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少女、迷宮の主的な。  作者: ぺんぎん村長
セーラー神、やつはこう言った。ファンタジスタをご所望かい?的な。
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少女、セーラー神に合う的な。

唐突ではあるが、異世界という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか。正体不明な侵略者がやってくる、発達し過ぎた科学が存在する、仮想世界や電脳世界といった所謂ゲームの世界、平行世界も挙げられるだろう。しかし、他にもないだろうか。そう、ファンタジーな世界観を持つ類が。何を言っているのかと思うだろう、何が言いたいのかと思うだろう。つまり、ファンタジーな世界の話題を提供しようとしているわけだ。代表的なのは魔法だろう、あとは斬撃を飛ばす類の意味不明な剣技か。ゲームの要素もあったはずだ、Lv、職業、称号、スキル、ステータス。他にもあったと思うが、大した問題ではないだろう。






「ま、そんな感じの世界への片道切符をプレゼントしようとしているのさ。」


軽い口調で、適当に、そんな事を言う。楽しそうだ、と言わなくても見ればわかる程の笑顔を見せてくる。自称、神さま。神様という程の威厳は感じられない、だから神さま。外見もそうだ、身長は目算だが150cmギリギリでボブカットより微妙に長い髪型にストロベリーブロンド、セーラー服を着ており紺色のホットパンツにガーターベルト、白いオーバーニーソックスを履いている。靴は用意しなかった、と神さま談。どこのキャラクターだ。しかし、異世界への片道切符。何故そのようなものを渡すのか。



異世界の王様曰く、勇者呼んで、発言力上げようか。

神さま達曰く、おや?召喚の儀式をしているな。おやおや、なら転生者とか転移者が増えても問題なし。呼ぶ方が悪い。



迷惑である。面倒事というか、厄介事というか、伝わってくるのだ。少女、水城小鳥はそんな事を回想しながらも心の中で愚痴をこぼす。


――ものすごく迷惑だ。何故に私なんだ。


「いや、突然こっちに引っ張ったのは悪かったさ。お互いに都合というものがあるのもわかるよ?これでも良心的な方さ、こうやって会話が出来る位には、ね。」


一瞬だけ笑顔を崩す神さま。確かに、突然な事で反応が悪い小鳥であったが¨神にしては良心的¨という考えに至る。何故だ。


「そうか。では、別の誰かにしてくれないか。正直に言ってしまうと、異世界、魔法……寝言は寝て言えと、私は思っているよ。」


「残念なことに、君からすれば手遅れって言うやつだね。ボクに呼ばれた時点で戻ることは出来ないし戻せない。覆水盆に返らずってね。まぁ、そんなキミにアドバイスだ、神託にするほどでもないね。んんっ…では、神さまにでも縋ったらどうだい?……あ、ボクが神さまだね、じゃあ無理だ。諦めなさい。」


流石は神さまですね、できの悪いステマにすら劣る。などという残念な感想が頭に浮かぶ小鳥。


「……他の神さまに縋るという選択肢は?」


「キミは人だろう?神さまの前で他の神さまを話題に挙げるなよ、王の右腕が別の王をリスペクトしているようなものだよ。やめておいたら?ボクは気にしないけどさ。」


「気にしないと言う割には、気にしている様に聞こえるよ……はぁ。」


「まぁね、プライド位はあるさ。話は変わるけどさ、焦ったり、怒ったり、泣いたり、喜んだりとかしないんだね。他の神さまの所だとそんな感じだよ?」


「…私だけじゃないのか。いや、私以外にも残念な事になった人がいるのか。」


自分だけではないことに多少驚いた小鳥は、自分以外にもいたことに安心した。だが、小鳥は自分を含めて救おうとは考えない、助けようともしない。そんな事が出来るのはヒーローやヒロインといった連中だ。所謂、主人公といった存在。更に言えば、正義のヒーロー。画面越しにしか出てこないなら、自分がやってやると叫ぶ人もどこかにいるだろう。だが小鳥は、叫ばないし叫べない。神さまに呼ばれただけで主人公になるわけではないのだから。小鳥が主人公になるとしたら、それは異世界に着いてからだろう。今この時は、オープニングが始まる前の開始1分と言ったところが丁度いい。


