少女、Q.ファンタジーに対抗。A.醜い政治と圧倒的科学力。的な。
大体は偏見が混ざっています。真に受けないようお願いします。
Q.生物の学術研究関連は知恵熱が出る、とこの身が言っています。
「アンナの光迷宮、か。」
<<それがどうかなされましたか、主。>>
「ああ、この迷宮の名前だよ。アンナの光だ、それは私たちの世界に残る名前でね。使われた名前は絵画の名前、発表された当時あまりの斬新さに見る者全てに強烈な印象を残した作品の名前さ。そう、レッドキャンパス。一面に鮮やかな赤を彩ったのさ、なるほど遠回しに、嫌味ったらしく皮肉ってくれたようだ。」
<<つまり、主と同じあちらの人がこの迷宮の存在を知ったと。>>
「当然だろう、ましてや迷宮なんて代物はこちら側にしてみれば、御伽噺になるまで古ぼけた存在なんだ。そんな過去の遺物が復活しました、なんて事実が広まらないはずがない。言うなれば宣伝みたいなものだよ。斬った相手が知っている情報を好き勝手に覗けるのは便利だな、あちらの世界の名前を使うやつがいるなんてこともわかってしまうからな。転移か転生かは知らないが冒険者ギルドに、もしくは領主関係か宮廷とかにいるんだろう。迷宮の名前を決めるなんて、現場には決めさせてもらえないからな。」
<<なるほど、情報分析から得たんですね。>>
「そうだな。……まあ、引きこもってばかりでは気が滅入る、私たちもアザンの街とやらに行くとしようか。」
そうつぶやくと、迷宮の魔物召喚を操作し始める。彼女が召喚する魔物は何か、そもそも街に行くのに何故呼ぶ必要があるのか。
<<主コトリ。何故、魔物を召喚するのですか?>>
「そうだな、さっき気付いたことなんだ。九十九はダンジョンの……陣地とでも言おうか、それを広げる方法を知っているか?」
<<はい、土地に対して迷宮の魔力を注ぎ続けて染色する方法です。>>
「そう、ならそれが記録されている正規手順なんだろうね。ウサギ達なんだけど、森に進出させてからそこそこ死んだだろう?それから森がダンジョンの影響下に入ったみたいなんだ、どうやら、ある程度の数がいて、そこそこの数が死ねば影響下に入るらしい。生贄、サクリファイスなのだろうね。ダンジョンとは迷宮を意味しているようだが影響下にあれば、そこもダンジョンとして認識するらしい。つまりは裏技というやつだね。」
ところで、魔物とは何か。それは、生物であるという者がいれば、生物とは違うものだという者もいる。これは魔物を別々の個体で考えているからだ。ホーンラビットやゴブリンなどは魔石を持っているだけで、普通に生物のカテゴリーに入れてしまう。だが同じ魔物でもスケルトンやゴーレムは生物とは言えない。明らかに無機物の何かである。いや、ひねくれた考え方をするならば機械生命体を生物と無理矢理に捉えるなら、ゴーレムとかだって生物だと、無理なこじ付けが出来てしまうが、いや無理だ。ようは魔石がある某ならば魔物なのだ。生物、非生物はあまり関係してこないのかもしれない。
ならば何故、生物の話をしたのか。それは普通のウサギが魔物だからだ、正しくは"魔石を持っている"普通のウサギなのだ。このファンタジーな世界にも、もちろん普通の動物はいる、ウサギ然り、ブタ、ウマ、トリ、クマ、アジとかサバとか――水生生物は魚ぐらいしかまともなものはいないが――だっている。魔物だからといって普通の動物を相手に何でも無双するわけではない、むしろゴブリンなんかはクマやトラに無双されている始末である。と、優しい表現をしてみたもののファンタジーに適応している動物たちは、容赦無用にスキルなんかを使ってくる。魔物じゃなければ何なんだと言いたくなるような暴れっぷりなのだ。少しだけ話を戻そう、そう、ウサギが魔石を持っていたところだ。つまりは魔石さえあれは魔物だと決めている。だから、普通のウサギだと先入観で決めてしまうと逆にやられてしまう。
ダンジョンでは召喚した――厳密には召喚ではなく生成だろうが――魔物に対しては命令権がある、その命令権を使って魔物をアザンの街まで送ろうとしているのだ。そうすることでダンジョンの影響範囲を街まで広げようとしている。
<<しかし主コトリ。魔物を街まで行かせても冒険者や兵士に討たれてしまうだけでは?>>
「なら、討たせなければいいだけの話だろう?九十九、馬鹿正直に魔物を召喚するわけないだろう、相手に見えない魔物を召喚するだけのことだ。」
<<透明の魔物ですか、ですがコスト的には賛同できません。>>
「いや違うよ、どうやら九十九はまだ頭が固いようだな。見せないんじゃない見えない魔物、つまり細菌を使う。」
<<なるほど、物理的に見えない、というわけですか。またファンタジーにおけるテンプレートを無視した発想ですね。>>
