少女、怪盗男の娘を捕まえる。いや相性が悪いっす。的な。
怪盗紳士は3回くらい捕まっているそうです。
ファンタジー異世界と聞いて、どんな世界を想像するか。絶対とは言わないが大体は中世ヨーロッパの世界観を含んだものを想像するだろうか、事実この世界もそういった欧州文明を土台にして発展している。いつからその様なイメージを持ったのかはわからない、恐らくではあるが文明開化あたりからが始まりなのではなかろうか。これは日本文化、いや日本から見てのことだろうし、逆に海外から見れば日本の武士道とか、そんなものに不思議と目が向いてしまうのだ。つまり、日本人からすると無意識に、西洋文化に目が行きがちになっているとも言えなくはない。中華やエジプト、ヒンドゥーなどは西洋文化に先を越された形になっているらしく、印象は薄いものになってしまった。時は流れて現代、娯楽文化が発展している中でゲームのジャンルで人気を博したものがそこそこ出るようになった。やはりと言うべきか、またかと言うべきか。竜を退治する勇者と言った中世ヨーロッパの世界観が強く印象に残っていく。それだけではないし、三国志やアラジンなどなど、印象に残るのだが何故か、ファンタジーといえば中世ヨーロッパと答えてしまう。陰陽師でも道や功夫、チャンドラマハールとかファンキーミイラ、あまり出てこない印象がある。やはり魔法がリスペクトされすぎたのか。
話は変わるが、そんな中世ヨーロッパの異世界ファンタジー。場所はアザンの街、歓楽街。中里司は拠点を探していたのだが、二度見をしてしまい、さらに目をこすって三度見して無視できなった建物の前で途方に暮れていた。
<<さあさあ皆さん、お立ち寄り。商人泣かせの一店舗、揃えて見せましょ新商品。必要なものは何ですか?ようこそ、コンビニエンスストアへ!!>>
「うわ、ファンタジーの夢を叩き壊された気分っすよ、コンビニって、えぇ……。」
コンビニエンスストア。現代では割とありふれている子商店、チェーン店といったもので、ある程度の都会では見つからない方が不思議と言えるほどに溢れている建物だ。また、あまり知らなかったりすることではあるが、いやそもそも考えようとも思わなかったりするが、引きこもり否、立てこもりにはパラダイスである。腕を後ろに回されてしまうが、外に出なくても生活サイクルが完結してしまえるのだ。コンビニが外にあるという現実は無視したものとする。
「……行くっすか、ご同輩だったりすれば話くらいは聞いてくれそうっす。」
チリリン。聞こえのいい小さなベルの音色が、開けられたドアに合わせて鳴り響く。コンビニの中は、まさしくコンビニと言える雑多な雰囲気がしていて、しかし木造建築から落ち着いた雰囲気も窺える。旧校舎の廃れた図書室といった感じだ。
「Oh, Well,well. Is Nice to meet you, the customer?」
「えっ、あ、初めましてっす、店員さん。」
そこには少女がいた、普通のとか可愛いというよりは美人と言える容姿をしている、背中まで流した黒髪はヘアアイロンをあてたのか毛先が縦巻きになっており、左耳に髪をかける仕草が妙に似合っている。会計台の奥で安楽椅子に座って寝ていたのか、小さく口を開いてあくびをしているのを手で隠している。そんな仕草ですら、彼女らしいとどこか頭の隅で考えてしまう。何よりも目を引くのは、全身真っ白のセーラー服であり袖口やスカートの裏生地にレースをあしらっている。異世界にセーラー服がないとは言えないが、コンビニエンスストアに続きセーラー服ときて英語で話しかけてきたのだ。
「……えっと、異世界から来た人っすよね?」
「面白いことを聞くな、異世界に来てから、あなたは異世界人ですか。なんて尋ねるのか。まあ、その通りだと答えよう、怪盗男の娘、中里司?」
「……………。」
司は黙ってしまう。それはそうだろう、初対面の相手にいきなり怪盗であることと、名前を当てられたのだ。言葉を失ってもおかしくはない。
「おや、どうした。自分の名前と職業を当てられたくらいで黙っていては、まだまだだぞ?」
「……誰っすか?」
「ふむ?かの怪盗であれば名探偵ですらやりきった実力で調べて見せるんだが、成りたてには厳しかったかな?」
「まあ、そうっすね。足りないものは沢山あるっすよ。」
「卑下することはないだろう、そうだな、ここは伝記からホームズのアナグラム。または遅かりし名探偵とでも言っておくか。」
「つまり、自分で調べろってことっすね。」
「いやいや、そんな事は言わないさ。怪盗には探偵を用意するものだろう?それとも、私は銭形警部だって言うべきかな?」
彼女は何が楽しいのか、ニヤニヤとした顔でこちらを見ており、左腕で頬杖を突いて優雅に安楽椅子を揺らしていた。
「…あれっすか、鑑定でも使ってるっすか?」
「残念ながら、そんなものはないよ。強いて言うならば、"私は、君のことを君以上に知っている。"」
"不気味。"言刃に表すならばそう答える。司は初見で、彼女が人でありながら人ではない何かだと、頭の片隅で警鐘を鳴らしていた。いやおかしい。警鐘を鳴らすのはわかる、知られたくない事を知っていると言われれば、それは誰だって一瞬であろうとも警戒してしまうものだ。だが不気味とはなんだ。不気味、なんて読書感想文みたいな薄っぺらな紙に書かれて終わるだけの刃無しだろう。何もおかしな所はないはずだ。待て、と言いたい。何故そんな感想になった、おかしな所が無いなんておかしい。そんな事は考えないはずだ。原因があるとすれば――――
「ん?どうした、生まれたての小鹿のように足を震わせて。"まるで、自分の頭の中に別の誰かの考えが入り込んだような顔をしているぞ?"」
なるほど、彼女の仕業か、何故か納得してしまう自分がいた。だから、司は気を失った。
「……やりすぎたか?言葉を使って考えている限り、私の間合いなのだが。…ふむ、相手は選ぶべきだな。あちら側の人間だからといって、全員が全員何でも出来てしまう主人公だ、なんて勘違いしているわけではない、と。まあいい。ことり、は、てごま、を、てにいれた、ぞ!!っと。丁度、人の手が欲しかったからな。ダンジョンだからといって魔物はアルバイトしないし。」
怪盗は活動する前に捕まった。いや、相手が悪すぎた。何と言ったって"常識とファンタジーに対抗"を座右の銘にするようなやつだからだ。
小鳥は無双はしません、爆走はしています。相手が対処できていないだけです。
言葉が武器ってどうやって気づくんだろう。難しいですね。