「いるね、数はそれぞれだけどさ。なんだっけ、神さま転生?テンプレ転生?みたいだよ。わざと殺して手違いでしたお詫びに転生させましょうってね。」


「神さまが人を殺すのか……そんな神話もあったな。それと、突然だったから現実味がしないだけで十分驚いているよ。」


「うん、神さまは人を殺すよ。所謂、間引きってやつでさ、増えよ富めよとは言ったけども増えすぎなんだよ。人だってやっているんだ、神さまだって間引き位出来るんだよ。……うんうん、現実味がなくてもいいんじゃない?焦るよりいいでしょ。それじゃあ、話を戻そうか。キミには異世界に行ってもらう、死んでないから転移ってやつだね。でも、ただで転移したら意味がない。ボクからすれば、興醒めもいいところさ。だから、特典なり、恩恵なり、加護なり貰ってもらう。必要ないならそれでもいい、ライオンに裸で突撃する様なものだけどね。」


「ライオンに挑むなんて無理だな、私にそんな強さはないよ。」


「だよね。じゃあ、続きだ。ボクは勇者をやれなんて言わない。魔王だって、種族の頂点ってだけで探せば見つかる位にはありふれているよ、倒せるかは別にしてね。そんな事は他にやらせればいい。ボクはね、キミに迷宮を作って欲しいって思ってるんだ。ダンジョンマスターって言えばいいのかな?」


「………迷宮?」


迷宮。有名なものだとミノタウロスがでてくる迷宮だろうか、この神さまは小鳥にミノタウロスの役をやれと言っているのか。否、そういうことではない。神話に出てくるような、英雄を作るための迷宮ではない。神さまが言っているのは、ファンタジー小説に出てくるような摩訶不思議、意味不明な迷宮のことだ。これは魔法なんだ、と言えば片付けられる事と同じだ。これが迷宮の力さ、なるほどわからん。


「そうだよ、理由は簡単だ。過去の勇者、英雄が全部壊したのさ。洞窟や遺跡とかは残っているんだけどさ、迷宮は残っていない、つまりダンジョンは無くなったんだ。だから作る、簡単でしょ?」


「国を作るゲームを聞いたことはあるが、似たようなものか?」


「似てるね、キミ以外にもダンジョンマスターをやらせるらしいから、文句は聞かないよ。さて、恩恵とかどうする?1つだけね。」


「1つだけなのか、意外と少ないと言えばいいのか?」


「いやいや、貰えるだけましだよ。神さまが個人を気に掛けるなんて遥か昔の話だからね。あとはダンジョンマスターになってから頑張ってよ、これが迷宮の力さってね。」


「そうか……では、歳をとりたくないな。」


「……へぇ、不老かい?」


「いや、極端な言い方をすれば修理の必要がないアンドロイドでもいい。」


「…あぁ、なるほどね。不老じゃなくて状態維持ってことか。へぇ、ふぅん……じゃあそれでよしっと。キミも準備はいいかい?」


「……戻らないのか。いや、いつでもいい。」


「うんうん、キミは面白いよ。諦めがちっていうか、面倒くさがりなとこがね。さて、少し急いで説明したけど、説明不足かもね。でも文句は言わないでよ?勇者召喚の後始末がボクを待っているのさ。文句は勇者に言ってくれ、召喚に引っかかるやつが悪いんだ。」



そんな会話で、別れの挨拶なんかもなくて、彼女も神さまも気にすることもなく。少女、水城小鳥はダンジョンマスターなる不思議なものになった。


――初めまして異世界、そしてこんにちは。



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