学園都市リディカレア
世界樹の加護によりマナがあふれ魔法という存在が当たり前に存在したこの世界。
その中でも一番大きな世界樹を中心にして栄えた学園都市があった。
______不思議な世界の中で若者たちは冒険者に憧れを抱いていた。
学園都市リディカレア 北を山 南を海 東を森 西を草原 自然と魔法に囲まれた冒険者を育成する
不思議な場所、多種多様な人種が生きるこの学園に彼は転校してきた。
はるか西からやってきた彼にははリディカレアにはないものを持っていた。それは銃と呼ばれるもの、世界樹の加護を受けることできなかった国が魔術の力に対抗するために造りだしたはるか西の国の技術。
彼の名前はツバキ。孤児であるツバキは戦場で傭兵であった男に拾われ、闘うすべを学びながら育った。だが彼にはこの世界で闘うために一番必要な物が欠けていたのだ。
______それは魔術の才能だ。
この世界樹が存在し、その恵みであるマナにより魔法というものが存在した世界で魔術の才能がないことがどんだけ大変なことだろうか、だが彼に救いがあったのはそんな彼に対して男は見捨てることはせず、息子として受け入れ魔法を利用しながらも自らの魔術を必要としない闘いかたを教えてくれた。それが俺がこの銃と呼ばれるものと出会う最初だった。銃とは、魔術という力に対抗するために造りあげられた魔法を使った兵器だ。
銃は術式を必要とする魔術と違い、弾を装弾することにより敵を粉砕するものなのだ。
数多くの種類の弾を使いこなして彼は、今まで傭兵として生きてきた。
そして今______親父の頼みでここリディカレアに来た。
リディカレアは、かなりの面積があり特徴的なのは中央にそびえたつ塔だと言える。なんのためにあれほど高い塔を建てたのか現在の人間にはわかりはしないが学園の時計塔の役割として使われている。その北側は複数の校舎が建ちならんでいる。年々新しいものに建て替えられているらしく、創られた年月が校舎により違っている。
東には図書館が存在する。この図書館は大きく歴史を感じるたたずまいだ。地下には遺跡のようなものがあるという。その近くには貴族の建物が複数建っていて、図書館以外の東地区のほとんどが貴族の所有地と言っても良い。その中でも一番広いのがロードスケルド家という世界的な芸術家として有名な家系の屋敷である。
西は学生が使う演習場と学生寮がある。定期的に行われる試験もこの西で行わるらしく演習場の奥には、そのための森などがそのままの姿で残されている。
南には学園都市の都市として機能している部分が集合している。商店街や住宅地、警察署などがあり活気にあふれている。これから彼が行く予定の喫茶オダインもここの一角に建つ。
都市全体は自然にできたかのような岩肌に護られ南側は、崖になっており近付けないように周辺には柵が施されている。
こんなところが、この都市に来るまでに彼が調べておいたことである。
「まずは喫茶オダインに向かうとするか」
それが彼がこの都市について最初にすることだった。
喫茶店というだけに軽食やお茶などをだすお店なのだろうが、裏では彼などのような傭兵に情報やこの地域では手に入りにくいものを手に入れてくれる場所でもある。彼の場合は、銃の弾がそれにあたる。
(今回は仲間うちからの紹介ということで顔見せによっておこうと思っているだけで特にほしいものがあるわけではない。)
「喫茶オダイン。思ったより真新しいな」
「でしょでしょ リニューアルオープンで私が一生懸命がんばったんだよ」
「そうかそれはえらいな」
赤いポニーテールの髪をなびかせる元気な少女はここの店員なのだ。
元気な彼女に少し彼まで元気になりそうだ。
「ほめられた。やった」
とりあえず中に入りたかった彼は許可をとってみることにした。
(春を迎えたとはいえまだまだ肌寒い季節だからな)
「中にはいってもいいかい?」
「あう、ごめん、そうだよね、はいってはいって! 」
後ろを振り向いた少女は、道を歩く女性に気付かなかったようで正面からぶつかってしまった。そして相手を転ばしてしまう。
「きゃ! 」
「ごめんなさい」
悲鳴をあげながら転んだ女性は店の壁に背をぶつけるて倒れた。
「おい、大丈夫か?」
ツバキは手を差しのべながら彼女を立ち上がらせる。
「大丈夫よ・・・さすがに少しびっくりしたわ」
ドレスの汚れを落としながら怪我はないと伝える女性に店員の少女は慌てて近寄った。
「ほんとにごめんなさい」
彼女は深く頭を下げて何度も謝った。
「ふふ、大丈夫よ。魔法障壁があるからこの程度では怪我をしたりしないわ」
長い金色の髪を耳の処で束ね直しながら女性はそう答えた。
