↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《凶宴-CARD》  作者: shogo5


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/118

『二枚目の裏側』【6】

シオン「…………ッ」



遠ざかっていく、


No.2の背中。



その姿が――


少しずつ、


霞んでいく。



シオン「……く……そ……」



視界が、


暗くなる。



音が、


遠ざかる。



そして――



シオンの意識は、


完全に途切れた。





――――――――――





暗闇。



何もない。



音も。


光も。



その中で――



シオン「…………」



何度も。



何度も。



同じ光景が、


繰り返されていた。





――見える。



No.2が、


右から来る。



狙いは――



首。



だが――



No.2「アハッ!!」



ガァァァン!!!



剣は、


地面へ。





――見える。



正面。



胸への突き。



だが――



No.2「ヒヒッ!!」



剣は、


岩へ。





――見える。



左からの斬撃。



だが――



ピタッ。



剣が止まる。



No.2「ざぁんねん」



代わりに――



蹴り。





シオン「…………」



何度も。



何度も。



敗北した戦いが、


頭の中で繰り返される。



未来は――



見えていた。



確かに、


見えていた。



なのに。



その未来は、


何度も変わった。



シオン「…………」



なぜだ。



何が――



変わった。



シオン「…………!」



もう一度。



最初から。





静かに、


剣を構えるNo.2。



無駄のない構え。



無駄のない足運び。



そして――



急所だけを狙う、


正確な一撃。



その未来は――



変わらない。



見えた通りに、


剣が来る。



見えた通りに、


身体が動く。



そして――



シオンの剣が、


No.2の頬を斬る。



ズバッ!!



No.2「…………」



頬から、


血が流れる。



No.2は、


指先についた血を見つめる。



No.2「…………血」



そして――



No.2「……ひひっ」





シオン「…………!」



ここだ。



目。



口元。



立ち方。



剣の持ち方。



すべてが――



変わる。



静から――



狂へ。



そして。



その瞬間から――



シオンが見ていた未来も、


変わり始めた。



シオン「…………!」



さらに――



戦いの最後。



倒れたシオン。



No.2が、


剣を振り上げる。



――見える。



首を、


斬られる未来。



だが――



ガァァァン!!!