「ファンタジーに合わせてどうする、ゴブリンなどで殴りに行っても数ですら負けて蹴散らされるなんて、私は御免だ。まあ、ゴブリンはどこか違うところがやればいい、私はマイコプラズマを元にして召喚する。」
<<はい主コトリ、召喚します。>>
名前
サイコプラズマ
種族
真正細菌
称号
世界最小の生物 魔の微生物 マイクロウェポン かぐやの眷属
Lv.1
MP 0
STR 0
SPD 0
MIN 0
VIT 0
スキル
細胞寄生 自身複製 エナジードレイン 脱出 マイクロスパイ
<<ファンタジーではあり得ませんね。さすがです、主コトリ。>>
「おいおい、私を社会に馴染めない社会不適合者みたいに呼ぶのはやめてくれ。これでもちゃんとファンタジー・ファンタシーしているだろう?世界最小の生物マイコプラズマをモデルにした世界最小の魔物サイコプラズマだ。いちいち足を使って情報を集めるなんて馬鹿らしい、スパイとは諜報とは何のためにあるのかを体現しているコイツを使った方がよっぽどマシだろう。それに影響下に入れるためには数が必要だ、大きさが関係しないところがまた、実にいい。」
<<そして、劣化しているとはいえ、眷属化による不変さですか。>>
数は力である、これは人の歴史ではそこそこ出てくる事実であり結果である。いくら無双できる一騎当千の何かだとしても、個人の強さは数の強さに対しては絶対的ではない。極端な話をするなら呂布にアジ=ダカーハを討ち取れというようなものだ、無双するたびに数が増える敵など倒せるようなものではないのだ。そもそも、アジ=ダカーハは倒すものではない、概念故に学ぶものだ。倒せるとしたら人類を救っちゃう系の人外人間か、何でもかんでも詰め込んだ系の"ぼくがかんがえたさいきょうの"か、概念攻撃だろJK系の小学生か中学生から発症する不治の病くらいだろう。いや、発想の問題か、想像力なのかもしれない。話を戻そう、まず細菌とは人の目には物理的に見えない。見えた方には冗談抜きで眼科をお勧めする、それは眼球の表面か水晶体のご病気です。顕微鏡を使ってようやく見える位の大きさが細菌のデフォルトサイズなのだ、その中でも、顕微鏡を使っても見えた気がする程度の目視の出来なささが売りの小さな細菌が、マイコプラズマと名付けられている。事実、現代では世界最小の生物として名を馳せているほどだ、塗り替えられるかもしれんが。ようはこれの魔物版である。絶望的なほど覆せない数を、目視できないスパイとして使用し、小鳥の命令一つで細菌兵器に変わる魔物など、
「私の魔物は圧倒的なのではないか、恐らくは。」
と言えてしまうだろう、ファンタジー異世界人から見ると。
デメリットはあるものの、それを無くしてしまうほどメリットが大きすぎるのだ。潜在的に抱え、相手の命令で雲の上まで昇ってしまうなど、初めから絶望しか待っていない。戦いとは始まる前に勝負が決まっているのだ、マイコプラズマもといサイコプラズマが一匹でも残っていれば滅びないなど、不死身の何かとしか言えない。さらに、ダンジョンの影響を広げるには数が必要だ。勝手に増えて、自動的に影響下の範囲も広がるなんて素晴らしい魔物だ。コストパフォーマンスは不動の一位に輝くだろう。そしてファンタジー異世界人にサイコプラズマの仕業だと説明したところで、それを理解させるには科学の説明からになる。魔法文明に科学を持ってきても、文明に置き換えられなければ意味がない。では魔物だから、と安直に考えても寄生される前から、マイクロ単位で対策を行っている者でなければ細菌の思うがままだ。やつらの世界は人間が考えるよりはるかに小さいのだ。寄生されたとしても気づかなければ意味がないし、細胞内に寄生するため普通に魔法をかけてもスキルを使っても通じない、体全てが炎に変わるとかなら有効だろうが。そもそも、認識すらしていないものをどうやって駆逐するのか、発想よりも技術の問題になってくる。妄想の中では完璧なのだ、現実が追いついて来ないだけなのだ、など言い訳にもならん。マイコプラズマもといサイコプラズマの脅威は天井知らず、余談だが、むしろどうでもいいことだが細菌兵器は存在すら認めてもらえない代物だ、人類滅亡が核より安く買えるなど許せないのだろう、可能性はあっても実現してしまっては、軽く傘のゾンビゲームより悲惨な目になること請け合いだ。
「一匹いれば十分だろう、魔力コストが1の魔物にしては上出来な部類だ。」
<<そもそも、小さすぎてコスト1でも多すぎるくらいですよ。だとしても驚異的なほど出来すぎていますが。>>
「まあ、あちらの世界は狂気の度合いが違いすぎる、細菌兵器なんてハンバーガーのケチャップのようなものさ、神の杖はフライドポテトだ。なんて例えたお偉い人がいたくらいだ。」
<<地獄が生温いとか言いそうですね。>>
「政治屋の考えは理解したくないものだ。」
そう言いながら、一匹の細菌を世界に解き放った。
A.難しいのが悪いんだ、偉人はやっぱり偉人だった。




