『二枚目の裏側』【10】
シオン「――行くぞ」
No.2「来い」
一瞬。
静寂。
そして――
ドンッ!!
二人が、
同時に地面を蹴った。
ガキィィィン!!!
剣と剣が――
真正面からぶつかる。
No.2「…………」
シオン「……ッ!」
ギギギギ……!
鍔迫り合い。
No.2の目は――
静か。
笑みもない。
無駄な動きもない。
シオン「…………」
――見える。
右。
首への斬撃。
その直後――
踏み込み。
胸への突き。
シオン「…………!」
ガキン!!
右からの剣を――
受ける。
No.2「…………」
次。
シオンは、
半歩だけ身体をずらす。
シュッ!!
剣先が――
胸元を掠める。
No.2「…………」
シオン「……やっぱり」
見える。
静かなこいつなら――
未来は、
変わらない。
No.2「…………」
再び――
踏み込む。
――見える。
左。
シオン「…………!」
ガキン!!
防ぐ。
――次。
下。
ガァン!!
防ぐ。
――突き。
シオン「はっ!!」
キィィン!!
弾く。
No.2「…………」
前とは違う。
シオンは――
No.2の剣を、
確実に捌いていく。
No.2「……少し変わったな」
シオン「一回負けてるからな」
No.2「…………」
シオン「同じ負け方をするつもりはない」
No.2「……そうか」
次の瞬間――
ドンッ!!
No.2が、
一気に間合いを詰める。
――見える。
振り下ろし。
シオン「……!」
身体を――
右へ。
ズバァァン!!
剣が、
地面を斬る。
シオン「…………!」
空いた――
胴。
シオン「もらった!!」
剣を――
振るう。
ザシュッ!!
No.2「…………」
頬。
浅い傷。
一筋の血が――
流れる。
シオン「…………」
No.2は、
動かない。
ゆっくりと――
指先で、
頬の血に触れる。
No.2「…………血」
シオン「…………!」
来る。
前と――
同じ。
No.2「…………」
血のついた指を――
見つめる。
そして。
口元が――
歪んだ。
No.2「……ひひっ」
シオン「…………!」
目が変わる。
立ち方が変わる。
剣の握り方が――
変わる。
No.2「アハッ!!」
ドンッ!!!
――見える。
右から――
斬撃。
シオン「……!」
すぐに――
剣を構える。
だが。
No.2「ざぁんねん」
ピタッ。
剣が――
止まった。
シオン「――!」
前と同じ。
未来が――
変わる。
No.2「ヒヒッ!!」
ドゴォッ!!
シオン「ぐっ!!」
蹴り。
シオンの身体が――
吹き飛ぶ。
ザザザザッ!!
シオン「…………ッ」
地面を滑り――
止まる。
No.2「アハハハ!!」
ドンッ!!
追ってくる。
――見える。
上。
違う。
――右。
違う。
――突き。
また――
変わる。
シオン「…………ッ!」
ガキン!!
ギリギリで――
受ける。
No.2「ヒヒッ!!」
ガン!!
シオン「ぐっ!」
ガキン!!
ガァン!!
キィィン!!
シオン「…………ッ!!」
未来が――
次々と切り替わる。
一つ先を見ても――
No.2が、
その未来から外れる。
そのたびに――
新しい未来が見える。
追う。
変わる。
また追う。
また――
変わる。
No.2「アハハハハ!!」
シオン「…………ッ」
前と――
同じだ。
未来を見る。
変わる。
また見る。
また変わる。
シオン「…………」
このまま――
追い続ければ。
また。
あの時と――
同じ。
『勝負が相手の思い通りに進んでいる時ほど――』
シオン「…………!」
一瞬。
オルディスの声が――
頭をよぎる。
『その流れを疑うのです』
No.2「アハッ!!」
――見える。
No.2が――
踏み込む。
右。
そこから――
左。
最後に――
突き。
シオン「…………」
右。
来る。
だが――
シオンは。
動かない。
No.2「…………?」
一呼吸。
スゥ――
No.2の剣が――
迫る。
その瞬間。
シオン「――CUT」
トン――
シオンが――
半歩。
後ろへ下がった。
No.2「…………?」
剣が――
空を斬る。
今までなら。
未来が見えた瞬間――
その未来に合わせて、
シオンは動いていた。
だが。
今回は――
違う。
見えても――
すぐには動かない。
一呼吸。
ほんの僅かに――
間を置く。
それだけ。
だが――
No.2「…………」
狂ったように続いていた――
No.2の連撃が。
初めて――
止まった。
No.2「…………?」
シオン「…………」
相手の流れに――
合わせない。
未来に――
追い立てられない。
一度。
自分から――
止める。
そして。
シオン「――今だ」
ドンッ!!!
No.2「――!」
今度は――
シオンから。
踏み込む。
No.2「……ッ!」
ガキィィィン!!!
No.2の身体が――
後ろへ押される。
ザザッ!!
No.2「…………」
シオン「…………」
初めて。
狂のNo.2が――
シオンを見た。
笑っていない。
No.2「…………何した?」
シオン「…………」
剣を――
構え直す。
シオン「さあな」
No.2「…………」
一瞬。
そして――
No.2「……ヒヒッ」
再び。
口元が――
吊り上がる。
No.2「おもしろい……!」
シオン「…………」
まだ――
攻略したわけじゃない。
一度。
流れを――
断っただけ。
だが。
前の戦いでは――
一度も作れなかった。
自分の――
間。
シオン「…………」
剣を握る。
今度は――
追いかけない。
相手の流れに――
乗らない。
No.2「アハハハ!!」
シオンへ――
再び突っ込む。
シオン「来い」
未来が――
見える。
それでも。
シオンは――
すぐには動かなかった。




