『変幻の三枚目』【1】
――数日後。
宿の食堂。
シオン「…………」
No.2「…………」
カチャ――
向かい合って。
二人は――
食事をしていた。
戦いで負った傷は――
まだ残っている。
だが。
二人とも――
こうして食事ができる程度には。
身体も――
回復していた。
No.2「……そういや」
シオン「ん?」
No.2「お前――」
No.2「他の凶宴の奴には会ったのか?」
シオン「ああ」
No.2「誰だ?」
シオン「A」
No.2「…………」
No.2「Aか」
シオン「ああ」
No.2「戦ったのか?」
シオン「戦った」
No.2「勝った?」
シオン「ああ」
No.2「へぇ……」
シオン「なんだよ」
No.2「いや」
No.2「Aに勝ったのかと思ってな」
シオン「ギリギリだったけどな」
No.2「それで?」
シオン「?」
No.2「あいつとは――」
No.2「何か話したのか?」
シオン「……まあな」
シオンは――
箸を置く。
シオン「俺の力のことも話した」
No.2「力?」
シオン「ああ」
シオン「俺は――」
シオン「少し先の未来が見える」
No.2「――ああ」
シオン「…………?」
間髪入れず。
No.2が――
シオンを見る。
No.2「それでか」
シオン「何が?」
No.2「戦ってる時――」
No.2「言っただろ」
No.2「俺が斬る前に、もう避けてるって」
シオン「…………」
No.2「あれ――」
No.2「先に見えてたんだな」
シオン「ああ」
No.2「なるほど」
そして。
No.2は――
すぐに。
もう一つへ――
辿り着く。
No.2「じゃあ――」
No.2「途中から俺たちの連携になって」
No.2「お前が急に対応できなくなったのも――」
シオン「…………」
No.2「見えた未来が――」
No.2「次々変わってたからか」
シオン「……そういうことだ」
No.2「やっぱりな」
シオン「…………」
No.2「それなら――」
No.2「全部繋がる」
シオン「…………」
No.2「で?」
シオン「?」
No.2「Aは――」
No.2「それを知って、何て言った?」
シオン「…………」
少し――
間を置く。
シオン「俺たちがCARDなら――」
シオン「俺は、そのカードを一枚ずつ弾いていく者だって」
No.2「…………」
シオン「それで――」
シオン「“DEALER”」
No.2「……ディーラー?」
シオン「ああ」
No.2「…………」
シオン「その時は――」
シオン「勝手に決めるなって言ったけどな」
No.2「…………」
No.2「いや」
シオン「?」
No.2「結構――」
No.2「合ってんじゃねぇか?」
シオン「……そうか?」
No.2「ああ」
シオン「…………」
シオンは――
少しだけ。
考える。
Aと――
戦った時。
自分にできたのは――
見えた未来に。
対応すること。
だが。
今回の戦いでは――
それだけじゃ。
通用しなかった。
未来を見ても――
変えられる。
追えば――
また変わる。
だから。
一度――
流れを断った。
シオン「…………」
No.2「どうした?」
シオン「いや……」
シオンは――
自分の手を見る。
シオン「今回――」
シオン「お前と戦って」
シオン「一つ、新しい技術を掴んだ」
No.2「技術?」
シオン「ああ」
シオン「――CUT」
No.2「…………」
シオン「見えた未来に――」
シオン「すぐ対応するんじゃない」
シオン「一度――」
シオン「相手の流れを断つ」
No.2「…………」
シオン「それでも対応されたら――」
シオン「今度は、こっちから誘導する」
シオン「相手がどう動くか――」
シオン「こっちから引き出す」
No.2「……あれか」
シオン「ああ」
No.2「…………」
シオン「未来を見て――」
シオン「流れを切って」
シオン「最後は――」
シオン「相手の動きまで引き出す」
No.2「…………」
シオンは――
僅かに。
口元を緩める。
シオン「なんか――」
シオン「あいつの言うように」
シオン「本当にDEALERって感じになってきたな」
No.2「……今さらかよ」
シオン「なんだよ」
No.2「俺は戦ってて――」
No.2「十分、嫌な奴だと思ったけどな」
シオン「…………」
No.2「相手の動きまで――」
