少女、戦闘とは実力が近しいからなりたつのだ。的な。
戦闘描写が書けない言い訳にも使えますね。
よくある子供向けの物語と聞いて、思い浮かべるものは何だろうか。これは不思議と年代によって物語のテーマが違ってくる。時代の変化が原因か社会の常識の変化が理由なのか、専門家ではないので原因は追及しないが、その物語のテーマとして今でもそこそこ出てくる一つに勧善懲悪といったものがある。噛み砕いて説明するならば仮面バッタと黒タイツの関係だろう。バッタキックで一掃されて今日も平和は保たれた、というやつである。そう、正義のヒーローが悪のボスを倒してしまうのだ、名場面も多いことだろう。
「ふむ、あえて言うならば。よくぞここまでたどり着いたな、勇者よ。」
「……………。」
「……ふぅ、お約束というものは、現実では以外と使われないものだな。」
名場面も多いことだろう、魔王が出迎え勇者が答える。だが、実際にそんな事をするくらいなら出合い頭に必殺技でもかければいい、問答は無用なのだ。今の場面でも同じ事が行われている、仁王立ちの少女に向けて矢や魔法が飛ばされているが、しかし、何一つとして掠りもしなければ当たりもしない。近接戦を仕掛けた者は、手刀による居合拳もとい居合剣で首を斬り捨てられている。つまり、残っているのは後衛職や支援職の連中だ。学習したのだろう、攻撃は止んだが警戒を緩めることはない。
「ふむ、準備運動の終わりと見ていいのかな?」
「なんなの。」
「………ん?」
「あなたは、一体なんなの。」
「私か。私は――――。」
問いかける女性、答える少女。そこにはごまかしや嘘、何の小細工すらもない、彼女は聞かれたから答えただけだ。それは堂々とした立ち姿で、迷いが見えない。少女は嘘を言っていない、確信できる、できてしまう。だからこそ、自分の耳を疑ってしまう。聞き間違えたか、そうではない。理解できなかったか、それでもない。信じられなかったか、そんなことはない。ただ、聞き慣れない言葉を聞いて、それが事実だと確信して、それでも嘘だと言ってほしいから耳を疑う。
「私は、ただの迷宮の主だよ。珍しくもないね。」
ああ、迷宮。昔話で御伽噺だった存在、絶滅したはずの廃墟、淘汰されたはずの楽園。ああ、迷宮。それは誘蛾灯のように人を惑わせ食い物にする空腹の怪物。富を、名声を、人が望みうる夢を叶えてしまえる愚者の宝物殿。無くなったはずなのに、何故、そこにあるのか。迷宮の主がなんで目の前にいるのか。
「何故っていう顔をしているね、簡単なことだ。そう、答えは簡単だ。迷宮がなかった時代は終わったんだ、これからは迷宮があるのが当たり前になる。難しい言い方をするなら時代の転換期、まあ、そこまで気にするものでもないだろう。君たちが最も"気を付けなければいけない"ことは――――私の話を聞いていることだと思うよ?」
――危剣物――
――大気剣――
――言刃――
「"届いているかい?"……君たちに"言刃を贈ろう"。相手の刃無しに夢中になってはいけないよ、バラバラになってしまう。」
「あぐぅっ!?」
血煙が広がる、湿り気を帯びてピチャピチャと音を立てた姿は凄惨さと残酷さを印象付け、体中を染め上げるように滴り流れる血は、そんな血の海の中で淫靡さを醸し出している。しかし、少女に関心はなく。さようなら、お大事に。そんな言葉すら刃物に変えて少女は冒険者を斬り捨てる。彼女はその惨状に目もくれず迷宮に帰っていってしまう。立ち去った場所に残ったものは死体か肉塊か、それとも運よく斬り刻まれただけか。
「……ぅぐ………あぁ……。」
「がぁ……うぅ……。」
うめき声が聞こえる。生き残った冒険者もいたようだが、その姿は酷いと言える。全身の表皮は斬り刻まれて、手足の腱は使い物にならない位傷めつけられている。さらに酷いものは足を斬り飛ばされている、誰一人として重症ではない者がいない。
「ダンジョン……マスター………私がぁ……わた、しが…。」
冒険者たちの、いや冒険者ミミィの復讐は復讐にならず、徒に味方の命を散らせただけでなく自分自身も全身に傷を負った。元凶の少女とは戦闘にすらならず頭の理解が追いつく前に敗北した。
全滅。救援が用意されるまで未だ暫く。その森は迷宮と認識されアンナの光迷宮と呼ばれるようになる。




