『機械仕掛けの六枚目』【12】
こいつは――
動物を。
巻き込まないように――
戦っている。
No.6「排除を――」
No.6「継続します」
黄金の羽へ――
光が集まる。
シオン「……なあ」
No.6「…………」
シオン「なんで――」
シオン「あの鹿を避けた?」
No.6「…………」
シオン「さっきの兎もだ」
シオン「お前――」
シオン「攻撃を止めたよな」
No.6「周辺生命体への被害は――」
No.6「戦闘目的に含まれていません」
シオン「それだけか?」
No.6「…………」
シオン「目的じゃないなら――」
シオン「巻き込んでも関係ない」
シオン「でも、お前は――」
シオン「わざわざ攻撃を逸らした」
No.6「…………」
シオン「なんでだ?」
No.6「…………」
黄金の光が――
揺らぐ。
No.6「解析中」
シオン「…………」
No.6「…………」
No.6「解析不能」
シオン「……そうか」
No.6「回答不能です」
シオン「なら――」
シオン「もう一つ聞く」
シオンの視線が――
No.6の背後へ向く。
小さな石の墓。
その上で――
一輪の白い花が揺れている。
シオン「その墓は――」
シオン「誰の墓だ?」
No.6「…………」
六枚の羽が――
僅かに動く。
No.6「回答を拒否します」
シオン「なんで墓を作った?」
No.6「…………」
シオン「なんで花を置いた?」
No.6「質問を――」
No.6「停止してください」
シオン「誰かに命令されたのか?」
No.6「…………」
シオン「墓を作れって」
シオン「花を置けって――」
シオン「誰かに言われたのか?」
No.6「…………」
答えは――
返ってこない。
シオン「違うんだろ」
No.6「…………」
シオン「お前が――」
シオン「自分で決めたんだ」
No.6「自分で……」
シオン「ああ」
シオン「動物を巻き込まないことも」
シオン「その墓を作ったことも」
シオン「花を置いたことも――」
シオン「全部」
シオン「お前が自分で決めてる」
No.6「…………」
No.6の手が――
ゆっくりと胸元へ伸びる。
No.6「私は――」
No.6「命令に従うために造られました」
シオン「でも――」
シオン「この研究所を壊したのは、お前だ」
No.6「…………」
シオン「それも――」
シオン「命令だったのか?」
No.6「…………」
No.6「違います」
シオン「なら――」
シオン「それもお前が決めた」
No.6「…………」
No.6「私は――」
胸へ置かれた手が――
僅かに握られる。
No.6「理解できません」
シオン「…………」
No.6「命令に存在しない行動を――」
No.6「私は選択します」
No.6「必要性のない行動を――」
No.6「繰り返します」
No.6「この場所へ来ることも」
No.6「花を置くことも」
No.6「生命体への攻撃を――」
No.6「回避することも」
No.6「理由を解析しました」
No.6「ですが――」
No.6「回答は得られません」
シオン「…………」
No.6「これは――」
No.6「異常なのでしょうか」
シオン「違う」
No.6「…………?」
シオンは――
地面へ手をつく。
震える腕で――
身体を持ち上げる。
No.6「…………」
膝を立て。
ふらつきながらも――
立ち上がる。
シオン「それは――」
シオン「異常なんかじゃない」
No.6「では――」
No.6「これは何ですか?」
シオン「感情だ」
No.6「…………」
No.6「感情……」
シオン「ああ」
シオン「動物を傷つけたくない」
シオン「その墓を――」
シオン「放っておけない」
シオン「理由なんて分からなくても――」
シオン「そうしたいと思った」
No.6「…………」
シオン「それが――」
シオン「お前の感情だ」
No.6「…………」
No.6「ですが――」
No.6「私は兵器です」
シオン「だからなんだ」
No.6「兵器に――」
No.6「感情は必要ありません」
シオン「必要かどうかなんて――」
シオン「関係ない」
No.6「…………」
シオン「もう――」
シオン「あるんだから」
No.6「…………!」
六枚の羽に集まっていた光が――
ゆっくりと消えていく。
No.6「私に――」
No.6「感情が……?」
シオン「ああ」
No.6「…………」
No.6「私は――」
No.6「機械です」
シオン「それでもだ」
No.6「…………」
シオン「感情は――」
シオン「生きてるものの特権だ」
No.6「…………」
No.6「生きてるもの?」
No.6「私が?」
シオン「ああ」
シオン「この世界で――」
シオン「自分で考え、行動して」
シオン「それだけで充分――」
シオン「生きてると言えるだろ」
No.6「…………」
風が――
静かに吹き抜ける。
一輪の白い花が――
揺れる。
No.6は――
その花へ顔を向けた。
そして。
ゆっくりと――
自分の胸へ手を当てる。
No.6「…………」
ずっと――
解析できなかったもの。
命令ではなく。
必要でもなく。
それでも――
自分を動かしていたもの。
No.6「感情……」
初めて。
その答えに――
名前がついた。