No.2「勝手に決めやがる」
シオン「褒めてるのか?」
No.2「さあな」
シオン「…………」
再び――
二人は。
食事を続ける。
カチャ――
No.2「それで――」
シオン「?」
No.2「これからどうする?」
シオン「…………」
シオン「決まってる」
No.2「凶宴か」
シオン「ああ」
シオン「まだ――」
シオン「何も終わってない」
No.2「…………」
シオン「父上を殺した奴も――」
シオン「まだ分かってない」
No.2「…………」
シオン「だから――」
シオン「このまま凶宴を追う」
No.2「そうか」
カチャ――
No.2は――
箸を置く。
No.2「じゃあ――」
No.2「俺も行く」
シオン「…………」
シオン「は?」
No.2「俺も――」
No.2「お前について行く」
シオン「…………」
数秒。
シオンは――
No.2を見る。
シオン「……アホか、お前」
No.2「なんでだよ」
シオン「なんでって――」
シオン「お前は凶宴だろ」
No.2「ああ」
シオン「俺の父上を殺した――」
シオン「その凶宴の人間だぞ」
No.2「そうだな」
シオン「そうだな、じゃない」
No.2「…………」
シオン「そんな奴を――」
シオン「なんで俺が連れて歩くんだ」
No.2「別に――」
No.2「お前に連れて行ってもらうつもりはねぇよ」
シオン「…………?」
No.2「俺が勝手について行く」
シオン「もっとダメだ」
No.2「なんでだよ」
シオン「なんで分からないんだ……」
No.2「…………」
No.2「でも――」
No.2「お前、凶宴のことほとんど知らねぇだろ」
シオン「…………」
No.2「Aから――」
No.2「俺の居場所を聞いたんだろ?」
シオン「ああ」
No.2「じゃあ――」
No.2「この先は?」
シオン「…………」
No.2「次に誰を探す?」
シオン「…………」
No.2「そいつがどこにいる?」
シオン「…………」
No.2「どんな奴で――」
No.2「どう戦う?」
シオン「…………」
No.2「知らねぇだろ」
シオン「……まあ」
No.2「だったら――」
No.2「凶宴の情報を持ってる俺がいた方がいい」
シオン「…………」
No.2「それに――」
シオン「?」
No.2「お前が――」
No.2「この先どう戦うのか」
No.2「ちょっと見てみたくなった」
シオン「…………は?」
No.2「未来を見て――」
No.2「流れを断って――」
No.2「最後は相手の動きまで引き出す」
No.2「DEALER――」
No.2「なんだろ?」
シオン「…………」
No.2「だったら――」
No.2「残りのCARDをどう弾いていくのか」
No.2「近くで見てみたい」
シオン「…………」
シオン「やっぱり来るな」
No.2「なんでだよ」
シオン「面倒くさそうだからだ」
No.2「もう決めた」
シオン「俺は認めてない」
No.2「別にいい」
シオン「よくない」
No.2「俺が勝手について行くんだから――」
No.2「お前の許可はいらねぇだろ」
シオン「…………」
No.2は――
何事もなかったように。
再び――
箸を持つ。
シオン「…………」
No.2「なんだよ」
シオン「いや……」
No.2「?」
シオン「お前――」
シオン「意外と面倒くさい奴だな」
No.2「今さらか?」
シオン「というか――」
シオン「キャラ変わりすぎだろ」
No.2「…………?」
シオン「俺と戦ってた時――」
シオン「もっと無口だっただろ」
No.2「そうだったか?」
シオン「そうだった」
No.2「…………」
No.2は――
少し考える。
No.2「まあ――」
No.2「今はもう」
No.2「黙ってる理由もねぇからな」
シオン「…………」
No.2「それに――」
No.2「お前とは一回殺し合ってるし」
シオン「それで距離縮まるのおかしいだろ」
No.2「そうか?」
シオン「そうだよ」
No.2「…………」
No.2「まあ、いいじゃねぇか」
シオン「よくない」
No.2「で――」
シオン「?」
No.2「次は誰を探す?」
シオン「…………」
シオン「もうついてくる前提じゃねぇか……」
No.2「当たり前だろ」
シオン「…………」
シオンは――
深く。
ため息をついた。




