プロローグ
この世界、アトラシアに存在する完全中立地域。そこにギルドア総合学園は存在する。
この学園は元々、相互扶助組織であるギルドが人材育成のために創設したものだが、そこに人材とより良い教育を求めた各国が支援を始め、今ではかなりの規模を誇るようになっている。
また、ギルドが創設したために身分は学園では意味が無く、完全な実力主義であり、各国から人が集まる都合上全寮制である。
入学のチャンスは12歳と14歳の2回あり、12歳から2年間学ぶ基礎科が修了した後、専門科と呼ばれる戦士科、騎士科、魔術科、法術科、斥候科、技術科、商業科、調教科、学術科、貴族科の各科で4年間学ぶことになる。
ただし基礎科では文字の読み書きや簡単な計算、世界史、初歩の魔術や護身術を教えるぐらいなので一部の人間には通う必要が無い。そのため各科に分かれる際入学する機会があるのだ。
基礎科は一定の金を納めれば誰でも入れるが専門科に入る際は入学試験があり、それを突破しなければならない。これは基礎科からの持ち上がりも同様である。
しかし、ギルドや各国による奨学金制度のおかげで一定以上の成績をキープなどの条件を満たせば貧乏な者でも通え、成績次第では卒業後明るい未来が待っている。
それに学園を卒業すれば最低でも冒険者、傭兵、魔導師、生産者、商人の5大ギルドのどれかに属すことになり、成績次第では国にそれなりの待遇で召し抱えられることもできる。
それゆえに毎年多くの者が入学を目指すのだ。
話は変わるが専門科の各上位10人、計100人には競争を活発化させるためそれぞれの科に応じた様々な優遇処置が与えられる。
これは学年が関係しないため基本的に高学年が独占することになってしまうが何事にも例外が存在する。
1年時より上位10人に入った戦士科リア・イール、技術科ユウヤ・シャドウノート、技術科ガント・リード、魔術科、ラサ・ケイフォート、調教科ショウ・オーサ。
彼らはいずれも人には言えないある秘密を抱えていた。それは前世の記憶――
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森の奥深くで甲高い悲鳴が響き渡る。
しかしそれは人間のものではない。
その声の主はブラックドラゴン――俗に色付きと呼ばれるドラゴンの一種でギルドにおいてAランク指定されている魔物である。
ギルドのランクは高い方からEx、S、A、B、C、D、E、Fとあり、Exランク以外はそれぞれ+と-も存在する為22段階にランク分けされていることになる。
Aランクは上から数えて6番目、余程の実力者でなければ話にもならない強さだ。
にも関わらず、本来強者であるその魔物を追いつめているのは5人の若い人間だった。
黒髪の少年が右手の銃で眼を撃ち抜けば銀髪の少女が雷を落とす。
ブラックドラゴンが吐くブレスは背が高い金髪の少年の盾に容易く阻まれ、白髪の少年が使役する銀狼がお返しとばかりに襲いかかる。
弱り、動きが鈍ったブラックドラゴンの首を黒髪の少女が止めとばかりに斬り落とす。
彼らはギルドア総合学園最強とされるクラン『アナザーアース』のメンバーであり、全員が上位10人に入り、そして全員が転生者だった……