4
4
ビーチバレーをひとしきり遊んでから、俺達は散開した。池田と恵子は、砂浜を二人で歩いて、どこかへ行ってしまった。
俺はなんとか葵と一緒になれないかと思ったが、今回も裕太に先を越されてしまった。裕太、葵、恵美子、水谷の四人で、ビニールボートに乗って、沖の方まで出かけたようだ。
俺は田村、不二雄と一緒にビーチフラッグに明け暮れていた。最初は遊びのつもりだったが、三人の実力が拮抗していて、いつの間にか白熱していた。やはり、むさ苦しい。
走り疲れて、砂浜に寝転んだ。眩しい陽光が降り注ぐ。焼けた砂浜が背中に当たって、とても熱い。
「うん?」
俺は砂浜のシートの上へ目線を固定する。
かおりと真世が、パラソルの下で何か喋っているようだ。ここからでは声まで聞こえてこないが、何か真剣な顔をしているのが分かった。
先ほど、泳げないから、とボヤいていたかおりはまだ分かるとして、真世まで真剣な顔をしていることに、少し違和感を覚えた。真世は直前まで、楽しそうにボールを蹴っ飛ばしていたからだ。
「どうした?」
田村が俺の隣に座った。坊主頭に砂がひっかかっていて、間抜けな姿だった。俺は思わず笑いを漏らした。
「タム、頭に砂が掛かってるぞ」
俺が言うと、田村は恥ずかしそうに頭を払った。いちいち仕草が、体格や顔にあってなくて面白い。
「ん? ああ、かおりさんと真世さんか」
田村が俺の視線に気がついたのか、そう言った。彼はどうしてか、彼女たちのことをさんづけで呼ぶ。歳は同じだけど、バイトを始めたのが、俺よりもずっとあとだったからかもしれない。
「何話してるのかなと思って」
砂に接している背中が本格的に熱くなってきた。俺は上半身を持ち上げる。
「……なんだろう。やけに真剣だね」田村も、彼女たちの緊迫した雰囲気を感じたらしい。それから「もしかして、明日の実験が不安なんじゃないのかな」と続けた。
田村の一言で、忘れていた不安が再燃した。
「実験かあ。……一日で十万。しかも伊豆の島だ。そりゃ不安になるかもな」
「だよな」田村はどすんと音を立てて、仰向けに倒れた。
一応、開催者のリアル・ハローズという会社のことや、天神島のことは調べた。怪しい噂などはなかったが、それでも、信頼できるというわけではない。
俺と田村はしばらく、かおりと真世を眺めていた。
そのうち、池田と恵子が帰ってきた。両手にビニール袋をぶら下げている。
「イケピーか。どこ行ってたの?」
俺が訊くと、池田は口の先を吊り上げて、ニヒルな笑みを浮かべた。
「コンビニで酒とか飯とか買ってきた。そろそろ昼だろ。みんなで食おうぜ」
池田は俺と田村に缶ビールを渡すと、かおりと真世の待つパラソルに向かって歩いて行った。
三歩後ろを恵子が歩く。その姿はカップルのようで、よく似合っていた。