この魔法障壁というものは魔術を使える人間ならだれもが持つ身を守る見えない盾なのだ。少々の怪我を防ぐどころかある程度の攻撃すら防げる便利なものなのである。
____残念ながら彼にはないのが現状であった。
「俺はてっきり、よくも私にぶつかったわね! 無礼者この場で打ち首よ! とか言ったりすることを期待した」
「ごめんなさい。打ち首はやめて」
頭を抱えながらうずくまった店員の少女に対して金色の髪の女性は驚きながらもこう答えた。
「大丈夫よ。そんなことはしないわ」
そして次にふざけていた彼に言う。
「しないわよそんなこと。あなたが無礼でしょう」
彼女は、眉間にしわをよせて怒って見せた。
「すまん、それは悪かった」
ツバキはさすがに失礼だと思ったのか謝る。
「お前ら店の前でなにをやっている」
声がしたほうを彼らが振り返ると店の扉から一人の男が顔をだす。
彼はオダイン。この店の主でツバキが用事があった相手である。
「これは失礼、そちらの店員さんが、うちのお嬢様にぶつかった挙句に怪我させたわけです。このおとしまえどうしてくれます!?」
突如閃いた彼は食事にありつくためにこの状況をうまく使おうと必死に嘘をついた。
長旅で持ち金を使い果たした彼には食事をするお金がないのだ。
「勘弁してくださいな、うちも日々生活するのがいっぱいいっぱいで」
「そういうわけにはいきませんな。せめて昼飯代でちゃらにしませんか? 」
「それぐらいでしたら。ま、まあ」
「そうですかそれは良かった。これでお嬢様も納得されるでしょう」
彼は後ろを振り返りお嬢様ということにした彼女にVサインをした。
「いや、納得しませんから、話の流れが見えませんわ」
「どうやらお嬢様は不服のようです。デザートも付けろとおっしゃっておりますが?」
「デザートも付けますんで」
「それは良かった。」
彼は再度後ろを振り返り素早くお嬢様を持ちあげた。
「きゃっ! え、ちょっと」
彼はそれ以上余計なことをなにも言われる前に抱えたまま店の中へ押し入った。
そして彼はたらふく食事にありつけたわけだ。
「いや、助かった。朝から何も食べてなくてな」
「打ち首いや! 」
店員の少女はまだ震えていた。
「あなたもいつまで言ってるのそんなことしないわよ! 」
女性は、店員の少女をどうにか理解させようと諭す。
「いや、おじさんも困ったよ。ロードスケルド家のご令嬢を怒らせたかと思ってひやひやしたよ」
(この女性がロードスケルド家のエレガノ嬢か。)
彼女は学園の生徒でありながら芸術家としても有名な方であり。ツバキもその存在は情報で知り得ていた。
「そうそう忘れるとこだった」
彼は手持ちの荷物から一通の手紙を取りだし、それを確認したあとテーブルの上に置いた。
「これは、おっさんあての手紙だ。俺の同業者からあずかったものなのだが」
男は自分のひげを触りながらその手紙を受けとり読み始めた。
「なるほどな、奴と同業か。そういうことなら深い付き合いになりそうだな」
「ああ、よろしく頼む。多分長い間は、この都市に滞在することになりそうでな」
男は、さっきほどまでのだるそうな顔をやめて凛々しい顔で真剣そうに言った。
「俺は、この店のマスターのジョージ・オダインだ。あとのことは知ってると思うが仕入れには数日かかるぞ」
あとのこととは男が裏で仕事している武器商売のことである。弾や武器の調達には数日の仕入れ時間が必要だったのだ。
「了解。俺はツバキだ。今度からこの学園の生徒になる。よろしくたのむ」
そんな真剣な話のさなか、赤いポニーテールの少女が顔をのりだしながらツバキに話しかけてくる。
「学園に入るんだ。一緒だねよろしく!私も今期から受けるの」
「そうかよろしくな。赤い奴」
「赤い奴はやめてよ! 私はロローナ! ロローナ・エルだよ」
「それは悪かった。ところでお嬢様の名前は? 」
「わたし? 私はエレガノ・ロードスケルドよ。少し芸術家しても活動しているわ」
彼女の楽器を使った演奏は人々を笑顔にする力があると世界的に話題にされるほどなのである。
「お嬢様も学園に入るのかい?」
「ええ、今期からそうなるわ。お父様が一般教育も受けたほうが良いとおっしゃったので」
「それはよかった」
「どういう意味かしら? 」
「いや、遠くからきたもんでな始めて知り合った人たちが同じ学生なら気が楽だなと」
「あら、あなたでもそんなこと気にするのね。」
そんな話をしていると、店の奥から一人の少女が顔を出してきた。
「おとうさん、お客様? 」
「おお、そうだよ。しかしシゼルちゃんは今日もかわいいね」
彼はいつものように娘をかわいがる。
「おとうさん。さすがにお客さんの前ではやめて」
少女は照れながら皆のほうへ近づく。
「そうそう、この子も学生か?」
