖のズンドコに叩きつけた一因だからだ。もう一曲、否、もう逸曲選ぶんだ。ファンタジー異世界がズンドコされる。フルコンボ、もとい、フルボッコだ。こんな神がいていいのか、と文句も言いたくなるだろう。


だが残念なことに、セーラー神。ファンタジー異世界では意外にも、大事なポジションにいる。教会の聖女や、神の代弁者が全力でヨイショするようなポジションに。つまりは、だ。



<<ボクのんんっ……………私の聖女、私の可愛い聖女。聞こえていますか?>>


「はい、お呼びですか、我らの女神。」


<<私の可愛い聖女。貴女の瞳には、今の世界はどう映っていますか?>>


「今の世界、ですか。そうですね、日々命のやり取りがあるとはいえ、概ね平和と言えるのではないでしょうか。」


<<そうですか。私の可愛い聖女、私は貴女に、いえ、日々の平和を過ごす全てのものに悪い知らせを齎してしまうのですね。>>


「………それは、どのような?」


<<私の可愛い聖女。この知らせを、早急に広めてください。世界各地で、数多の迷宮が産声をあげました。同時期に、魔王達が活発になり、人々の中から上位種が現れるようになりました。原因は何処かで行われた、勇者召喚の儀式。世界は勇者を受け入れたことで、新たな強さを学んでしまったのです。>>


「………………なんて、こと……を。」


<<私の可愛い聖女。この知らせを世界に、勇者の保護を、脅威の調査と対処を。>>


「お任せください、我らの女神。今から動きます。」


<<頼みましたよ。>>



おわかりだろうか。神託の女神なんてものをやっているのだ。なんというやらせ、信仰を受けていて、なおこの仕打ち。慈悲がないぞ、デモだ。抗議運動だ。


「ふぅ、これで良し。あーぁ、もうちょっと聖女ちゃんとお話したかったなぁ。はぁ、それもこれも、間抜けな勇者が召喚なんかに引っかかるのが悪い。」


セーラー神は勇者に因縁でもあるのだろうか。やけに勇者を貶している、事あるごとに貶している。直視できないくらいに顔を顰めているほどだ、相当嫌いなんだろう。


「そもそも、なにさ、あの顔。自分が勇者ってだけで主人公ぶってさ、ボクの主人公は主ちゃん一択なんだよっ。気持ち悪い含み笑いでこっち見んなっての。ニコポのつもりか、殺すぞ猿が。神なめてんじゃねーよっ!なめていいのは、主ちゃんと聖女ちゃんだけだっての!……あぁぁぁっ!!呪っちゃおうかな!!呪っちゃおうかなぁあ!!」


訂正しておこう、嫌悪なんてものではなかった。どうやらセーラー神の琴線にテレフォンパンチを放ったらしい、どうやったらこうなるのだ。勇者よ、勇気と無謀を間違えるな。セーラー神と勇者では、核弾頭と市販のロリポップキャンディー位の差があるぞ。


「あー、くそ。気分悪い、これも勇者のせいだ。勇者だから主人公とか、ねーよ。選ばれしものとか、頭の中身はお花畑かっての、選んでねーよ。罠にかかった猿をおだてただけだろうが。ハーレムとか狙ってんじゃねーよ、下半身が本体とか引くわ。ご都合主義のテンプレがしたいんだったら、他に行け。ここには売ってねーよ、清めの塩でも食らってろ。」


主人公、ハーレムパーティ、ご都合主義、テンプレ。これらは、メタ発言の一部である。そんな説明こそがメタ発言になるのだろうか。否、ならない。そもそも、メタ発言とは読者の視点と作品の視点でやり取りされるものだ。言い換えると、世界の外側の視点と世界の内側の視点。セーラー神は勿論、外側の視点だ。つまり、神の視点と神の視点でのやり取りなのだからメタ発言ではないのだ。セーラー神も作品の内側ではないか、と言う人もいるだろう。だが、その発言こそがメタ発言になってしまうのだ。言語とは難しい。人が扱いきれない道具なだけはある。


「あぁぁぁ、どうしよ。聖女ちゃんはパシリに使っちゃったしな、主ちゃんに慰めてもらおう。しょうがないよね。うん、しょうがないよ。これも勇者が悪い。」

























「で、私の所まで来た、と。」


「うん。」


ここは、小鳥が増築している迷宮の最奥。机と椅子、九十九しかない簡素な場所だった。以前と比べると部屋全体が明るくなっており、ツインベッドが部屋隅に設置してある。それ位しか違いがないが。


