第1話 神様、お願い。私をタワマンのニート主婦にしてください!
当作品は以前投稿した『だめだめ女子とぽんこつ神様』のリメイク版です。
――ポテチの袋が“パリッ”と鳴った瞬間、
私は悟った。
ああ、これぞ宇宙の理。
この体勢、このクッション、この九州醤油ポテチ
……そしてコーラ。
ソファに沈み込みながらアニメを浴びる。
十九歳女子の休日って――
こうでしょ?
「最高ぉ~……♡」
私は尼砥 真音
ハイセンスな港区ど真ん中にある!
明法大学の経済学部 新二年生。
でも界隈では“だめだめ まのん”。
だってさ、小さい頃から勉強も運動も苦手。
特技といえば寝坊と無限アニメ。
村の大人たちには
「逆にすごい」
と本気で感心されるレベルである。
そんな私が、
名門・明法大学に合格してしまった理由は
ただ一つ。
――気まぐれで解いた問題集が、そのまま出た。
「奇跡にもほどがあるよねぇ~
……あ、推しきた♡」
ちなみに他大学は全滅した。
うん、分かってるよ。
ただ、歴史アニメのおかげで日本史だけは
成績が良かった♪
将来の夢?
もちろん
“タワマンで三食昼寝付きのニート主婦”。
朝起きたら旦那はもう仕事に出ていて、
私はアニメとゲームで一日が終わる。
控えめに言って、天国。
そんな尊い未来を妄想していた、その時。
「おい、まのん!
風呂掃除、またサボったな!」
現実がドアを蹴ってきた。
顔を出したのは、同じ村からの幼馴染みで、
ルームシェア相手の武藤 悠斗。(むとう ゆうと)
イケメン、秀才、スポーツ万能、おまけに金持ち。
……なのに性格だけはウルサイお母ちゃん。
「え~? 汚れてなかったし~」
「髪の毛だらけなんだよ!
……先にシャワー使うぞ!」
「どーぞどーぞ」
こんなやり取り、
十年以上続いているので慣れたものだ。
「おい! まのん!
俺のシャンプー勝手に使っただろ!」
「コンディショナーも借りといたよ♪」
「これ高いんだぞ! 返せ!」
「出世払いで♡」
「出世する気ゼロだろ!」
……まあ、扱いやすい男である。
大学で私がボッチにならないのは、
この男が隣にいるからだ。
悠斗推しの女子たちには妬まれるけど、
知ったこっちゃない。
私はポテチを放り込みつつ、
リモコンをぽちっと押した。
画面に映ったのは、
私の人生の栄養源『きゅんきゅん乙女』。
尊みが深すぎて、
呼吸するたび寿命が伸びる作品である。
「は~……
私もイケメンエリートに囲われて……
永遠にニート主婦やりたい……」
村に戻って農作業? 絶対無理。
アニメ文化のない世界に戻ったら即死する。
ちょうどアニメがCMに切り替わった、
――その瞬間だった。
空気が、ふっと揺れた。
部屋が一瞬だけ静かになった。
私のポテチの咀嚼音すら吸い込まれるみたいに。
「……え、なに? 悠斗?
ドライヤー爆発した?」
「違——
えぇ?お化け!?」
天井の一点に光が集まり、
ポテチみたいな小さな影がぷわっと現れた。
そして――。
『願叶え神・キタのぽん、参上ッ!
お主の願い、叶えに来てやったぞ!!』
「……ポテチ?」
完全に“のり塩”なのに――、
本人は『神様や!!』と全力主張してくる。
部屋の中央に仁王立ち(?)するその存在は、
どう見ても“ポテチ”だった。
私はポテチを握ったまま固まる。
ぽんと名乗る神様は、
胸らしき場所を張って宣言した。
『知っておるぞ、まのんよ!
タワマンで三食昼寝付きニート主婦になりたいんじゃろ?』
「何で……バレてるの?」
『叶えに来たんじゃ!
わしの神力で人生ごとひっくり返したる!
願いの細かい条件と希望の結婚相手を決めとけよ!』
そう言い放って、
神様はドヤ顔で手を組んだ。
『せや。それとな。
その夢の実現がお主の大切な人を悲しませたら、
その段階でキャンセルや。
気を付けやぁ』
私はというと、
ポテチを口に放り込みながら思った。
――なんか、とんでもないの始まった。
そこへ——
「まのんー! 悪い、パンツ持ってきてくれ!」
「無理ー!
きゅん乙女いいとこー!」
ぽんは即座に頭を抱えた。
『ちょ、相方のピンチやぞ!?
助けたれやぁぁ!!』
風呂上がりの悠斗が濡れた髪で文句を言う姿が、
なぜか少女漫画みたいにキラキラしているのはムカつく。
これが、
私・尼砥真音の
“奇跡頼みラブコメ人生”の幕開けだった。