「そうなんだよ!お父さんとしてはもう少し早いと思うだよ、あと1年いや3年は早いさ・・・けどシゼルちゃんが今期から学園に通いたいっていうからさ・・・」
「どこの親ばかだよ。 (おっさんに似なくてよかったな) 」
「皆も今期からですか?」
「ああそうなるツバキだ。よろしくな、シゼル」
「私はロローナ!よろしくね」
「ロローナさんは知ってる」
「そうでした、えへ」
一緒の所で働いているのでそれは少女は知っていた。
ボーッとして名乗ろうとしないエレガノ嬢の背中をツバキは軽く叩いた。
「あ、あら失礼、私はエレガノよ。よろしくねシゼルちゃん」
慌てながらも気づいたエレガノは取り繕うように答える。
「よろしく」
少女は簡単に返す。
ロローナは皆が一緒でうれしくてはしゃいでいた。
ツバキは今日中に行かなければならないとこがあるので店を出る胸を皆に伝えてた。
「すまないが俺はこれから日が暮れる前に学園にいかないといけないんで、そろそろいかないとな」
ジョージは心配してこう答えた。
「そうか、道はわかるか?」
「ああ、大丈夫だおっさん。ある程度は調べてるんでな」
「そうなら問題なさそうだな」
彼は納得したようだっだが、となりのロローナはそうでもなかった。
「わたしもいく」
「あんたは、仕事だろ」
「そうでした」
彼女は仕事のことをおもいだして踏みとどまった。
「そういうことなら私も帰ろうかしら」
エレガノは自分もついでに帰ることを伝えた。
「それじゃあ、お開きやな。気をつけてな」
ジョージの言葉を最後にツバキとエレガノ嬢は店をでることになった。
青い看板の警察署の前、色とりどりの野菜や果実を売る商店街をぬけ時計塔の前まで彼らは無言で歩き続けた。
日が暮れる前にとは言ったものの、もう日の光は沈みかけていた。
お嬢の前を歩いていた俺は振り向いて頼み込んだ。
「すまない!実はどの校舎に校長がいるかわからん。案内してください!」
「ふう。まあそんなとこだと思ってたわ。こっちよ行きましょう」
「助かります」
じつに助かったのである。学園の広さもだが、まさかこんなに校舎が多いとはツバキは思っていなかった。その多さは少し離れたこの時計台周辺からでも確認ができた。生徒数が1万人というのも納得できる。
それとあとで彼が調べた話だが、学園は12歳以上で授業料さえ払えればだれでも入れるのだ。そして28歳まで学生としていることができる。さすがに28までにはなんらかの職を探すのが普通であったのだが。そして校舎の数は全部で27。そのうち2つは職員校舎と特別実習校舎だそうだ。
____広いわけである。
ツバキたちはその後、すんなり職員校舎までいき事情を話し校長室までとおされた。
「はいはい、エレガノちゃんおひさ、今日もいちだんと輝いてますね。さて時間はないですよ。ささ中にGo!」
「おひさでーす。エレガノちゃんいつも華やかなドレスですね。お姉ちゃんも華やかな衣装でも着ようかな。」
彼らを校長室に通してくれたのは双子の女性だった。対称的な二人はエレガノ嬢の知り合いでもあった。
のんびりとした話し方の姉がケーネ、しゃきしゃきとした話し方の妹がユーノ。
二人は校長の助手として働いているとのことだ。校長室の大きな扉を開け中に足を彼らは踏み入れる。中は木製の業務用のテーブルや椅子があった。西ではめったにおめにかかれない高級感のある造りだ。壁にはなにかの大会の優勝旗が立て掛けられていた。
そして、彼らを迎え入れたのはエルフ族の女性だった。彼が前々から聞いた情報では700歳とのことだが、そのはりのある整った顔は老いを感じさせなかった。
これがエルフ族というものかと始めてエルフ族にあった彼は思った。
戦場を渡り歩いた彼だが、エルフ族は他の種族との交流を極力さけるのが一族の決まりとのことであまり
他の種族の前に顔を出さないと聞いていた。
「ロードスケルドさんお久しぶりですね。前の公演は素晴らしいものでした。」
「ありがとうございます校長先生。そう言って頂けるととてもうれしく思いますわ」
エレガノ嬢はお辞儀してそう返答した。この校長もそうだがエレガノ嬢のひとつひとつの動作に華というものを感じた彼はそんな彼女を綺麗だと感じた。
「ところでそちらのあなたは?」
エルフ族の校長に聞かれたツバキは名を名乗った。
「ツバキと申します。詳しい話しは手紙のほうでもうお知りと思いますが・・・」
「あなたがツバキさんですか。私は校長のレンと申します。ようこそ学園都市リディカレアへ話は聞いておりますよ我々はあなたを歓迎いたします」
レン校長に歓迎された彼は微笑んで返した。
さてこれから都市での彼の生活が始まろうとしていた。
____なにごともなければいいがな。
2011.1.17 修正を入れました。(変な言葉の使い方や視点変更)