「なんだろうな、こう、親近感というか、親しみやすくなっているな。」


「そりゃ、オフの時だってあるさ。ボクは真面目ちゃんじゃないからね。」


「そうか、それと神さまの裏話なんて聞いていいものなのか?」


「転移者と転生者は、多かれ少なかれ裏話を知ってるから大丈夫。」


「そう。」


沈黙。会話が途切れてしまった、いや、自然と静かになったが正しい。小鳥がベッドに横たわっていて、セーラー神に腕枕をしていたからか、どちらも寝入ってしまったのだ。何故そのような状態になったのか、ぜひ問いたい。暫くの間、静寂が続く。



<<……勇者。他にも人間の上位種、英雄でしょうか。それに魔王も動く。主はLvは最低ですが、ステータスはまあまあ高いですから運が悪くなければ大成するでしょう。称号やスキルは恵まれていますが、それだけ。未だ主は、弱い。ご都合主義が働いていたら、無双することが出来たのでしょう。しかし、そんなものを求めていてはただの人形と同じ。無意味で無価値な何かに成り果ててしまう。それはだめです。ですから、頑張りましょうね、主コトリ。>>



九十九が、そんな小さな決意と激励をしてから、更に時間が過ぎていき。少女、小鳥。起床せず。


<<……………。>>


寝る子は良く育つという。これは、身長が伸びる方向に対して、重力が垂直方向にかかっているからであり、伸びる力に対して縮む力が作用していないからだろう。何故そのような話をするのか。意味がない、と言えば意味はない。探偵アニメで例えるならば、開始20分で日常、事件、解決、独白のサイクルを終えてしまったようなものだ。つまり、これ以上の進展がないようなものなのだ。全てのキャストがただ寝るだけシーンを視聴者が望んでいるだろうか、望まれていても最終回のエンディング後のエピローグ部分位だろう。特に、戦争物であれば映えるだろう。勝利し、平和を迎えたのか。敗北し、死後の世界にいるのか。そのような想像を掻き立てる名シーンになったことだろう。だが、それは今ではない。そもそも彼女は、水城小鳥は、まだ始まってすらいないのだから。ゲームのプレイヤーに立候補しておいて、これ3人用なんだ。お前の席ないから。と御曹司とガキ大将に言われたくはない。彼女は爆睡王ではないのだ、いや爆睡王の個性は秀逸過ぎて代役がいないだけだが。



彼女は、小鳥は主人公というわけではない。自分の人生は自分が主人公だ、なんて綺麗ごとを言ってほしいわけでもない。主人公、物語の主役、世界の中心。そんな重すぎる役が彼女に勤まるのか、否、勤まらない。探せばどこかに主人公はいるのだろう。市井の民かもしれない、貴族の子女かもしれない、王族かもしれない、もしかしたら人ですらないのかもしれない。ただわかっていることは、水城小鳥は、主人公ではない、ということだ。では、彼女は何なのか、と問われれば水城小鳥だ、と答えるだろう。答えになっていないと捉えるか、これ以外に答えにならないと捉えるかは、各々で判断してほしい。さて、ここでは、水城小鳥は水城小鳥である。が答えになる。では、散々否定し続けた主人公とは何者、いや何物なのだろうか。物語の主役、世界の中心。そんな、回答。はたしてそれは人に勤まるのか、本当の意味での勇者や英雄といった、人類の埒外に生きている連中を"主人公"と呼んでいる位なのだ。ただの人には、ただの不変なだけの人には無理だろう。だから、彼女は、水城小鳥は主人公ではないのだ。その資格すら持っていない、いや持っていたら驚きだが。さて、ここまで言えば大体気がつくことだろう。



つまり、水城小鳥にはご都合主義が働いていないのだ。



主人公であれば、何かとお世話になるご都合主義。ピンチになれば新たな力に目覚める、仲間の助けが入る、ふらつけばイベントに遭遇する、逆境に立たされる、意味不明な何かで何故か好意を寄せられる。他にもあるのだが、小鳥には関係ない。運よく関わることがあったとしても、ご都合主義は働かないのだ。良い結果になるとは限らない、前向きに検討させていただきます。というやつだ。ご都合主義さん、お休みなさい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