刃は、


シオンの首の横へ。



No.2「……終わりだ」





シオン「…………!」



まただ。



さっきまでの笑みが、


消えている。



目も。



声も。



立ち方も。



最初に会った時と同じ――



静かなNo.2。



シオン「…………」



静から、


狂へ。



狂から、


静へ。



その瞬間。



未来も――



切り替わっている。



シオン「……そうか」



未来が、


外れたんじゃない。



No.2が切り替わった瞬間――



それまで続いていた未来そのものが、


別の流れへ変わっていた。



シオン「…………」



切り替わる。



流れが――



変わる。



シオン「……流れ……」



その言葉が、


頭の中に残る。



流れが変わる。



未来が切り替わる。



なら――



シオン「…………」



その時。



ふと――



一つの言葉が、


頭をよぎった。





『一度、断ち切ればいい』





シオン「…………!」



懐かしい声。



ずっと昔――



まだ、


シオンが幼かった頃。





――――――――――





アルヴェリア王城。



とある一室。



小さな机を挟み――



幼いシオンと、


一人の老人が向かい合っていた。



アルヴェリア王国宰相――



オルディス・レヴァン。



二人の間には、


一組のトランプ。



幼いシオン「また負けた!」


オルディス「ほっほっほ」


幼いシオン「絶対おかしい!」


オルディス「何がおかしいのですかな?」


幼いシオン「だって!」


幼いシオン「さっきからオルディスばっかり、いいカード引いてる!」


オルディス「それは――」


オルディス「私の日頃の行いが良いのでしょう」


幼いシオン「嘘だ!」


オルディス「ほっほっほ」



幼いシオンは、


頬を膨らませる。



幼いシオン「もう一回!」


オルディス「構いませんよ」


幼いシオン「今度は俺が配る!」


オルディス「おや?」


幼いシオン「オルディスが何かしてるかもしれないから!」


オルディス「…………」



オルディスは、


小さく笑った。



オルディス「シオン様」


幼いシオン「何?」


オルディス「では――」


オルディス「一つ、覚えておいてください」


幼いシオン「?」



オルディスは、


机の上のカードを手に取る。



オルディス「世の中には――」


オルディス「人を騙す者がおります」


幼いシオン「騙す?」


オルディス「ええ」


オルディス「誰もが正々堂々と勝負するとは限りません」


オルディス「勝つために――」


オルディス「イカサマを使う者もいる」


幼いシオン「イカサマ……」


オルディス「例えば――」



トン。



オルディスが、


カードの束を机へ置く。



オルディス「よく見ていてください」



カードの束を、


途中で二つに分ける。



そして――



上下を、


入れ替えた。



幼いシオン「……何したの?」


オルディス「カットです」


幼いシオン「カット?」


オルディス「ええ」



オルディスは、


カードの束を整える。



オルディス「本来は――」


オルディス「カードの束を途中で分け」


オルディス「その順番を変えるものです」


幼いシオン「…………」


オルディス「ですが――」


オルディス「使い方次第では」


オルディス「相手が作った流れを崩すこともできる」


幼いシオン「流れを?」


オルディス「ええ」



オルディスは、


幼いシオンを見る。



オルディス「勝負が相手の思い通りに進んでいる時ほど――」


オルディス「その流れを疑うのです」


幼いシオン「…………」


オルディス「そして――」


オルディス「必要ならば」



トン。



カードの束を、


真ん中から二つに分ける。



オルディス「一度――」



幼いシオン「…………」



オルディス「断ち切ればいい」





――――――――――





シオン「…………!」



その言葉と共に――



No.2との戦いが、


再び浮かぶ。



静。



狂。



静。



狂。



切り替わるたびに――



未来が変わる。



戦いの流れそのものが、


塗り替えられていく。



シオン「…………」



未来を見るだけじゃ――



足りない。



変わった未来を、


そのたびに追いかけるだけじゃ――



また同じだ。



シオン「……断ち切る」



オルディスが教えてくれた――



カードの技。



その名は――





CUT。





バチィィィン!!!





暗闇に――



巨大な亀裂が走った。



シオン「――ッ!!」





――――――――――





シオン「はっ!!」



勢いよく、


目を開ける。



シオン「はぁ……!」


シオン「はぁ……!」



荒い呼吸。



見上げた先には――



崩れかけた、


古い天井。



シオン「…………?」



身体を起こそうとする。



ズキッ!!



シオン「ぐっ……!」



肩。



背中。



腹。



全身に、


激痛が走る。



「動かない方がいい」



シオン「……!」



声の方を見る。



そこにいたのは――



見覚えのある男。



廃村で、


盗賊たちに捕らわれていた男だった。



シオン「……お前……」


男「目が覚めたか」


シオン「……ここは?」


男「村だ」


シオン「…………」


男「お前が戻ってこなかったから――」


男「何人かで探しに行った」


シオン「…………」


男「そしたら、荒野で倒れてた」


シオン「……そうか」



シオンは、


自分の身体を見る。



傷には――



丁寧に、


布が巻かれている。



男「酷い傷だった」


男「しばらく動かない方がいい」


シオン「…………」



シオンは、


再び横になる。



天井を――



見つめる。



No.2。



静。



狂。



切り替わる未来。



そして――



オルディス。



あの日、


教わったトランプ。



シオン「…………」



ゆっくりと――



右手を握る。



まだ――



はっきりとは分からない。



だが。



あの言葉のおかげで――



何かを、


掴めた気がする。



シオン「…………」



脳裏に浮かぶ――



オルディスの顔。



シオン「……ありがとう、オルディス」



一度は――



完全に敗れた。



未来が見えても、


何もできなかった。



だが。



次は――



シオン「…………」



その目には、


もう迷いはない。



シオン「……次こそは」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。